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異世界の生活は原付と共に  作者: 夢見月
第二章(前半)原付「俺様の退屈で暇な一日」
21/32

原付「私・・・汚しちゃった・・・」



富裕街の夜は一般街より少し長いようだ。

今は日も落ちた黄昏時。

俺の一番嫌いで一番名前が好きな時間。

二番目は草木も眠る丑三つ時。

一般街なら宿屋と酒場を除いて静かで真っ暗ですでに眠りに落ちていても早いと言われることの無い時間だが、ここ富裕街は違うらしい。

というのも貴族ほどではないにしろ夜会が頻繁に行われ家やギルド会員同士の交流が盛んに行われるからだそうだ。

 その一環ってほどではないけど、ここ、富裕街の住人向けオークションは夜にかけて行われるのが一般的なんだとか。

 高級品を酒の肴にだらだらとやりとりするのが優雅とか思われてるのかもね。

 ま、今回は夜にやってくれて助かったけど。

 レントン氏の蝋燭係が調べたところ、オークション開始間際に急遽持ち込まれたらしく、たまたま問い合わせなかったら情報は入ってこなかったんだとか。

 もちろんいきなり持ち込まれたとはいえちゃんとした商品なんだそうだが、順番としては最後になるだろうとのこと。

 おかげですでに始まっているオークションに間に合うってもんだ。

 さらにありがたいことに突然の出物でそれを狙ってオークションに来た人は少ないだろうからかなり狙い目で、うまくすれば安く手に入るだろうとはレントン氏の分析。

 俺にとっては万々歳だね。

 そんなわけで急いでやってきたのが『マーマルオークション』マーマル商会運営のオークション会場。

 かなりの歴史があるオークション商会だから扱われる物に関しては安心安全、信頼しても大丈夫なようだ。

 外見はテレビでしか見たことが無いヨーロッパの劇場といった感じ。

 まぁ元からここら辺の建物全てがヨーロッパテイストだけど。

 夜の中にあって淡くライトアップされたかのように綺麗に浮かび上がる石とレンガで造られた白い建物。

 どことなくホワイト○ウスを連想させられる。

 そんな建物の前に急がせた馬車が急停車。

 止まると同時に飛び出す俺。

 後ろからトカゲもドタドタと着いてきた。

 そのままの勢いで建物に入ろうとドアに突撃する。


 「ちょっと!お客様、入場料払ってください!!」


 しかしドアマン?に止められた。

 急いでるのに!って入場料とるの!?


「入場料?」


 ドアマンは俺の返答に眉を顰めた。


「当然じゃないですか。金貨10枚になりますが?」


 ちょっと言葉使いが悪くなった。

 なんというか見下した感じ。

 翻訳すると「そんなことも知らないお前払えんのか?」だな。

 なんかムカつく。

 袋を探って金貨を二十枚程取り出す。


 「これでたりるだろ?」


 ドアマンの顔を殴るかのように突き出した手からジャラジャラと金貨を落としてやった。

 慌てて受け取るドアマンの顔が見下しから、不快、驚き、笑顔、に鮮やかに変わっていく。

 急いでるけどちょっと面白かった。

 さすが金の力は偉大だ。


「た、大変失礼しました。ささどうぞ、すでにオークションは中盤を越えていますのでお急ぎください」


 ドアマンは金貨を丁寧にしまいつつお辞儀をしてドアを開ける。

 急がないといけないけどせっかくだから聞きたいことを聞いておこう。


「ここに美人で強い奴隷が入ったって聞いたけど本当?」

「はい、かなりの上玉が出展されております」


 お辞儀したままドアマンが答える


「まだ売られてないよな?」

「もちろんでございます。急な持込でしたが目玉となる商品は後というのが原則ですから」


 よかった、安心したぜ。

 ってこれ金を払う前に聞くことだよね。

 金払って売れた後だったら笑い話だ。

 急いでいるときこそ慎重にしないとね。

 ・・・いつも忘れるけど。


 扉を入った先は赤い絨毯が引かれた煌びやかなエントランスホール。

 そしてその先は重厚な扉。

 深呼吸一つ。

 気を落ち着けてからエントランスホールを抜ける。

 映画館で使われるような分厚く重たそうで、映画館では使われることのない綺麗に彫刻の施された扉。

 先回りしたドアマンが扉を開く。

 押し寄せた熱気と圧力。

 静かな興奮というのだろうか、部屋というには広い空間を包んでいるのはそんなものだった。


「さぁ、次の商品はこちら、セキドバ王朝後期に作られました陶器の壷にございます。どうでしょうかこの驚きの白さ!描かれた絵の優雅さと美しさ!幾たびの戦乱でほとんどが失われこのように完全な形で現存するものは世界でも僅かといわれております。それゆえ贋作も多い品でございますが、こちらはあの有名な鑑定士ノアによる鑑定書付きでございます。それでは金貨50枚から」

