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第38話 黒幕の嘲笑、そして覚醒


レオンハルトの叫び声が、ダンジョン・コアの空間に響き渡る。テントから飛び出した冒険者たちは、子供たちの結界を囲む、強力な魔物の群れと対峙した。彼らの瞳には、疲労の色よりも、子供たちを救い出すという強い決意が宿っている。


イザベラとグレン、そしてレオンハルトが前衛として、結界に迫る魔物たちを迎え撃つ。イザベラの剣は流れるような動きで魔物の急所を突き、グレンのハンマーは大地を揺るがす一撃で複数の魔物を吹き飛ばす。レオンハルトは、二人の間を縫うように立ち回り、精密な剣技で敵を仕留めていく。彼らの連携は、これまでのどんな戦闘よりも洗練され、完璧だった。


その後衛では、シドが雷魔法を、カノンが風魔法を放ち、広範囲の敵を薙ぎ払う。リリィは、一瞬の隙も見逃さず、銀色の矢を放って強力な魔物を仕留める。しかし、コアの瘴気によって強化された魔物は、再生能力が高く、なかなか数が減らない。


「はぁ、どんだけいるんだよ!」


シドが焦りを滲ませた声を出す。


テントの中では、リラとエリオットが、次の作戦を練っていた。リラは子供たちを救出するための回復魔法を準備し、エリオットは解析魔法でコアや魔物の弱点を探る。千尋はマメ太と共に、戦闘で発生した瘴気をひたすら回収し続けていた。彼女の力が、冒険者たちの疲労を少しでも和らげていた。


その時だった。



空間に、静かで不気味な声が響き渡った。それは、まるで空気そのものが震えているかのように、冒険者たちの耳に直接届く。全員が声のする方を振り向くと、巨大なコアの陰から、一人の男がゆっくりと姿を現した。


彼こそが、この絶望を生み出した黒幕、オルフェウスだった。彼の顔には、冒険者たちの努力を嘲笑うかのような歪んだ笑みが浮かんでいる。


「おやおや、随分と奮闘しているようだね」


オルフェウスは、まるで舞台役者のように両手を広げ、傲慢な笑みを深めた。


「まさか、あのテントを使ってここまでたどり着くとはね。君たちの発想には驚かされたよ。だが、無駄な努力だった」


彼の言葉に、如月は顔を歪めた。


「貴様が…このスタンピードを…!」


「その通りだよ、これは私の計画だ。あの方の言う通りにしたら、間違いない。このダンジョン・コアは、ただの魔物の発生源ではない。この世界のことわりを書き換えるための装置だ」


オルフェウスは、子供たちの結界を指差す。


「そして、この子たちは、そのための触媒だ。彼らの純粋な魔力は、コアの力を増幅させ、世界を魔物で溢れさせる。王都の結界をより強固なものにするため、貴族の力が必要となる。それこそ、貴族社会が絶対なのだ」


オルフェウスの言葉に、皆が息をのむ。


「そして、もう一つ。私の計画に不可欠な存在がいる。それが、君、千尋だ」


オルフェウスの視線が、テントの中の千尋に向けられる。


「君の持つ『女神の加護』の力は、瘴気を操ることができる。君の瘴気回収能力が、コアの力をさらに増幅させる鍵となるのだ。そして、あの方の野望にも近づくはず」


オルフェウスは、コアに自らの魔力を注ぐ。オルフェウスからは黒い瘴気が放たれ、それらが形を変えて、これまで見たこともない異形の魔物へと変貌していく。


「さあ、見せてくれ。君たちの絶望的な顔をね」


オルフェウスが嘲笑を浮かべると、異形の魔物が冒険者たちに襲いかかる。その力は、これまでの魔物とは比べ物にならないほど強力だった。前衛の三人が吹き飛ばされ、後衛の魔法も通用しない。絶体絶命のピンチに、誰もが諦めかけたその時だった。



「ワォン…!」


テントの入り口から、ソウマが飛び出す。


「ソウマ、何をしてる!さすがにそいつは無理だ!引き返せ!」


如月が叫ぶが、ソウマは如月の言葉には見向きもせず、オルフェウスの前に立つ。


ソウマの体から、黄金の光が溢れ出す。それは、魔物を一瞬で薙ぎ倒す。そこにマメ太も参戦する。


「マメ太!」


仲間を守るために飛び出したソウマに続き、マメ太もまた、千尋の制止を振り切るように駆け出していく。千尋は一瞬迷うが、マメ太がソウマの隣に並び立ったのを見て、決意を固めた。


マメ太が魔物の瘴気を操り、動きを鈍らせる。千尋は、そのマメ太を援護するように、痛む腕に耐えながら、瘴気を魔石へと押し込める。


ソウマが魔物に飛び掛かり、魔物にダメージを与えていく。


「まさか…!そんな力が…!」


オルフェウスが驚愕に目を見開く。


ソウマとマメ太が魔物にとどめをさそうとした時、魔物が最後の力を振り絞るように反撃に出る。ソウマとマメ太は大きく弾き飛ばされ、動かなくなってしまう。


「マメ太!」「ソウマ!」


「今だ。ソウマとマメ太の犠牲を無駄にするな」


イザベラの言葉に皆が一斉に攻撃を仕掛ける。


千尋もマメ太を気にしながらも、痛む腕に耐えながら必死に瘴気を魔石に押し込める。瘴気が薄くなった魔物は、今までとは違い攻撃があたるようになる。


魔物にとどめがさされた頃、後ろ側から見知った人たちの声が聞こえた。


葵、大泉、ディートリヒ、援軍だった。



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