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異世界の生活は原付と共に  作者: 夢見月
第二章(前半)原付「俺様の退屈で暇な一日」
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原付「私はお腹が空きましたよ?・・・ってまた置いてけぼりですか!?」

 叫びまくって疲れたので新たなギルドカードと報酬の受け取り、魔石の清算は後回しにして宿に戻った。

 宿にも話は届いていたのか拍手で迎えられてしまった。

 ちょっとびっくりだ。

 俺のボロボロの姿を見たサラが大丈夫!?と抱きつかんばかりに心配してくれが、体を触られまくって傷が痛かったし別に抱きついたわけでもないのにマスターの顔が一瞬鬼になってたので嬉しくない。

 いや、たまたま偶然おもいがけず奇跡的にあたったサラの胸はなかなかに良かったと認める。

 まぁそんなことはどうでもいいことにして、ゆっくりと帰ってきたがやはり精神的に疲れたのか、「宴会やろうぜ!」といった話を断って部屋に戻った。

 そしてそのままベッドに倒れこんだらどこぞのの○太君なみの速度で寝てしまった。



 そして驚いたことに起きたのは次の日の朝!!

 帰ってきたのが昼前だからほぼまる一日寝ていたことになる。

 ご飯食い逃したぜ・・・。

 体の調子は寝すぎたせいで頭がボケているが怪我も順調に回復。

 朝の魔術練習でも問題なく火を出すことができた。

 俺の一張羅の作業着がボロボロなのが残念だが予備に持っていた服もこの前の戦闘で駄目になってしまったのでこのまま着ていくことにする。

 一先ず井戸で顔を洗ってさっぱりしたあと食堂に顔を出した。


「おはよう」

「あ、おはよう!ずっと寝てたみたいだから起こさなかったけど大丈夫?」

「大丈夫。お腹空いたからご飯頼むよ」

「うんわかったわ」


 返事をして厨房に引っ込んだサラは数分とかかることなく料理を出してくれた。

 今日はシンプルに目玉焼きとソーセージにサラダとパン、そして白いスープ。

 しかしかなりの大盛り。

 すきっ腹にダメージを与えないようにゆっくりと頂く。

 聞こえてくる鐘の音は七つ。

 一般の人なら少し遅いけど活動する時間。

 しかし、俺以外に客はテーブルに座った二組だけ。

 ここは結構人が多かったはずだが・・・はて、何かあったかな?


「リョウに伝言が二つ」


 サラが俺の横に腰掛けて言った。


「ギルド長様が昨日の夜来たんだけど寝てるって言ったら伝言を頼まれたの、一つ目が、孫は助かった。感謝するって」


 そうか間に合ったんだな。

 とてつもなく回復が早い気がするけどよかった。

 別に死んだとしても報酬は貰えるけど、苦労したんだから助かってくれないと困る。

 まぁ、これで心置きなく報酬が貰えるってもんよ。


「二つ目が報酬を渡したいから明日、もう今日ね、今日の昼過ぎ鐘一つに来て欲しいってさ」

「了解」


 スプーンを口に入れたまま頷く。

 スープはあっさりした塩味だけどうまい。

 爺の召喚命令を素直に聞くのはまだ少し頭来るけど、ギルド長もそれなりに忙しいんだろ。

 今回は時間通りに行ってやるさ。


「もう一つはエアロおばさんから、ってこれだと三つになっちゃうね」


 いや、どうでもいいからさっさと伝言。


「服が出来たから取りに来い。ちゃんと金も持ってな。だって」


 あ、出来たんだ。よかった。

 これでボロボロの作業着を着続ける必要はないわけだ。

 安心したぜ。

 これも頷いて了解。

 

「早速行くことにするよ、この服もなんとかなるなら直して欲しいし」

「そうね、いい服だから直したら十分着れるわ。おばさんの腕なら新品に戻るわよ」


 そこまではさすがにないだろ常識的に考えて・・・。


「それにしても今日は人少ないな」

「初めてこの時間に起きたくせに何言ってるのよ」


 そういえばそうか、起こされる以外は自然に起きるに任せているから最近は九時・・・鐘九つくらいになっていた。


「これはリョウが翼竜の爪やらを置いてきたって言うからみんな取りに行っちゃったのよ。お陰でお客が少なくて暇だわ」

「そりゃすまなかったな。それ以外は別の依頼か、情報を知らない人たちか」


 俺たちの会話を聞いていたテーブルの冒険者の一人が腰を浮かしたが他の奴にもう遅いと止められている。

 それ以前に行った所でまだあるとも限らないし、他の翼竜が近くにいないともかぎらない、有象無象のおこぼれに預かるしかない雑魚共が行った所でどうしようもないのに・・・。


「さて、まずはエアロさんの所に行ってくるよ」


 手を合わせてご馳走様と呟いてから俺は扉へと向かう。


「あれ、あの魔道具で行かないの?」


 ああ、サラも知っているのか。


「あれは無茶しすぎたせいで調子が悪いんだ、直すまでそのままおいておくよ」


 実際はいつもと同じオンボロ具合で本体に異常は無いと思う。

 問題なのはガソリン。 

 昨日は普通に街中でも乗ってしまったがメーターを見るとガソリンがピンチだった。

 何とか補給しないと役立たずになっちまう。

 バッテリーは残ってるから最悪はライトと警笛だけは使えるけど・・・。


「そっか。残念。ちょっと乗せて欲しかったんだけどなぁ。けどそれなら余計に色々と気をつけてね」

 

 女の子と二人乗りってそれなんてリアル充実なローマの○日?


