原付「ちょ、そんなとこ撫ぜちゃ駄目だって!いや待って、ソコは触っちゃ駄目~~!!」
そんなとこ=タイヤ 汚れます。
ソコ=チェーン 実際危ないです。
注意、酷い表現があります。
馬車が向かう先は富裕街の北側。
高級商店が立ち並ぶ一角だそうだ。
富裕街に入るのは初めてでかなり楽しみにしていたがさすが高級住宅街。
まず入るために中門での審査があるらしい。
らしいってのは俺が今回乗っているのはギルド長の馬車。
貴族や有名な人物は自分の馬車に一目でその人とわかる装飾が施されている物らしい。
そんな装飾に詳しくない俺にはよくわからないけど。
そういった著名人の馬車はフリーパス。
審査の必要がない、というか非常時以外で審査なんかしたらその兵士さんの首がとぶんじゃないだろうか?とは御者さんの弁。
どっちの意味で首が飛ぶのか気になるが所だが。
警備が厳重なようなそうでもないような・・・馬車を真似して作ったらいくらでも犯罪に利用できそう。
普通は市民カードを見せて入るようだ。
疾風の団のような市民権二等級以上の代表者が入る人の保証をすれば等級が低くても入れるそうだ。
仕事関係も書類のサインがあれば問題なしだって。
富裕街の町並みはやっぱり綺麗だ。
建物は一般街のように隣同士隙間無くギュウギュウに詰め込まれているってことはなく、庭も取られていてかなりゆったりとしている。
庭の様子も噴水があったり、花壇が手入れされていたりとまさに高級!といわんばかりの家が並んでいる。
石畳の道も・・・まぁところどころ馬糞が落ちていたりするが、結構綺麗だ。
掃除人・・・奴隷がゴミ拾いしているから汚れている様子はほとんど無いみたい。
当然のように街灯が設置されていて夜でも安心。
兵士というよりイメージ的に騎士っぽいちょっと豪華な武具に身を包んだ兵隊がちらちらとうろついているから防犯も対策も万全。
街を歩いている人たちもそれに見合った人たちが大半のようだ。
日傘に白いワンピース風ドレスでワンコをつれたお嬢さん達がキャハハウフフと歩いていたり、ザマスザマスとか言ってそうなおば様と見た目100kgオーバーの大変ふくよかで恰幅の良いご婦人が井戸端会議に勤しんでいたり・・・。
男性の裕福な人はあまり見えない。
この時間仕事だろうか?男は先ほどいた騎士っぽいのとか、冒険者風の人たち。
掃除人にあとは奴隷達かな。
うん、周りが綺麗なだけに奴隷達がかなり目立つ。
服装が汚いまんまなのよ。
お嬢さんたちの後ろを顔はかわいいけど汚い子供が連れて歩かされてたり、イケメンだけど服はズタボロの青年が日傘を持たされていたり。
大量の荷物を持たされた・・・これは彼女の荷物持ちしているだけの彼氏か?ナムーと合掌。
なんというか風景に対して奴隷達が完全に浮いている。
顔は美形やら可愛い子やら選んでいるようだけど・・・ちょっとしたアクセサリー感覚と言うか富裕層のステータス的に奴隷を持っているというかそんな印象を受ける。
コギャル(死語だっけ?)の携帯ストラップの方がまだ扱いが良さそうだ。
よくみればちゃんとした格好の執事さんも見かけるんだが・・・奴隷には服を与えるのももったいないと・・・。
俺が奴隷買ったら服くらいは買ってあげよう。
そうしよう。
見た目も楽しまないと損だし、なんといっても病気が怖い。
不潔なままだと虫とか沸きそう。
ここの人たちは気にならないのだろうか?
俺だったら絶対に耐えられないな。
俺の理想は清潔なメイド奴隷とムフフな生活だからね・・・ほんと楽しみだ。
さて、そんな風に街の景観を観察しながら馬車は進み北街に入った。
ここら辺は高級商店ばかり・・・なのだと思う。
さっきの住宅街と違って庭が無くなり、道の近くまでレンガや木造作りの建物が張り出してきてる。
もちろん外観は綺麗で高級感溢れているが商品が見えない。
看板は出ているが通りから見えるのはカウンターばかり。
商品を陳列しないで、このようなものは如何でしょうか?って見せてくれるのかな。
ますます高級っぽい。
人も馬車も増えてきて、すこし騒がしくなってきた。
でも活気があると表現するには躊躇ってしまう上品な場所。
カフェテラスでもあれば優雅に紅茶でも飲みながら読書出来るくらいに落ち着いた雰囲気がある。
馬車が止まったのは高級商店街に入って五分くらいのところ。
剣に鎖が巻きついた看板を掲げるお店の前。
止まるとすぐにボーイ?が扉を開けてくれた。
いきなり近づいて扉を開けるから何事かとちょっとびっくりしたぜ。
ちょっとでも遅いとなんか罰でもあるのか?