「65枚!」「70枚です」「73枚!!」「こっちは80枚だ」


 次々にあげられる値段。

 決して下品にならない程度に抑えられた声が商品の価値を吊り上げていく。

 広い室内はまるで劇場のようだ。

 もちろん安っぽい市民劇場なんかじゃなくテレビでしか知らない世界の劇場。

 最高級だと思われる絨毯、いったいどれだけの時間をかけたんだと聞きたくなるほど彫刻が施された柱、幾らかかるのか検討も付かない豪華なシャンデリアが照らしだす煌びやかな劇場だ。

 しかし思っていたよりは狭い、まぁ声が届かないと意味がないからかもしれないが、だいたい体育館程度。

 最奥の一段高くなった舞台で司会者が商品を声高々に説明している。

 客席は段々になっているが、劇場のように椅子が連なっているわけではなくソファーが間を取られて並んでいる。

 これらももちろん高級品ばかり。

 それに座っている金持ち共はやはりみな豪華な装いだ。

 紳士風、豪華なドレスの奥様、趣味の悪い成金(美女をはべらしてやがる!羨ましい!こっちはトカゲだぞ!!)。

 ところどころ軽鎧を着た冒険者風の奴や、杖を持った魔導師も見受けられる。

 全体の割合としては少ないけど。

 そんな中を作業着の俺とフルプレートのトカゲ・・・。

 場違いです。

 本当にゴメンナサイ。

 今思えばよくドレスコードに引っかからなかったものだ。

 まぁ、魔導師としては落ち着いたものらしいから大丈夫なのか?

 気分的には気後れするが・・・。

 さて、どこに座ろうかとあたりを見回すとウェイターが席へと案内してくれた。

 さすがに後から来たせいで後ろの端しか開いてなかったが。

 わがままを言ったところでどうにもならないのでおとなしくそこに座る。


「お飲み物は何になさいますか?」


 座るとすぐにウェイターが聞いてきた。

 タダ・・・というか入場料に入ってるのな?

 とりあえず注文してみる。


「アルコールの入ってないものある?」

「それでしたらチコのジュースはいかがでしょうか?」


 チコってなに?まぁいいやそれで。

 頷いて答えると「かしこまりました」と一礼して下がった。

 入場料に含まれているみたいだ。

 安心した。

 でも戻ってきた時にでもチップは渡すべきかな?

 けど無駄金使う必要も無いか・・・チップを要求されたら考えよう。

 力を抜いて深くソファーに腰掛ける。

 トカゲはなにも言わずともソファーの後ろに待機している。

 他の奴隷を連れた客も護衛はソファー斜め後ろで待機、愛玩用は隣か足元。

 トカゲもあれだけ渋った割にはちゃんと周りを見て後ろに立つあたりなかなか出来た奴だ。

 関心関心。

 とりあえず目的の品が出るまでオークションの観察を続ける。

 司会が商品の説明を行い、客が手を上げて値段を言う。

 最終的に高い値をつけた奴が落札。

 すぐに商品を取りに行く様子がないから全て終わってから商品の引渡しが行われるようだ。

 よし。とくに変わったルールとかはなさそうだ。

 届いたジュース片手に次々に競りにかけられる商品を見る。

 さっきの壷を皮切りに絵画や宝石などの金持ちが買いそうな商品。

 剣や鎧などの冒険者が買いそうな武具。

 野郎がほとんどだけど奴隷も競りに出されてる。

 たまに出てくる女性の奴隷はなんといいますか大変野性味溢れる大柄な戦士系です。

 全く持って守備範囲外。

 こんなのに興味はありません。

 これらの商品が特に何か決められた順番も無く無秩序に出展されていく。

 ただ多少上下はあるが後に出てくる商品は高額になっているようだ。


「続いての商品はこちら、地竜から取られた一等級の茶魔石にございます。冒険者パーティが数チームで戦いを挑み半分の犠牲を出しながらやっとのことで仕留めた凶悪な地竜。その魔石は特一級に後一歩及ばないものの一級の品としては最上級のもとなります。こちらは白金貨5枚から」


 おお、一級の魔石だ。

 かなり歪なコンペイトウだけど大きさはサッカーボールくらいある。

 俺が持ち込んだ二級の魔石がたしか白金貨1枚と金貨75枚だったかな?

