左手の薬指に絆創膏
今日も黒いです('ω')
『鈴木晶子』と言う自分の名前が余りにも在り来りで……独身の頃は嫌だった。
その恩恵に預かったのは結婚した時だ。
相手も鈴木姓だったから……
「もう二度と無いだろうなあ」と思っていたら、“恩恵”はもう一度訪れた。
不実のダンナと離婚したから。
しかも恩恵が訪れたのは私だけでは無い。
息子の天煌も苗字を変える事無く、私と生きて行けるのだから……
“ひとり親”に適応される福祉の手助けは必要だから届け出は済ませたけれど……これらの事が天煌の友人関係に洩れたりはしない。
そうでなくても、天煌には本当に辛い思いをさせているから。
“不実”の発覚後、連日に渡って続けられた深夜の言い争い。その後の家庭内別居から離婚調停の申し立て。それに伴う学区内での母子転居。
“思春期の入口に立つ”繊細な時期の天煌にとって、これらの事柄は心の大きな負担になっていたのだろう。
ようやく離婚が成立し、私の心は楽になれたけれど……天煌とその父親の親子の縁が切れた訳では無い。
ああそうだ!
これが苗字が変わらない事のデメリットなのかもしれない。
私はふと、仕事の手を止めて自分の左の薬指に目を落とした。
そこには結婚指輪の跡が深く刻まれている。
思い出した!
元夫はエンゲージリングをくれる事も無く、私だけに結婚指輪を用意した。
自分は酷い金属アレルギーだとほざいて!!
まるっと!笑い話だが……その“金属アレルギー”のアイツが……趣味の悪いネックレスを身に着けているのに気が付いて……“不実”が発覚した。
“頑丈な”私は安物の指輪にアレルギーを起こす事も無く月日を費やし……最初は指輪が回るほどに細く滑らかだった指も……太く荒れ節くれだち、いつしか指輪が抜けなくなっていた。
そんな指輪も、元夫との縁と一緒にカットし、廃棄したが……
この指輪の跡は……私の人生の傷跡そのもの!
けれど明日は天煌の授業参観だから……“この傷跡”を絆創膏で覆い隠そう。
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