表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/17

第五話


「本当の理由は?」


 エルンスト様がわたくしに答えを促します。わたくしは彼から目を離しながら、考えを巡らせます。


 好きな人がいると言った時、相手が怒る様子を見せたら、それはあなたに好意を抱いているからかも、と雑誌に書かれていたことを思い出しました。

 エルンスト様のこの反応は、怒っていると言えるのでしょうか? 口元は笑みをかたどっていますが、目が笑っていないところから不機嫌そうな雰囲気は出ています。


 もしかしたら……という希望が芽生えますが、すぐにその考えは打ち消しました。変に期待すると、期待が外れた時にもっと苦しくなってしまいます。


 さて、どのように返答しましょう。その二の方法を使いましょうか。


「先日、エル様が他の女性と仲良くしていらっしゃる姿を見てしまったのです」

「ん? 僕が他の女性と仲良く?」


 わたくしの言葉にエルンスト様は首をかしげます。わたくしは彼の態度に少し反発心が出てきました。彼は全く、心当たりがなさそうです。


「わたくし、エル様が別の方を好いているのに、エル様の婚約者であり続けたくないのです」

「え?」


 この時、エルンスト様は初めて笑み以外の表情を見せました。

 彼は目を丸くして、呆然とした表情を浮かべています。見たことがない彼の表情だったので、沢山の人の需要がありそうだな、と思ったことは内緒です。こんな時に変な思考に走ってしまうのは主にセルナのせいです。


「エレア。君は、大層な勘違いをしているようだね」


 エルンスト様はにっこりと微笑んで、立ち上がりました。彼の動きを目で追っていると、彼はわたくしの隣に立ちました。


「これは僕の失態だな。ごめんね、エレアを不安にさせてしまった」


 彼はその長くて細い指でわたくしの頬をなぞりました。そして、彼はわたくしの髪に視線を移します。


「この赤いリボン、とても似合っているよ。僕の瞳の色と同じだ」


 エルンスト様は口元を綻ばせて、微笑みます。彼にこのリボンに気が付かれてしまったことが、とても恥ずかしいです。

 目立つのを逆に利用して、薄い金髪に合わせて赤いリボンを編み込んでいるので、今すぐこれを隠したくても難しいです。


「嬉しいな……。君が、僕の色を身に着けてくれるなんて」


 リボンに触れる彼の手がわたくしの頭に触れていて、なんだか彼に頭を撫でられていると勘違いしてしまいそうです。わたくしは頬に熱が集まるのを感じながら、彼のペースに引き込まれていることに気が付きました。

 婚約破棄の話をしていたのに、今は何をしているのでしょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