心臓がバクバクと鳴っていたいるが平静を装って馬車から降りる。
「御者さん、この店?」
一応確認。
「はい、ギルド長から案内するように言われた戦奴隷専門店です。帰りも宿までお見送りするよう言われておりますのでこちらでお待ちしております」
へぇー。
あの爺もそれなりに配慮してくれてるじゃないか。
「それじゃ、しばらく待ってて」
「わかりました」
そんなやり取りを済ましたあと店を眺める。
奴隷商人の店って汚らしく暗く陰鬱でじめじめっと・・・まぁアンダーグラウンド的な悪いイメージしかなかったんだけど、ここはまったくそんなことはなく冒険者ギルド本部程ではないにせよ清潔で明るくて、高級感ただよってきて・・・。
なんか妙にギャップを感じる。
「スレイン商会へようこそ!」
店の前で観察していた俺に声を掛けて来たのはカウンターでなにやら書き物をしていた男。
年齢は50代くらい、金髪に白髪が混じった髪を油か何かでオールバックに固めた身なりのいい野郎だ。
少し頬がこけていて痩せているけど病的というほどではなくスリムと言った感じだ。
わざわざ立ち上がってお辞儀までしている。
って客に対する礼儀ならそんなものか。
声をかけられたからには観察を続けるわけにもいかないので素直に店に入る。
って今気が付いた。
こういった高級な店の作法的なもの知らない・・・。
いや、べつにそんなの無いかもしれないけどどうだんなろ?
またしても内心冷や汗たらたらだ。
とりあえず適当に話を合わせてみよう。
ちょっと失敗しても問題ないだろ?なんたって俺は客なんだし。
うん。大丈夫大丈夫。
と、自分を納得させとく。
「私当商会の主を務めております、レントン=スレインです。冒険者ギルドの方とお見受けしますがどういった御用でしょうか?」
ああ、だからスレイン商会ね。
って主人自らカウンターでお出迎えってこれもまたちぐはぐな感じがする。
偉い人は社長室で引籠ってるのが普通じゃないのか?
とりあえず、ギルド長の手紙を出しながら挨拶をする。
「どうも、リョウ=ノウマルです。ギルド長にここを紹介されて・・・。護衛に使える奴隷を売って欲しいんですが」
「ほう、あの方自らの紹介ですか・・・、手紙を拝見させていただきますので、どうぞそちらにかけてお待ち下さい。おい、飲み物をお出ししろ!」
「はい!」
最後のは店の奥に向けて。
すぐに女性の返事が聞こえる。
カウンターだけかと思ってたけど、入り口の左右に机と椅子の応接セットが幾つか整えられていた。
まぁ当然か、客をずっと立ちっぱなしにさせるなんてそれなんて立ち食い蕎麦屋だよ。
レントン氏に手紙を渡した俺は椅子にゆっくり腰掛ける。
当然椅子も机も高級家具だと思われる。
ギルドで何度か座ったけど、やっぱりこういうのは座り心地が悪いなぁ。
傷でも付けたら怒られそうで嫌だ。
もっと気安く使えるのが一番だよ。
などと考えていいるとすぐにコーヒーが出てきた。
俺が座ってから十数秒程度。
白い首輪をした女性がホットコーヒーを持ってきた。
無茶苦茶早いよ。
もしかして常にお湯沸かしてたのか?ってのはどうでもよくて・・・。
これまた汚らしい服の奴隷女性。
顔はすっごく美人。
もうとてつもなく美人な金髪碧眼さんだけど・・・そんなに怯えた表情しなくてもいいじゃん。
まるで俺が酷いことするみたいに怯えて震えて青い顔をしちゃってます。
持ってきたコーヒーを机の上に置く動作一つをプルプルと震えた手でやっちゃってるから・・・ほら、コーヒーが跳ねて机が汚れちゃった。
「ヒッ!」
金髪さんは引きつった声を上げるとカップを落としてしまったかのようにガチャリと大きな音を立てて机に置いてしまった。
そして一瞬の静寂。
金髪さんの顔色が絵の具でもぶちまけたかのように青から白に一瞬で変化した。
「も、もうしわけ、っありません」
俺は何もしていないのに逃げるように一歩二歩と下がる金髪さん。
「おやおや、これはいけませんね」
ビクッとほんとうに跳ね上がって驚く。
俺からは見えていたけど、スレイン氏はこっそりと静かにカウンターから出て背後に立たってから声を出していた。
そんなことされちゃ誰だって驚くわな。
「もうしわけありません!!もうしわけありません、旦那様!!お許しを!!」
もうパニックのように・・・いやほんとに半狂乱で頭を下げて謝りまくってるよ。
「お客様にたいしてこのような粗相を。あとで教育が必要なようですね」
「それだけは!!それだけはどうか!!旦那様!!!!」
教育ってのが何かわからないけどこの反応から察するに、それはもうとてつもなく楽しいことなんだろうね。
じゃないと足元にすがり付いて涙ながらに訴えたりはしないだろうさ。
それを見下ろすレントン氏も清清しい笑顔なんか浮かべちゃってまぁ・・・。
その教育について熱く語りたいね。
「お客様の前ですよ?さらに上の教育が必要ですか?」
後ろ姿しか見えないけど、その言葉で魔法のようにピタリと動きを辞めてしまった金髪さん。
良く見ればレントン氏のズボンを掴んでいる手が微妙に震えてる。
訴えるべきか、辞めるべきか心中で大乱闘が起こっていそうだ。
「わかったなら下がりなさい」
レントン氏の慈悲の篭った優しいとさえいえる声音、それを聞いてゆっくりと立ち上がる金髪さん。
こちらを向いた顔は完全に無表情で囁くように「失礼しました」と頭をさげるとフラフラと奥へと消えていった。
「申し訳ありません。すぐに新しいのを用意させます」
二人で見届けた後、レントン氏はそう言ってパチンと指を鳴らす。
すると今度は赤毛で細身の男奴隷がコーヒーを持って現れた。
今度は過剰に怯えることも無くきっちりとコーヒーを準備して去っていった。
もちろん礼儀作法は完璧。
すごい、これは憧れる!
