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『追放された掃除屋の俺、全自動の「洗浄結界」を張ったら聖域が爆誕した。〜ボロボロの女騎士を洗ったら神話級の英雄に覚醒したんだが、俺はただの清掃員なんだが?〜』  作者: ジキルぅ
第2章:異端審問と真・聖女認定編

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第22話:異端審問官、泡に沈む。リト、禁忌の鎖を「シルバー磨き」で無力化。

 「魂を抜く魔女(掃除夫)」として断罪され、漆黒の鎖に包囲されたリト。

 審問官マルドゥクが放つ「異端抹殺の鉄鎖」は、触れた者の魔力だけでなく、存在そのものを「罪」として定義し、腐食させる力を持っていた。

「死ね、偽りの聖者! その小綺麗なツラを、我らの正義という名の錆で埋め尽くしてやる!」

 数百本の鎖が、猛毒の蛇のようにリトへ殺到する。

 背後のエルナは、その圧倒的な重圧に膝をついた。教会の歴史において、この鎖から逃れられた異端者は一人もいないからだ。

 だが、リトは動じない。

 彼は霧吹きをシュッと一吹きし、空中に「アルカリ性・界面活性魔力」を散布した。

「【局所展開:つけ置き・ナノバブル結界】」

 パチン、と指を鳴らす。

 瞬間、リトの周囲に、雪のように白い、キメの細かい「泡」が爆発的に発生した。

 殺到した漆黒の鎖は、その泡に触れた瞬間――。

「な……ッ!? 鎖が……止まった!?」

「止まったんじゃないよ、マルドゥクさん。……汚れが浮き上がってるんだ」

 リトの泡に包まれた鎖から、ジュワジュワという激しい音が響く。

 鎖に塗り込められていた「怨念の塗料」や「呪いの錆」が、リトの洗浄液によって強制的に分離され、真っ黒な汚水となって地面にポタポタと滴り落ちていく。

「な、バカな! 我が『鉄の純血』が、ただの泡に負けるというのか!? 引け! 鎖を引き戻せ!」

「あ、急に引いちゃダメだよ。……仕上げの『磨き』が終わってないから」

 リトは、愛用の魔導クロスを取り出すと、目の前に浮遊していた一本の鎖を「キュッ」と一拭きした。

 すると、どうだろうか。

 ドス黒かった鉄の鎖は、一瞬にしてプラチナのような白銀の輝きを取り戻した。それだけではない。鎖に宿っていた「抹殺」という殺意そのものが洗浄され、代わりに「繋ぐ」という、鎖本来の純粋な概念が覚醒した。

「……あ、あれ? 鎖が、言うことを聞かない?」

 浄化された鎖たちは、マルドゥクの命令を拒絶し、リトを守るように円陣を組み始めた。

 まるで、リトという主人に磨かれた喜びに震えているかのようだ。

「……信じられん。教会の禁忌を、シルバー磨きの手順で無効化したというのか」

 アルテミスが、呆れ半分、感銘半分で呟く。

「マルドゥクさん、君の心も、その服みたいに真っ黒だね。……少しだけ『漂白剤』、強めに設定しておくよ」

 リトが手をかざすと、泡の波が武装神父たちを飲み込んだ。

「やめろ! くるな! 私を洗うな……! 私は、この『正義という名の汚れ』の中でしか生きられないんだぁぁぁっ!」

 マルドゥクの絶叫は、リトの放つ清涼感あふれる石鹸の香りに掻き消された。

 泡が引いた後、そこに残っていたのは、ピカピカの銀色になった鎖と、そして「……私、何をそんなに怒ってたんでしょう。明日、近所の子供たちに飴を配りに行きます」と、悟りを開いたような顔で座り込む過激派たちの姿だった。

 だが、マルドゥクだけは違った。

 彼はリトの洗浄に耐え、泡の中から這い出してきた。その肌は真っ赤に焼けただれているように見えるが、それは「あまりに清浄な力」に、彼のどす黒い魂が拒絶反応を起こしている証だった。

「リト……。まだだ……。まだ『教会の最深部』には、貴様でも洗いきれない『原罪』が眠っている……。そこへ来い。……そこで貴様を、真の絶望で塗り潰してやる!」

 マルドゥクは煙のように姿を消した。

 リトは、残された銀色の鎖を見つめ、「……これ、もったいないから、後でフェンスの修理に使おうかな」と、平和な再利用を考えていた。

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