第19話:教会の反乱。泥を愛する「汚泥の司教」の逆襲。
リトの影響力が強まる中、ついに教会の保守派が動いた。
その中心にいるのは、リトとは対極の思想を持つ「汚泥の司教」バルタザール。彼は「苦行こそが救いであり、汚れこそが人間の本質である」と説き、リトがもたらす清浄を「神への反逆」と断じた。
「清らかすぎる世界に、救いなどない! 人は泥にまみれ、喘ぎ、苦しんでこそ、神の慈悲を乞うのだ!」
バルタザールは禁忌の術を用い、聖都の下水に眠っていた「千年のヘドロ」を呼び覚ました。
突如として、聖都の美しい噴水や水路から、どす黒い粘液が溢れ出した。それは触れるものを腐らせ、リトが磨き上げた街並みを一瞬で黒く塗りつぶしていく。
「リト様、大変です! 街が、街がまた汚されていきます!」
エルナが悲鳴を上げた。
「……。せっかく、昨日ワックスがけしたばっかりなのに」
リトの瞳から、光が消えた。
彼にとって、悪意ある汚れは「敵」ではない。「許されざる不法投棄」だ。
「アルテミスさん、王女様。……ちょっと、本気で『つけ置き』するから、時間を稼いでくれる?」
「了解しました。リト様の掃除を邪魔する不純物ども……一匹残らず切り刻んで、堆肥にしてやりましょう!」
アルテミスが、かつてない殺気を纏って飛び出した。
バルタザールが率いる「汚泥の騎士団」と、リトを守るアルテミス・エルナ連合軍の戦いが始まった。
バルタザールの放つ泥魔法がアルテミスを襲うが、リトに磨かれた彼女の鎧は、汚れを一切寄せ付けない。
「無駄だよ。リト様に洗われた私の魂は、貴様らの泥ごときでは一ミリも汚せない!」
アルテミスの聖剣が閃くたび、泥の騎士たちが「消臭・分解」されていく。
しかし、バルタザールは不気味に笑った。
「フフフ……。時間は稼がせてもらったぞ。聖都の地下にある『大貯水池』に、我が命を賭した『永久不滅の墨汁』を流し込んだ。……これで、この街は永遠に黒く染まるのだ!」