指パッチンだけで以心伝心ってまさに理想の奴隷!!
残念ながら男の奴隷だけどこの教育具合は見習いたい。
コーヒー持ってきた野郎の目も死んでたからさっきの金髪さんが楽しそうに言っていた教育の成果なんだろうけどいったいどんなことしたんだろ?
爪の間に針でも刺したのかな?ってこれは拷問か。
「最初の女性はあまり躾がなっていないようでしたが先ほどの男はなかなかでしたね」
話の取っ掛かりのためにちょっと聞いてみる。
「いえいえ、お見苦しいところお見せしてしまって申し訳ない」
謝罪を口にしながらレントン氏が向かいの席に腰掛けた。
「私は男奴隷にしか興味がないんですが、さきほどのは気まぐれで購入したものでして・・・。私は女奴隷とは相性がよくないようでうまく教育できなくて難儀していますよ」
男奴隷にしか興味が無い・・・。
まさかこの人ホで始まりモで終わる系の人?
そんなことないよね?
「えっと、それは大変ですね」
深く突っ込みたいけど藪蛇になりそうだからやめとく。
決定したわけじゃないけど、俺がその対象になるのは断固拒否。
「ええ、男でしたら軽くつつくだけであっさりとなついてくれるのですが。どうも女というのは・・・」
うんぬんかんぬんと話が続く。
何をどうつつくのか興味があるような・・・無いような。
無いな。
それにしてこの人、女性になにかトラウマでもあるのか長々と話が続く。
いい加減遮ろうかと思った時、俺の微妙な顔に気が付いたのか話をやめてくれた。
ここで買うのを止めようかと悩むくらいどうでもいい話だ。
「おっと失礼しました。まずは手紙を拝見させていただきますね」
「はい」
コーヒーをすすりながら待たせてもらう。
高級品かどうかはわからないけど缶コーヒーよりはうまいな。
手紙の文量はあまり無かったようで、俺が三回ほどカップに口をつける程度の時間でレントン氏は手紙を読み終わった。
「なるほど、事情はわかりました。なかなかに難儀されているようで」
手紙を戻しながらレントン氏は同情の言葉をかけてきた。
同情するなら奴隷をくれ。
「本当に困ってしまいまして。いい奴隷はいますかね?」
「もちろんですとも。我が商会は戦奴隷に関してはこの町でも一番の品揃えだと自負しております。冒険者ギルド長からの推薦とあらばとっておきの品までお見せしますよ」
心外だといわんばかりに胸をはるレントン氏。
うん、さっきのトラウマ話でちょっと迷ったけど大丈夫そうだな。
とりあえず見せてもらおう。
「そうですか、それではお願いします」
「はい、ではこちらにどうぞ」
立ち上がって店の奥に案内される。
とりあえずもう一度コーヒーを飲んでから後についていった。
案内された先は・・・地下牢。
綺麗な店構え内装が嘘であったかのように汚く臭い地下牢が奴隷が集められている場所だった。
うんうん、これこそ奴隷商人の店だよね。
なんか安心したよ。
王道いってる世界の癖に俺のイメージと違うところがありすぎだけど、ここを見てなんかほっとした。
やっぱりこうでなくちゃ。
足を踏み入れたのはじめじめとした牢獄。
階段を下りた先はフォーク型通路になっており道の両側を格子の牢屋がずらりと並んでいる。
正面の通路だけで約五十室。
全体で百五十ほどはありそうだ。
全部に奴隷が入っているわけじゃないんだろうけど、さすが自称品揃え一番。
奴隷商人らしい設備の充実振りだ。
通路の明かりは天井に開いた四角い小さな格子窓と役に立つのか微妙な間隔で灯された蝋燭が通路にぽつぽつとあるだけ。
雨のときどうなるんだろうとちょっと心配。
今はレントン氏の護衛?看守?二人が大きめの蝋燭を持っているからかなり明るいけど、普段はお化けでもでてきそうなほど陰鬱な雰囲気が立ち込めている。
あと、うめき声もちらほら。
・・・大丈夫だよね?
