第29話:概念の「大掃除」。リト、無を洗って有に変える!
世界を飲み込もうとしていた「無」に対し、リトが放ったのは、全属性を網羅した究極の洗浄液だった。
バシャァァァァァァァッ!!
空から、光の雨が降り注ぐ。
「無」の柱に触れたその雨は、存在しないはずの空間から「忘れ去られていた記憶」や「放置された可能性」という名の埃を、次々と洗い出していった。
「な、なんだ……!? 『無』が……形を持っていく!?」
マルドゥクが驚愕する。
リトが「無」を洗ったことで、そこにあった「虚無という名の概念の汚れ」が落ち、本来そこに在るべきだった「澄み渡る空間」が再構築されていったのだ。
「汚れっていうのはね、重なりすぎると、そこにあるものを見えなくさせちゃうんだ。……今、その埃を払ってあげたから。……ほら、見えるでしょ? 君が本当に守りたかったものが」
リトの洗浄波動が、マルドゥクの心に直接触れた。
彼の「過激な信仰」という汚れの下にあったのは、ただ「誰からも忘れ去られたくない」という、あまりに人間臭い、小さな寂しさと誇りだった。
「あ……。あああぁぁぁ……っ!!」
マルドゥクの目から、大粒の涙が零れた。
彼の背負っていた「鉄の純血」という名の、あまりに重く、汚れた看板。それがリトの洗浄によって、一枚の軽い「手ぬぐい」のような、清々しいものへと変わった。
「……リト。貴様は、神をも洗うのか」
「神様だって、たまには背中を流してもらいたいはずだよ。……人間がこんなに汚してるんだからさ」
リトが笑うと、聖都を覆っていた灰色の影は、一瞬で晴れ渡った。
以前にも増して輝きを増した太陽の下で、マルドゥクはリトの前に膝をつき、自らの汚れた十字架を差し出した。
「……私の負けだ。……この十字架を、貴殿に託そう。……いや、磨いていただけないだろうか。……私の人生、やり直すための、最初の一拭きとして」
「喜んで。……まずは、この角の汚れからだね」
リトは優しく微笑み、再びクロスを動かした。
こうして教会の内乱は、リトという「最高級のクリーナー」によって、一片のシミも残さず解決されたのである。