 最初から5枚なら幾らくらいになるんだろうか。


「7枚!」「7枚と半枚」「10枚」

「11!」「11と金貨10枚」


 さっきから思ってたけど言い方は適当でもいいんだな。


「白金貨15枚」「ぐぬぬぬ、15と半枚!」

「17枚」「20枚」


 唸ってた魔導師さんご愁傷様。

 あっさりと紳士風のおっさん達が値を上げていく。


「ではそちらの方、白金貨25枚と金貨75枚で落札!」


 なかなかになったけど一級の魔石で白金貨25枚か。

 家を買うのにそれが四個は必要になるのか。

 すでに白金貨250枚あるから問題ないけど普通に稼ごうと思ったら無茶苦茶大変だな。

 地竜ってどれくらい強いんだろ?

 やっぱり翼竜よりは強いんだよね。

 うーん。あんまり殺りあいたくはないなぁ。

 それにしても魔石を買うのはほとんどが富裕層の方々。

 魔導師さんたち思いっきり睨んじゃってるよ。

 商隊で聞いた通りに宝石箱行きになるのかな?

 まぁどうでもいいけど。

 そんなことを考えていると次の商品を紹介するため司会者が大げさなアクションを取った。


 それを合図に舞台の袖から一人の女性が鎖に引かれて出てくる。


 しかもそれは・・・・・・


「それでは、今宵の目玉商品の一つ。『白虎族』の女戦士にこざいます!」


 


 ネコ・・・ミミ・・・・・・?




 猫耳キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

 猫耳だよ猫耳!!

 完璧な猫耳!!

 うっはーーー!!

 まさかの猫耳だぜ!!

 作り物じゃない本物の猫耳!!

 ピコピコと動く猫耳に尻尾も柔らかそうなフワフワ毛に包まれてユラユラと揺れても---たまらん!!!

 なにこれ、これは神?

 神降臨!?

 神降臨の感さえあり!!

 もう、すっごい美人!!

 年齢はたぶん二十歳くらい!!

 顔に浮かんでいるのは疲れきった諦観の表情だけど瞳孔の狭まった金色の猫目に鼻筋の整った綺麗な顔に真っ赤な唇・・・ああ、綺麗過ぎる!!

 髪が肩ほどしかないのと襤褸切れを押し上げる胸が・・・まぁ残念だけど、それでもこれはこれでイイ!!

 白猫最高!!

 白猫万歳!!


 興奮しているのは俺だけじゃないらしく、ここに入って初めて会場がどよめきに包まれている。

 そんな中を司会者の商品説明が続く。


「『白虎族』はみなさんご存知の通り大変貴重な種族で、そのうえ住処の森からあまりでてこないため大変珍しい一族です。しかし戦闘力の高さはいたるところでお聞きになったことがあると思います。ではその一端をご覧頂きましょう」


 司会者の合図で奴隷の大男二人が巨大な丸太を運んできた。

 太さは俺を五人くらい束ねた程度・・・直径で言うと1mあるんじゃないか?

 その丸太が白猫の前にドスンと音を立てて置かれる。


「さぁ、やれ!」

 

 司会者が命じる。

 しかし白猫はぼんやりとしたまま動かない。

 ああ、その物憂げな表情も素敵だ。


「やれといっている!」


 どこから出したのか鞭がピシリと地面を叩いた。

 脅すだけで直接は当ててない。

 さすがに目の前で商品を傷つけたりはしないらしいが、もし俺の白猫に当てたらここから魔術ぶち込んでやる。

 白猫は疲れた表情で司会者を見つめた後、小さくため息を付いた。

 そして丸太の前まで近づくとゆっくりと腕を振り上げた。

 そして・・・。


 会場が揺れた。


 かなり離れた俺の席が一瞬浮かびあがったかと錯覚するほどに会場が揺れた。

 軽く振り下ろしたように見えた腕は当然のごとく丸太を真っ二つ。

 ついでに壇上の床もぶち抜いている。

 腕、痛くないんだろうか?