イメージ通りだけど病気とか弱っていて役に立たないとか困るんだけど。
とりあえず案内に従って通路を進む。
ちらりちらりと脇を見ながら進むけど部屋はとてつもなく狭い。
立って半畳寝て一畳ってわけじゃないけどとても狭い。
藁?干草?の布団もどきが一組と用を足す為の壷が一つ。
せいぜい二畳程度。
とてつもなく快適に過ごせそうだ。
中に入っている人は様々。
寝ている奴、座っているやつ、ぼんやりと壁を眺めている奴、こっちを虚ろな目で見てる奴。筋トレしている奴なんかもいる。
人種も多様だ。
人間、エルフ、ちんまいおっさんだからたぶんドワーフ。
獣耳付き、緑色の奴。
種族名不明の意味不明な人間もどきもみられる。
異世界人種展覧会のようだ。
「旦那様、旦那様!俺を買ってくだせぇ!きっと役にたちますぜ」
「見てくださいこの傷を、かのバーン王国にその人ありと言われたグリズ将軍の槍を受け止めた傷です。雷鳴に例えられるほどの槍を受けても耐え切った体。丈夫さは折り紙つきです」
数人はこんな感じで自分を売り込んだりしている。
よっぽどここから出たいらしい。
あの手この手でアピールしている。
「なかなか面白いですね」
売り込みをかけてくる奴の前で少し歩く速度を落すだけで、売り込みに熱が入る。
今なら足を舐めろと言ったら喜んでやってくれそうだ。
プライドの欠片も見えない卑しい犬どもめ!なんてね。
「紹介状のある方にそのような小物はとてもとても。リョウ殿にはそれなりの品をご紹介しますよ」
なるほど、ここらへんは安物らしい。
一見さんにはこんなのを売りつけるのかもしれない。
ギルド長の紹介状様様だ。
売り込みをスルーしながら格子の間を進み通路の端まで到着。
もちろん何もないただの壁。
「壁がそれなりの品ですか?」
まったくそんなこと思っていない声で聞いてみる。
「もちろん違いますよ。貴重な商品は置く場所にも気をつけないといけないということです」
そう言ってレントン氏は俺に見えないよう体で隠しながら何か操作を行う。
すると壁がズズズと重たい音を出しながら横にスライドしていく。
「おお!」
思わず声が出た。
でもすごい、隠し部屋だ。
中は相変わらずの格子付きの牢屋が並んでいるがさっきまでの石畳と違い普通の部屋のように綺麗だ。
家具も机と椅子、ベッドも完備。
通路から丸見えなのを除けば安いビジネスホテル並には整った部屋だ。
「高級な戦奴隷というのは、身分の高かった者もおりましてね。たまに無駄に忠誠心の厚い輩が奪還に来たりするのですよ。そのための備えとしてこうなっているわけです」
なるほどね。
俺の興味津々な様子を見て説明してくれた。
「私に見せてしまって大丈夫なんですか?」
俺が喋ったりしたらどうするんだろ。
「ははは、そういう質問をされるかたはまず大丈夫ですよ。それに冒険者ギルド長から御墨付きを頂いてる方ですから、信用しますよ」
ギルド長の手紙になんて書いてあったかすごい気になるがありがたいことだ。
贔屓しないとか言っておきながら俺が絡まれたことをかなり気にしてくれたみたいだな。
これも一種のツンデレなのか?
「それではこちらの商品など如何でしょうか?」
隠し牢屋に入って一つ目。
早速商品の説明が始まった。
「先日東方で戦がありました際に捕まえられたビフス王国の戦士長です。冒険者のランクに例えますとCCCランク程度の腕があります。肉厚の体は盾としても充分にご使用できますが如何でしょうか?」
部屋の中にいるのは白髪の混じった大柄のおじさん。
厳つい顔を顰めて俺を見ている。
・・・正直怖い。
こんなの道具扱いとはいえ側におくなんてごめんだ。
「えっと、もうちょっと見た目がいい奴をお願いしたいんですけど・・・」
「そうですか・・・では、こちらなど如何でしょうか?」
くるりと体を回転させた反対側、二つ目の牢屋を示す。
「元は悪名高き盗賊集団『ブラック・バード』の副リーダーをやっていた男です。腕はCCランクとなりますが、すばやい身のこなしはなかなかに見所です。さらに顔もなかなかの物ですから男娼としても楽しめるかと」
俺はその気はありませんって。
ベッドに転がって興味なさそうに俺を見ている野郎は確かになかなかのイケメンである。
だけどなぁ・・・。
こんなの俺の横に置いてたら俺の普通フェイスが嫌な感じで引き立ちそうだ。
それに腕も微妙。
正直なところAランクぐらいは欲しい。
「お気に召しませんか?」
俺が腕を組んで悩んでいるのを見て声をかけてくる。
「まぁ、正直なところ・・・」
「ご希望があればそれにそった商品を出しますが?」
そうだね、最初からそうすればよかった。
となると・・・どんなのがいいかな。
うーんと、そうだ、女性。
女戦士!いるだろ、ファンタジーな世界的にこう戦女神とか戦姫とか言われるような強くてかっこよくて、綺麗で美人でグラマーでファンタジーな人。
元々美人の奴隷囲ってウハウハな生活が目的なんだから護衛だってそういうのを揃えればいいんだよ。
何で思いつかなかったかな。
戦争があればそういったのが奴隷として流れていてもおかしくはないでしょ?