「それはまた今度だな。ちゃんと直したら乗せてあげる。でも色々気をつけてって別に依頼を受けてるわけじゃないんだ、何も無いよ」

「そうだといいけどね・・・」


 また何やら含みがある言葉だ。

 酒場でのお試しバトルのことがあるから気になるけど外に出ないと始まらない。

 扉に手をかけようとしたが荷物を忘れていた。

 さっさと戻って魔石や聖玉草の残りを鞄に詰めなおして準備をすまして宿の外に出た。


 しかし・・・。


「待っていたぞ『魔術師』!!!貴様を倒して俺様の名を世にしらしめる!!」


 馬鹿だ。

 馬鹿がいた。

 宿の前に馬鹿がいた。

 脳みそ筋肉体言してる馬鹿がいた。

 上半身裸に鎖を巻いた筋肉がムキムキで脂っこくて気持ち悪いテカテカ光ったハゲのマッチョ巨漢。

 しかもポーズなんか決めてるし。

 絶対馬鹿だよ。


「俺様は『剛力のバズ』いざ尋常に勝負せよ!!!」

「断る」


 一刀両断!

 さて、乗り合い馬車はどこかな。


「な!?男が勝負を挑まれて逃げるのか!?」


 北へと足を向ける俺に馬鹿は一歩一歩ポーズをつけて追いかけてくる。

 キモイっての。

 もちろん質問には無視である。

 てかこの馬鹿、俺が出てくるまでずっと待ってたのか?

 いつ起きるとも知れないのにほんと馬鹿だ。


「それでも男か!?この玉無しが!所詮魔導師風情がちょっとギルド長に気に入られたからと調子にのりおって!!」


 はいはいワロスワロス。

 こういった『魔導師』に対する挑発は誰でも一緒なのか?

 それとも馬鹿だから語彙が少ないだけか?

 まぁどうでもいいけど。

 あ、馬車発見。


「こうなれば仕方ない!我は貴様に決闘を挑む!!」


 そう言って馬鹿は拳を地面に打ち付けた。

 それを見ていた周りの人たちが一斉におお~!!と騒ぐ。

 なんじゃ?


「ははは!!正式な決闘要請だ!!これで貴様は逃げられん!!」


 なにそれ?俺は近くにいた剣士風の冒険者に尋ねた。


「どういうこと?」

「あ、ぼ、冒険者同士の暗黙のルールだよ!じ、自分の武器を地面に打ち付けて名乗ったら決闘が認められるんだ!!逃げたら一生笑いもんだ!!」


 いきなり尋ねられた剣士は多少つっかえながら慌てて早口に答えてくれたが・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・


 ふーん。


 なんだそれだけ?

 知るか。

 笑いものにされるくらいどうだっていうんだろうか。


「あっそ。どうでもいいや。じゃあさようなら」


 ヘイ!乗合馬車!!っと手を振ってみる。


「ききき貴様!神聖な決闘をなんだと思っている!!!笑いものにされてもいいのか!!!」


 ムンっと筋肉を見せ付ける。

 うーんポーズ的に十点!

 もちろん千点満点中でだ。


「別にいいよ?どうぞご勝手に。いっそのこと負け認めますよ?ワタシノマケデス。ゴメンナサイ。アナタノショウリデス。オメデトウ。タイヘンツヨカッタデス」


 ワーパチパチと拍手までしてあげた。


「貴様貴様貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 何が気に入らないのか頭の血管浮きでまくってるよ。

 なんでさ?負け認めてるのに。

 気が付けばご丁寧に円形に空間を空けられていた。

 余計なことを、勝負しないって。

 馬車まで止まって俺たちを観戦してやがる。

 止まってくれるのは俺としては助かるけど・・・。

 こらそこ!賭けを始めるな!!


「馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇぇ!!!」


 叫びと一緒にドスドスと筋肉が突っ込んできた。


「あんたの勝ちだって言ってんのに何で来るんだよ!」


 三十六計逃げるが勝ち。

 俺は踵をかえして脱兎のごとく逃げ出した。

 が、囲んでいる冒険者達が退かない!!

 この馬鹿どもが!


「邪魔!どかないと全員石にするぞ!!」


 咄嗟に以前のケンカで広まったという噂を思い出したので言ってみる。

 囲みを作っている阿呆共の中に噂を知っている奴が数人いたようで少し及び腰になった。

 俺はすぐに腰が引けた奴の間に滑り込み囲みを脱出する。

 後ろから罵声を浴びせかけられるがまったく気にしないし気にならない。

 あまり多くない体力を削ってすたこらさっさとその場を逃げ出した。

 しかし雑踏を走りながら考える。

 

 魔術師に対して肉弾戦挑むってなんか色々と間違ってないか?

 この世界に正々堂々とかないものなんだろうか?

 

 そんなことを考えながら俺は馬鹿が見えなくなるまで走り続けた。

大変お待たせしました。

お久しぶりです。夢見月です。

半年以内と言っておきながら二ヶ月くらいでどうにかならないかな?

とか企んでいましたが結果はこの通り。

申し訳ありません。

この第二章に関しても色々とあるわけで・・・。

詳細?は活動報告の原付「貴様の目は節穴かぁぁ~~~!!!」の下のほうにちょこっと書いてますのでそちらをご覧下さい。


それでは、またしばらく『原付』にお付き合いいただけたら幸い。

よろしくお願いします。


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