月のほう
とりあえず一文無しを解消するためギルドの掲示板を眺め依頼内容を確認する。
「ツキノワグマ討伐、薬草採取...報酬が安いな。これはなし。まじかスライム討伐なんてあんのか。報酬も高額だし。これにしよう。」
依頼書にギルドカードを重ね、考える。
スライム討伐だけでこの報酬、太っ腹な人がいるもんだ。
ということでスライムが沸いているという平原に来てみたわけだが...
「でかくね?」
とにもかくにもでかい。自分の身長の2倍はあるスライムとの戦闘は初めてだ。
そもそもスライムとの戦闘が初めてなわけだが。
「とりあえず一回切ってみるか。」
モンスター図鑑なるものがギルドで見ることができ、スライムが高い物理耐性を持っていることに絶望したが、襲ってこないらしいし、物理無効というわけでもない。
一回戦ってみようという結論に至った。
多少多めに借金したおかげで短剣が買えたのでそれをスライムの肉体に突き刺す。
刃が離れた瞬間に引っ付いてしまうスライムの再生力に心を折られかけたが、丸一日かけてスライム一体の討伐に成功。借金を報酬で返し、魔法が使えないと話にならないと思い、掲示板にある紙を張る。
"魔法職募集。気になる人は食事処のカウンター席まで。"
パーティメンバー募集の張り紙。
どうやらスライムには魔法攻撃が特攻らしい。
「すいません。まだ魔法職募集してますか?」
昨日一日食堂で何もせず一日たった結果、無駄に依頼達成期限を減らしてしまったが、今日は一人応募しに来た。昨日の一日は多分無駄ではない。
応募してきた少年の黒髪には、白金色の月の飾りをつけている
「してまーす。」
昨日からあんまり寝ておらず、腑抜けた声を出してしまった。
「ん...ま、とりあえず君って誰?」
「僕はルナです。得意なことは魔道具製作と雷魔法です。火力が高い魔法ほど好みです。」
絶対最後の補足入らないだろ...と思いつつ、魔道具制作...魔道具って自分で製作できるのかすごい。
「作った魔道具って俺も使えるの?」
「太陽の子が使ってた覚えはないですが、多分使えると思います。」
「採用。」
異世界にきて魔法が使えないというのはちょっと悲しかったので、魔道具が自分でも使えるという事実に飛びつく。
「とりあえず、このスライムの依頼をこなしたいから一緒に行こう。」
「わかりました。」
ハルがチクチクダメージを与えると多少ヘイトが向く程度の知能がスライムにもあるようなので、一か所にスライムを集める。ゲームのヘイト管理の経験がここで役に立つのか。
ルナはその趣向により高火力魔法をぶっぱなしたいんだと。
「では、お願い。」
ルナはその手元から魔法書を取り出しパラパラとめくる。そして厨二心溢れる呪文を唱え始める。
「雷の神よ。夜の天使よ。大きな雷雲を作り出し、強烈な一撃を叩き込め!」
最上級雷魔法!
「うお。これは壮観だなあ。」
目の前に広がるのは高くまで伸びている煙と雷によるクレーターである。
さっきまで苦労して魔法範囲内まで運んだスライムの面影はどこにもない。
クレーターの大きさがその魔法の規模を物語っている。
「まじでおとといの一日は何だったんだ。よし、任務も達成したみたいだし、報酬もらいに行くか。」
「はい!」