「そうですね。女性で見た目が良くて、腕も最低でBランク以上の戦奴隷が欲しいですね」
こんな感じの注文でどうよ。
しかし、俺の要求にレントン氏は微妙な顔をした。
へ?まさか・・・。
「そういった奴隷は・・・。申し訳有りませんが当商会では在庫の持ち合わせはありません」
当商会ではってことは他のところならいるんだよね?
しかし、俺が聞きたいことを察したのかレントン氏から無情な言葉が続けられる。
「残念ながら他の商会も持ってはいないでしょう・・・。おっしゃられているのは『北方の戦姫』や『神槍三姉妹』のような存在なのでしょうが、そういった奴隷はほとんどが戦勝国の国王や将軍のものになりますから市場に出ることは稀なんです」
まじかよ・・・。
美人な戦士が居るとわかったのはうれしいけど確かに言われてみればそうその通りだ。
戦勝国の野郎どもがそんなにいいもの手放すわけ無いよな。
クソな中年将軍に美人な姫があんなことやこんなことされるシチュエーションは萌えるけど・・・萌えるけど今はそれが憎らしい!!
・・・でもまてよ冒険者は?ユエちゃんとか居るんだし。
戦士系の美人冒険者がいてもいいはずだろ?
「冒険者はどうですか?私の知り合いにも戦士じゃありませんが女性の冒険者がいました。そいった関係で腕の立つ奴隷はいませんか?」
「冒険者関係にしても腕も器量もとなりますと奴隷市場に出まわることはあまりありません。どちらかだけなら簡単に手に入りますが・・・両立されている物はやはり最初に捕縛した者がそのまま、というケースがほとんどです。伝手を頼ってみますが期待されない方が宜しいかと」
レントン氏はそう言って蝋燭係の一人に合図を出した。
一人が礼をして出て行った所を見ると調べてきてくれるようだけど。
しかし・・・しかし俺は期待しない。
得てしてこういう期待は裏切られる為に存在すると思っているから。
「判りました。とりあえず適当なのを下さい」
護衛が居ないと俺の命は風前の灯火だ。
早く風よけを手に入れないと安心できない。
美人の奴隷は家を買ってから探すことにしよう。
「そうですか。それでは腕の立つものでBランク以上見た目もいいという条件ですね」
「それなんですけど余り良すぎるのもちょっと、あと年が行き過ぎているのもやめてもらえますか」
さっきのおじさんみたいなのは勘弁。
仕事を始めてから年上、特に中年のガテン系おっさんは無茶苦茶苦手になったのだ。
それまで年上と言えば学校の先生か父親、親戚ぐらいしか付き合い無かったせいで距離のとり方を知らんままに接触したからかなり戸惑ったのだ。
「そうなりますとかなり絞られますね・・・。では亜人はどうでしょうか?」
「亜人?」
亜人っていうとアジア人?
違うか、それってエルフとかかな。
それでもたいして変わらない気がするけど。
「はい、先日よい物が手に入りまして、護衛としてはかなり使えますよ。ランクで言うならBBBかAランクに匹敵します。亜人ということで貴族様には毛嫌いされる方もおられますがリョウ様なら問題無いのではないでしょうか?」
ふむ、Aランクといえばグエンさんの下か、かなり強いな。
それだけあれば腕は合格、あとは外見か。
「とりあえず見せてもらえますか?」
「わかりましたこちらになります」
さらに案内されたのは牢屋の最奥から二つ目。
明かりがあるはずなのに端っこともあってかなり薄暗い。
そんな格子の中、ベットに腰掛けてこちらを見ていたのは・・・。
「・・・トカゲ?」
二足歩行のトカゲ・・・いや、トカゲってのも微妙だ。
口が尖っているといいますか、伸びているといいますか・・・ワニ?
でも鱗っぽいのもあるし妙に細長だし・・・ヘビ?
もうしくは腕が長くなったどこぞの配管工の乗り物?
「シュルルル、我は誇り高き緑鱗族の戦士だ。下等な爬虫類ごときと一緒にするなニンゲン」
「それは失礼。ト・カ・ゲさん」
「シュルルルル・・・」
おもいっきり馬鹿にして言ったやった。
なにやら尻尾をばたばたとさせながら唸って威嚇してますけど人をニンゲン呼ばわりするような奴はトカゲで十分です。
俺が先にトカゲ呼ばわりしたのは恣意的に無視します。
でもこいつ、ゲームなら確実にモンスター扱いだろ。
目がぎょろりとした緑色の二足歩行のトカゲもどき。
申し訳程度に胸にプレートメイルをつけて腰には・・・何も無い。
えっと生殖器は?
いやそんなのはどうでもよくて、魔王軍とかで下級兵士とかやってそうなそんな印象。
これ本当に強いのか?