 白猫は床にめり込んだ腕を引き抜くとその場に方膝をついて座り会場をぼんやりとした表情で眺めている。

 シーンと音が聞こえそうなほどに静まる会場。

 そんな中で壊れた壇上から落ちた木の板はやけに大きな音をさせて会場全体に響いた。


 ・・・欲しい。

 むっちゃくちゃ欲しい。

 強くて猫耳でけだるげで猫耳で調教しがいがありそうで猫耳で。

 まさか美人の戦士奴隷が獣人だったとは予想外だったけど・・・。

 

 むしろただの人には興味ありません!

 猫耳、兎耳、犬耳、エルフ耳がいたらすぐに俺の奴隷になりなさい!

 以上!って感じ。

 これは絶対手に入れる!!

 幸いにして今の余興で会場の空気は冷めた。

 うまくいけば安値で手に入るかもしれない。


「えーー、ど、どうでしょうか?この力強さ!聞きしに勝るとはまさにこのこと!護衛として申し分ない力を備え、伽に使うにも充分以上に美しい容姿!この『白虎族』は白金貨5枚からスタートです!!」


 呆然としていた司会がどもりながらも最後のアピールを行い競りが開始されるがそんなことどうでもいい。

 それじゃ白金貨5枚だから15枚くらい言えば買えるだろ?

 いきなり三倍で勝負だ!


「白金貨20枚です」「22枚!!」「24枚よ」「25枚!」「30枚だ!!」


 ええぇぇーーーー・・・。

 さっきまでの静寂が嘘のように会場が白金貨の値段で埋め尽くされた。

 ちょ、ちょっと待てよ!

 確か美人の奴隷で10枚だったよね?

 なにいきなり30枚とか言ってやがりますか!


「35!」「37枚!」「45だ!!」


 いやいやちょっと待ってって!!

 俺も言わないと!

 えとえっと・・・・!!

 えーい、こうなればもうやけだ!!


「60枚!!」


 会場の後ろからここ数年出したことの無い大声で叫ぶ。


『おおお・・・・・』


 俺の一声で会場が轟いた。

 ふふふ、ちょっと優越感

 白猫のためなら幾らでも払ってやる。

 こちとら持ち金は白金貨250枚越えているんだ。

 家を買うのに100枚あればいいらしいから半分以上の150枚はぶち込めるぜ!

 他の奴隷もほしいところだけど白金貨10枚程度ならすぐに溜められる・・・と思う。

 まずは護衛だ。

 美人で強くて猫耳な奴隷。

 これを手に入れずに何を手に入れろというのだろうか!


「65枚です」


 なんだと!?

 びっくりして会場に視線を走らす。

 どこからか分からなかったがさらに値段が上がった。

 会場がざわめいたから勝ったと思ったのに、まだあげて来る奴がいるのか・・・。


「70枚!」

 これでどうだ!

「71枚です」

「80枚!」

 これでどうよ!!

「81枚です」

 ぐぬぬ。地味にあげやがって・・・。


 俺の白猫掠め取ろうと張り合ってくるのは斜め前方。

 会場の中央、ど真ん中に座る野郎。

 その野郎は両脇に美人をはべらせてさらに足元にも美人の奴隷を足置き代わりに置いてやがる。

 ・・・クソ、なんて羨ましいことしやがるんだ。

 絶対あんな野郎に奪わせはしない!

 ってかその美女奴隷達も寄越しやがれ!!


「81枚!!他のかたありませんか?」

 

 おっと余計なこと考えていいる間に司会者が閉めそうになってる。

 あぶないあぶない。


「85枚!!」

『おおおお・・・・!!!』

 

 俺の声にさらに会場がざわめく。

 反応からみるに適正価格はすでに大幅に超えているようだ。

 でもそんなの関係ねぇ!

 女たらし野郎が振り返って驚きの表情で見てくる。

 俺にケンカを売ってきてるのは金髪の貴公子、ただしケツ顎付き。

 そんな野郎に見られても嬉しくない。

 しかしあの驚きの間抜け面はちょっと優越感。

 俺が黙っていたから勝ったとでも思ったかい?

 甘い甘い!


