第18話:王女フラウレルムの「自分磨き」。潔癖症の極致、リトへ迫る。
地下書庫の掃除を終えたリトを待っていたのは、第一王女フラウレルムからの強引な呼び出しだった。
彼女は現在、聖都の一角にある最高級のスパ施設を「完全洗浄済み」として借り切り、そこでリトを待っていた。
「リト……。あなたが世界を洗う姿を見て、私は気づいたの。……世界を白くするだけでは足りない。私自身が、あなたの隣に立つにふさわしい『清浄の女神』にならなければならないと」
湯気の中に浮かぶフラウレルムは、リトの手によって「魂のシミ抜き」をされて以来、その肌からは微かな後光が差していた。彼女の潔癖症は、今や「リト以外の一切の不純物を許さない」という、極めて偏った方向へと進化していた。
「リト、私を磨いて。……爪の先から、髪の一本一本まで、あなたの結界で、あなたの指先で……完璧に洗ってほしいの」
フラウレルムが白い肌を晒し、リトに詰め寄る。その瞳は獲物を狙う雌豹のようであり、同時に主に甘える子猫のようでもあった。
「あ、はい。……じゃあ、まずはこの特製『魔力スクラブ』を使ってみる? 古い角質と一緒に、日常のストレスもポロポロ落ちるよ」
リトは、彼女の誘惑を「高度な清掃依頼」として受け取った。
彼は指先に微細な振動結界を纏わせ、フラウレルムの背中にそっと触れた。
「……っ!! ああああぁぁぁっ!?」
フラウレルムの絶叫がスパ内に響き渡る。
リトの指が触れるたび、彼女の体内に溜まっていた「王族としての重圧」や「孤独」という名の目に見えない汚れが、白い泡となって排出されていく。
それは快楽を超えた「浄化の極致」。
扉の外で見張っていたアルテミスが、壁を拳で叩く。
「おのれ王女……! リト様の『全身手揉み洗浄』を独占するなど……! 万死……万死に値するッ!!」
「落ち着いてくださいアルテミスさん! 私も、私も順番待ちをしているのですから!」
聖女エルナまでが顔を赤くして列に並んでいる。
リトは無欲に、ただひたすらに「最高の肌触り」を求めて王女を磨き上げる。
その結果、フラウレルムの美しさはもはや人間を辞めたレベルにまで到達し、彼女が歩くだけで周囲の空気が勝手に浄化されるという「歩く空気清浄機」へと変貌してしまった。