「如何でしょうか?緑鱗族の戦士でマニといいます。気位は少々高いですが、奴隷にする分には首輪がありますから問題ないかと。先ほども申し上げたように強さはかなりのものです」
「このトカゲを連れて街を歩いても問題ないんですか?」
「街では多少珍しくありますが、普通に生活している者もおります。何より奴隷の首輪をしていましたら何も言われることは無いですよ」
ふーん。
なるほどね、どうしようか・・・。
爬虫類関係は特に嫌悪感ないし、むしろ普通のおじさんやイケメンの野郎を連れて歩くよりは俺の精神衛生上いいかもしれない。
なんてったってファンタジーな世界にいるんだからファンタジーなやつ側に置いておきたいジャン。
うん、そうしよう。
後確認しないといけないのは・・・。
「これにしようかと思うのですが・・・強いというのがその信じられなくて・・・」
レントン氏を信用してないってことだからちょっと言いにくかった。
でも初めての店だから当然だよね。
「そう思われるのは当然です。ですから当商会ではそれをお見せする場所をちゃんとご用意していますよ。どうぞこちらに」
へぇーなんだろう。
案内されたのは地下牢から外に出た店の中庭に当たるところ。
なんと、そこには小さいながらも観客席付きの闘技場があった。
「すごいですね」
店のど真ん中にこんな物があるなんてかなり驚きだ。
広さはバスケットコート一面程度。
石造りで囲われた壁の高さは2mほど、ぐるり一周は観戦できるように客席が設けられている。
「どこの戦奴隷商も大小はありますがこのような施設を持っていますよ。むしろ市場の店ならまだしも施設を持たない町の戦奴隷商は詐欺師だと思った方がいいですよ」
なるほどね。
商品の良さをみせず話術だけで売るのは詐欺師の技なわけだ。
「注意しておきます」
「当商会を贔屓にしていただけましたら問題の無い話ですよ」
「なるほど、確かにそうですね」
さすが商人。
さりげなく売り込んでくる。
そんな話をしながら客席中央に腰掛ける。
闘技場の扉は二つ。
まずは右側の扉が開き、中からトカゲが現れた。
棍棒を引きずりながら前傾姿勢での登場。
やる気なさげに見える・・・。
そりゃ無いよね。
さっきはわからなかったけど身長は2mは超えている。
尻尾を合わせると全長は2.5mはありそうだ。
トカゲは丸い目玉をギョロリと動かして俺を見ている。
さてはて何を考えて見ているのやら。
トカゲが出てきた扉の反対側から鎖に繋がれたゴブリンが三匹、さきほどの蝋燭係りに鞭で追い立てられながら出てきた。
「街の中にモンスターですか?」
ゴブリンでも街の人には脅威のはずなのに。
ちょっと心配だ。
「冒険者ギルドで捕獲された物ですよ?軍の訓練や私どもが利用する為捕獲して欲しいというのは依頼でよくあるはずですが?」
そうなんだ知らなかった。
「ギルドに入りたてで知らないことの方が多いんですよ」
「なるほど、しかし、それなのにギルド長から紹介の手紙を書いてもらえるとはよほど優秀な方のようだ」
あれ?この人は俺を知らないのか。
翼竜のこともあって結構有名人になったつもりだけど富裕街までは話がきていないのか。
ま、別に有名人になりたいわけじゃないからいいけど。
「別にそんなこと無いですよ。ギルド長にはちょっとした貸しがあっただけです」
「ちょっとした貸しですか・・・」
なにやら考えているようだけど手紙には書かれていなかったらしい。
ほんとあの手紙になんて書いたあったんだろう。
そんな無駄話をしている間にゴブリントリオとトカゲが数メートルをあけて向かい合う。
ゴブリントリオ、長いからゴブトリと呼ぼう。
ゴブトリの鎖はすでに解かれギャーガァーと五月蝿いほどにトカゲを威嚇している。
それに対するトカゲは相変わらずの前傾姿勢のまま静かにゴブリンを見ている。
ゴブトリの武器は剣槍斧とばらばら。
全部が刃こぼれしまくりの鈍らの形だけが残っていうという品。
それでも叩かれたら痛いじゃすまないと思う。
「それでは始めます」
レントン氏の言葉に頷いて答える。
それを見て蝋燭係りに合図が送られ、鞭が叩かれてゴブトリが嗾けられた。
武器を振り上げ一斉に襲い掛かるゴブトリ。
しかしトカゲは動かない。
回避も防御もしないトカゲに手加減の一切見えない攻撃が繰り出された。
振り下ろされる斧は肩に、突き出される槍は腹に、振りぬかれる剣は腕に。
三種の武器がトカゲに命中。
切るや刺さるということなく殴打するといわんばかりの鈍い三連撃。
思わず顔を顰めてしまう、むちゃくちゃ痛そう・・・。
ってこれで終了ってなことはないよね?