「85枚!85枚が出ました!!他の方はいませんか?」


 司会者が驚きの声で俺の金額を復唱する。

 さあ、諦めろケツ顎、頼む!


「・・・87枚です」

『おおおおおおおお!!』


 最初に感じた静かな興奮はどこへやら。

 熱狂を隠そうともせず他の客は完全に観戦モードでざわめいている。

 しかし俺はそれに気を払う余裕も無く間髪いれずに口を開く。


「90枚!!」

「92枚です」

「94枚!!」

「95枚です」

「96枚!!」

「97枚です」


 くっそー小刻みな値幅じゃ勝てるもんも勝てない。

 こうなれば最後の手段一気に吊り上げる。


「110枚だ!!」

「ぐっ!」


 ケツ顎の声が止まった!

 さすがにこの値段じゃ手がでないか?

 こっちを睨んだりしゃって、おー怖い怖い。


「110枚、110枚です!他にありませんか!?」


 司会者が驚きながらも確認を始める。

 もう無いだろ?無いよね?

 表面は営業スマイルを張付けて余裕を繕いながら内心で必死に祈りを捧げて司会者を見る。


「他にありませんか・・・?ありませんね、・・・それでは白金貨110枚で落札!!」

『おおおお・・・・!!!』


 その声を聞いた瞬間思わずガッツポーズ。

 よっしゃぁ!!!

 猫耳ゲットーーーーーーーーーーーーー!!!

 やった!!

 やった!

 やったけど・・・。

 予定していた金額よりかなりオーバーしてしまった・・・。

 けど後悔はしない。

 かなりいいものが手に入ったと思うし、幸いにして家を買う金は残ってる。

 ただの美人な奴隷を買うための金はまたがんばって貯めよう。 

 かなり気を張っていたようでソファーから浮いていた腰を落ち着ける。

 ふぅ、からからに渇いていた喉を残っていたジュースで潤す。

 さて用件は済ましたし帰ろうかな。


「さあ、先ほどはかなりの高額商品となりましたが、こちら本日最後の品にして本日の目玉商品。先ほどよりもはるかに高値になることでしょう」


 あれ?さっきのが最後じゃないのか、すこし気になる。

 どんな商品だろ?


「こちらも『白虎族』の女奴隷です。残念なことに戦奴隷ではありません。しかし!しかしです、驚くことに『白虎族』でありながら毛は黒一色という大変珍しいものにございます!」


 なん・・・だと・・・?

 また鎖に繋がれて出てきたのは猫耳。

 しかしその姿は先ほどの白猫とは違い腰まである黒髪。

 白猫よりも若干幼く十代中頃から後半。

 丸い目が印象の大変可愛らしい容姿。

 つまりアニメのような日本人形と言いますか・・・つまるところ私の琴線にドストライクであります!!

 そして歩くたびに揺れる巨大な果実が二つ・・・なんとまぁおいしそうですねぇ。

 さっきの白猫と違いビクビクと怯えながら会場を見回す表情もまたグット!

 大変嗜虐心がそそられます。


「さぁ、こちらの商品は白金貨10枚からのスタートです!」


 一気に爆発する会場。

 しかしその中で俺は取り残された。


 欲しい。

 あれは欲しい。

 欲しくて欲しくてたまらない。

 でも金がない。

 あとの持ち金は家の購入費・・・黒猫に手を出したら確実にそれが消し飛んでしまう。

 しかし、しかし・・・。

 迷っている間に値段は吊りあがる。

 50枚、70枚、90枚・・・。


 フッ・・・・。


 フフフフフ!


 ハハハハハハ!!


「白金貨110枚!!」


 馬鹿らしいぜ、俺が迷う?

 俺が後のことを考える?

 めんどくせぇ!

 ありえない!

 いつも欲しいオタクグッツが目の前にあれば食費光熱費交友費その他もろもろ削ってさらに貯金だって切り崩して買ってたじゃないか!!

 大変レアらしい黒猫と白猫をセットで買わないでオタクと言えようか!?

 いや言えるはずが無い!!

 俺が俺で有る為に!

 俺のオタク魂の為に!!

 この勝負負けられない!!!

 俺の叫びで会場全体の視線が突き刺さる。

 そしてさらに口を開く野郎が幾人も・・・。

 

 第二ラウンドのゴングは鳴った・・・。



主人公ェ・・・。


残り在庫は2話程度です。

詳細は活動報告にて。

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