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第六話


「あの、エル様」

「婚約破棄はしないよ。だって、破棄するためにはヴィダル家当主とハイリヒ家当主の二人から許可をもらわないといけないし、そもそもこの婚約は両家の利益が一致して行われたもので、破棄すると損害も大きいからね」


 にこにこと微笑む彼ですが、その目は相変わらず笑っていません。底冷えするような笑みです。

 エルンスト様の言い分は最もですが、これに負けていてはわたくしの撃沈で終わってしまいます。何とか、成果を得ないと。


「エル様は、わたくしにこうやって婚約破棄を提示されて、どう思われましたか?」


 思考を働かせた結果、問いかけた内容はかなり足掻いたものとなってしまいました。これを直接尋ねてしまっては意味がないと分かっているのですが、わたくしからしたら一番手っ取り早い方法だったのです。というより、他に聞くことが何も思いつかなかったです。


「…………なるほど。そういうこと?」


 エルンスト様小さく呟いて、ゆっくりと目を細めました。何故かわたくしは、肉食獣に狙いをつけられた小動物の気持ちが分かった気がしました。


 だってこんなの、絶対に逃げられない……。


 これは、心から謝る必要がありそうです。彼を怒らせたのは、全てわたくしの責任ですから。

 わたくしはエルンスト様を見上げ、はっきりと述べました。


「僕は、君だけを愛している」「本当に申し訳ありません!」


 …………ん?


 わたくしの謝罪の前に、何かおかしな言葉が聞こえてきたような?

 目を瞬かせるわたくしに気が付いているはずなのに、エルンスト様はにこりと微笑んでごまかしながら話を続けました。やはりあれはわたくしの幻聴だったようです。


「エレアノールは、勘違いをしていたんだね。だから、婚約破棄をちらつかせて僕の気持ちを確かめようとしたのでしょう?」


 図星です。わたくしは彼の目を見るのが恥ずかしくて、俯いてしまいました。

 エルンスト様は、わたくしが本気で婚約破棄を提示したわけではないことに気が付いたのでしょう。流行に疎い彼は最近のトレンドを知らないはずなので、推論・分析して答えを導きだしたということになります。やはり彼は、恐ろしく賢い方です。


「……その通りです。エルンスト様のことを試そうとしてしまい、大変申し訳ございません」

「別に僕は怒っていないよ。ただ、とても心外だなぁと思っただけで」


 にっこりと。彼が笑みを深めるだけで、とにかく謝りたくなってしまいます。


「確かに僕は、今までエレアと距離を取ってしまっていた。でもそれは、僕が自分の欲を抑えられる自信がなかったからで……。君を前にすると、いつも君に触れたくなる」


 そう言って、エルンスト様はわたくしの赤いリボンに口づけました。その目はずっとわたくしを見ていて、体が火照ります。


「絶対に、婚約破棄はしない。逃がすものか」


 にやりと。いつもより不敵な笑みを浮かべられ、わたくしは普段見られないその笑みに思わず見惚れてしまいました。



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