一切微動だにしないトカゲ。
驚いたように一歩引いたゴブトリ。
そして期待は裏切られることなく、トカゲが動いた。
「シュルルルルルルゥゥゥ!」
トカゲの空気が震えるようなな叫び声。
それに合わせて横薙ぎに振るわれる棍棒一閃。
さっきの三連打の数倍の音と共に斧と剣を持った二匹のゴブリンが吹っ飛び石壁に激突。
ピザでも落としたかのような粘着質な音と共にぶち当たって汚らしい緑の抽象画が壁に描かれた。
微妙なリーチ差で攻撃を逃れた槍持ちのゴブリン。
二匹に巻き込まれるかたちで折れた槍と壁を交互に見比べている。
そんなことやってる場合じゃないだろうに。
ゴブリンが自分を覆う影で気が付いたときには棍棒が顔前にせまり、多分何も判らないまま緑色の水溜りと化したことだろう。
三匹を一瞬で倒したトカゲ。
俺なら確実にあの世行きの攻撃を食らったはずなのに緑の鱗には傷一つ付いていない。
なるほどなるほど。
俊敏性は判らないけど攻撃力、防御力はかなりのもだ。
剣と盾にするには充分。
トカゲは汚れてしまった棍棒を振って血糊を落とし俺を見上げる。
しかし、あいかわらずの前傾姿勢。
というかやる気無く見えるあれが基本スタイルみたいだ。
でも、こうやって上から見てもやはりモンスターにしか見えないな。
何を考えているかわからないのが少し不安だが道具として使うには配慮の必要も無いだろ。
「いかがですか?」
あの結果を見れば答えは決まっている。
「値段は?」
俺の購入の意思にレントン氏の顔に笑みが浮かんだ。
「白金貨2枚と半枚になります」
美人の奴隷が白金貨10枚と聞いてるから、それに比べたら微々たる額だ。
それだけの値段で俺の命が助かるんなら安いもんだぜ。
「それじゃこれで」
袋から白金貨を3枚出して渡す。
レントン氏は硬貨を受け取ろうと手がピクリと動いたが何故か止まった。
表情は一切変わることはなかったが、そんな動きをされると不安になる。
なんか失敗したかな?
「どうかしましたか?」
俺の問いかけになにごとも無かったかのように動き始める。
「いえ、何もご座いません。お買い上げ有難うご座います。引渡しは店内にて行いますのでどうぞこちらに」
・・・少し気になるが、問題なく購入できたようなので案内に従って最初の応接セットまで戻ってきた。
トカゲを引き渡すのに準備がかかるそうなのでそれまでまたコーヒーを頂く。
持ってきたのは赤毛の奴隷野郎だ。
あの金髪さんはどうなったんだろうかとふと思ったが・・・ま、どうでもいいな。
地下に行ったり闘技場を見たりで歩き疲れてしまった。
それに思っていたより時間もかかってしまい日の光もかなり傾いてきている。
遠く聞こえる鐘の音は六つ。
御者さん、かなり待たせちまったな。
そんなことを考えているとトカゲを連れたレントン氏が現れた。
「どうもお待たせしました」
「コーヒーおいしかったですから、問題ないですよ」
立ち上がってトカゲを見るが・・・何故か防具が立派になってる。
さっきは胸だけのプレートメイルだったのに、今は全身鎧(尻尾の先には棘着きの防具まで付いてる)になってる。
武器もただの棍棒がメイスへとパワーアップされている。
「えっと。なにかとても立派になってるんですが・・・」
驚いてしまって言葉がうまくでてこない。
「ただのサービスです。これからもご贔屓にというね」
今後も利用するかわからんけど。
まぁそういうことならありがたく貰っておこう。
「そうですか。今後とも宜しく。とくに先ほどの・・・」
「判っています。まずはこれと契約を」
契約。
初めての奴隷との契約。
俺の初めては美少女とやりたかった・・・。
うぅ、でも今は仕方ないよね。
身の安全優先しないとその美少女とも出来ないんだし。
「すいません。俺契約の方法知らないんですけど」
「そうでしたか、では・・・」
レントン氏が契約の方法を教えてくれる。
といっても難しいことではなかった。
市民カードに自分の血を付けて血の付いた面を奴隷の首に当てる。
これだけのようだ。
小さな針を渡されたので自分の指をちょっと刺す。
注射きらいなんだけどなぁ。
痛!
ほんの少し出来た小さな赤い水滴をカードに擦り付ける。
そしてそのカードをトカゲの首へと持っていった。
しかし、首輪に当たる直前、今までまったく動かなかったトカゲが口を開いた。
「ニンゲン、貴様が我を奴隷としようとも我の心は貴様に対して忠誠など抱かぬ、そのこと忘れるな」
・・・何言ってんだこのトカゲ。
トカゲから視線を外さないまま俺は止めていた手を動かしてカードを首輪に当てた。
白い首輪はカードが触れたところからぐるりと一周赤に染まり、すぐにまた何事も無かったかのように白い首輪へと戻った。
「これで契約は終了です、お買い上げありがとうございます」
へぇーこれで終わりなんだ。
あとは・・・
「そっか、それで一つ聞きたいんですが、首輪を使って懲罰が与えられるんですよね、どうやるんです?」
「それはカードに念じればいいだけです。程度は思いのままに」
なるほど。
では早速。
「シュッルルルル!!」
トカゲが首を押さえて苦しみだした。
ゴブリンの三連撃をまったく意に返さなかったトカゲが苦しむなんてかなりのもんだんだろう。
ってやってるのは俺だけど。
これ思ったより簡単に発動するんだな。
「おいトカゲ。お前、馬鹿なの?死ぬの?」
これは言ってみたかったセリフだね。
「俺が貴様に忠誠なんか期待してると思ってるの?そんなのが欲しければまともに仲間探してるし、せめて金払う限りは信用できる傭兵雇ってるって」
もう一段階力を加えてみる。
「!!!!!」
崩れ落ちて膝をつくトカゲ。
ざまぁ!
「俺が貴様を買ったのは、俺が傷つかないようにするための盾。俺の手が血で汚れないようにするための剣とするため。ただそれだけ。わかるかな?俺は貴様に道具としてしか期待していないんだよ」
さらにカードに念じる。
トカゲの目が限界まで見開き口から泡を吹き始めた。
汚いなぁ・・・。
「リョウ殿、それ以上やると死んでしまいますよ・・・」
レントン氏が止めに入った。
でも無視。
「その道具が持ち主のこと人間なんていってんじゃねぇよ。そうだな・・・主殿、こう呼びな。それ以外で呼んだらお仕置きだから。わかったかな?」
念じるのを辞める。
ビクビクと床で跳ねていたトカゲが荒い息で喘いでいる。
人の話聞いてるのかな?
「わかったかな?」
もう一度聞いてみる。
床から顔を上げたトカゲ。
人間とは違っていて分かりにくい顔だけど、それでもはっきりとわかるほど憤怒の色を浮かべて俺を見てきた。
分かってないみたいだ。
もう一度念じる。
さっきよりも強く。強く。
「ジュル!!!!!!!!!」
マナーがなっていないスープの飲み方のような音を出してまたトカゲが地面を転げ回る。
「わかんないかな?俺とっても譲歩してるんだよ?君が心の中でなんと思おうと勝手だって。道具が何を考えようがどうでもいいからね。ただ使われてくれたらいいんだよ。ただ周りのこともあるから主殿と呼べってね」
言い終わってから、念じるのを辞める。
荒い息をしながら地面でへたり込むトカゲ。
先が二つに割れた長い舌をだして空気を吸い込んでいる。
「まだわかんない?」
三度の問い。
これで言うこと聞かなかったら捨てちゃおっと。
倒れたトカゲの顔のそばでしゃがんで顔を覗き込む。
トカゲの目にはまだ反抗心が見て取れる。
それはいいんだ。
さて、なんて答える。
しばしまってから開かれた口から出た舌が動いた。
「シュル・・・。我が真に忠誠を誓うことは無い。しかし・・・成すべきことが我にはある・・・主殿。主殿に従おう」
うん。よかった。
本当に良かった・・・。
躾は最初が肝心っていうし、こんなものかな。
まぁ色々と気に入らないがいいだろ。
立ち上がってレントン氏に向き直る。
「すいません。床汚してしまって」
トカゲが吐いた泡が少し床についてしまった。
「いえ・・・それはかまわないのですが、先ほどの話からすると奴隷を買ったのは初めてとのことでしたよね?」
「そうですが?」
契約の仕方知らなかったからわかるだろに。
「そうですか、初めてでここまでする方は・・・いえ。なんでもありません」
そこまで言ってたら全部言ったも同然だと思うけど。
まぁいいや。
とりあえず。護衛ゲットだぜ!!
チャラララッララー!!
と、脳内でファンファーレを鳴らしておこう。
「それじゃ俺は帰ります。女性で強い奴隷が入ったら『鞘の置き場亭』まで連絡もらえますか?」
今日一日でかなり動き回ったから疲れた。
もう寝たい。
結構ハードな一日だったな。
すでにお休み前の回想モード一歩手前で帰る気全開だったがレントン氏が何やら言いたい様子だった。
「そのことなのですが、先ほど問い合わせたところ『マーマルオークション』でかなり腕前のたつ女奴隷が競りにだされるとのことです」
まじで?
「当然見た目も・・・?」
「むろん、かなりのものだとか。それでその奴隷は今開場している競りにだされるとのことで、今から行けばなんとか間に合うと思います」
そいつはなんとまぁ・・・俺の一日はまだ終わらないようだ。
・・・ってこの野郎。
俺が正式にトカゲを買うまで黙ってやがったな。
まったく食えない商人だぜ。
以前感想で言ってた方がいました。
主人公は人間嫌いじゃないのかと。
そんな設定は無かったのにこれを見るとそんな気がしてきます。
緑鱗族はそのまま『リョクリンゾク』と呼びます。
リザードマンでは無いのであしからず。
今回は微妙に駆け足なきがします。
そしていつものように文章量のばらつき。
自分の腕の無さを痛感します。
修正06/29