花のような君
彼女
「はい。貴方にいい事がありますように。」
俺
俺は、疲れている。
会社にも、人生にも。
だからなのか?
疲れすぎて夢を見ているのか?
まさかの過労からの転生?
目の前に花を持った天使がいる。
え……?
なんで?
彼女
「あの。ご迷惑でしたか?」
俺
「いやいや!そんな!」
俺は、目の前で落ち込む女性を見て焦る。
「この花きれいですね!
なんて言う花なんですか?」
彼女
「リナリアです。」
俺
「リナリアですか!
初めて聞きました。」
白くて綺麗な花を見て口元が緩んでしまう。
彼女
「すごくお疲れのようだったので……。
帰り際に荷物を増やしてしまいましたね。
すいません!」
俺
「そんな!
すごく嬉しいです!
大事にしますね!」
俺を気遣ってくれた事が嬉しく、
花をそのまま持って帰ってきた。
「あっ!
どうやったら長持ちするか調べなくては!」
ネットで色々な情報を探り、ある事を思い出す。
「あの子の名前を聞くの忘れた。」
なぜ聞かなかったのかと自分を責めながら、
あの子を思い出していた。
「可愛かったな。
上司の八つ当たりにあって、親の説教の電話。
嫌な一日で終わるかと思ったら最後にあんなにかわいい子に
出逢うなんて。」
――――
次の日は、いつものようにアラームがなる。
いつものように、会社に行く準備。
変わらないが変わったことが一つだけ。
「リナリアがある。夢じゃない。」
昨日の事が夢じゃない。
あの子は、存在する!
嬉しさを思い出しながら家をでた。
昨日は、真っ直ぐに帰りたくなくて
遠回りをした。
あまり好きではない道をわざわざ選んだ。
あの子に出逢った道は、人通りが多くいつも賑やか。
一度だけ帰りに通ったが酔っぱらいに絡まれた。
仕事帰りにわざわざ遠回りして通りたいなんて思わない。
しかし今日は、朝から遠回り。
もしかしたらまた会えるかもしれない。
期待を胸に。
「今日は、会えないか
朝だしな。」
昨日出逢った場所から離れてしまい、
会えないと落ち込んでいた。
彼女
「昨日の方!
おはようございます!」
俺
振り向くと花をくれた子がいた。
「あっおはようございます!
昨日は、リナリアをありがとう!」
驚いたが俺は、平然とした。
あーびっくり!
普通に見えたか?
「こんなに朝早くにここにいるって事は、家が近いの?」
しまった!
ストーカーみたいじゃないか!
朝早いんだねぐらいにしろよ俺!
なぜ家を聞いた!
警戒されたか?
それとも嫌われた?
彼女
「家もちかいですが、
働いてるお店がすぐそこなんです!」
俺
彼女が指を指した方を見ると花屋がある。
だから花か!
じゃあ売り物?
「花屋で働いてるの?」
彼女
「はい!」
俺
「前なかったよね?」
俺話してる!
頑張れ俺!
あまり女性と話したことが無いから緊張する。
彼女
「2ヶ月前にできたばかりです!」
俺
「じゃあ昨日のリナリアは、商品?
お金払うよ!」
彼女
「大丈夫です!」
俺
「でも……。」
彼女
「貰ってくださって嬉しかったので!」
俺
「じゃあ、今度お礼するね!」
彼女
「そんな!
お礼は、いいのであのお花を大事にしてあげてください!」
俺
「わかった!
じゃあまたね!」
彼女
「はい!行ってらっしゃい!」
俺
行ってらっしゃいか……。
久々に言われたな。
あぁ可愛かった。
思い出しながら上機嫌で仕事に向かう。
彼女のおかげでいい一日だった!
――
その日から5日後彼女は、店に居なかった。
俺
いないか
仕方ないよな。
約束してないし。
彼女
「おはようございます。」
俺
「おは……よう。
今日は、そっちの道からなんだ!」
彼女
「はい!
お休みで!」
俺
「あぁ!休みか!」
そうだよな
休みがあるよな!
あれ?でも……。
「休みなのに早いね!」
彼女
「あっ!散歩が趣味で
休みの日は、散歩を!」
俺
「そうなんだ!」
彼女
「散歩してよかった!
お兄さんに会えたから!」
俺
「え?」
彼女
「あ……。
お兄さん!時間が!」
俺
「あぁ……。
もう行く時間か!
また!」
彼女
「はい!行ってらっしゃい!」
俺
なんだ?
深い意味は、ないのか?
勘違いするな!
ただそう思ったから言ったんだ!
しっかりしろ!
さっきの彼女の言葉にドキドキしながら会社に向かう。
それからも彼女とは、いつもの場所で
いつもの時間に毎日会っていた。
彼女が休みの日は、趣味の散歩中に
俺が休みの日は、買い物途中に
おはよう
行ってらっしゃい
おかえり
また明日
そんな些細な言葉が
俺に幸せをくれる。
今日は、会社の飲み会になってしまった。
俺
あぁ……早く帰りたかった。
最近定時だったから、
あの子と会えていたのに。
でも、
流石に顔出さないわけにもいかないし。
言っておけば良かった。
いや。付き合ってるわけじゃないし
迷惑か……。
同僚
「……。」
俺
「なんだよ」
同僚
「いや機嫌良すぎてこわい」
俺
「俺だって機嫌が良い時だってある。」
同僚
「いや!
絶対恋だろ。
誰だよ!」
俺
こいつに言ったら絶対見に行く。
見せたくない……。
「もういいだろ。
帰るわ。」
帰りにいつもの場所で立ち止まる。
「いるわけ……無いか。」
なんて後ろ見たら居たりして!
「いないか」
周りから見たら不審者だな。
帰ろう。
――
「やめてください!」
俺
どこからか声がする。
そちらを見ると、
彼女が絡まれている。
「嫌がってますよ!」
不良A
「誰だよ」
俺
「警察に連絡中ですが?」
言いながら発信画面を見せた。
不良達が帰っていく。
彼女
「ありがとうございます。」
俺
彼女は、お礼を言った後携帯を見た。
「あぁ!大丈夫だよ!
これは」
彼女
「スクショだから」
俺
えっ?バレてた?
恥ずかしい
「わかってたか!」
彼女
「前も同じように助けてくれましたから。」
俺
言われている意味がわからなかった。
「俺以外にもこんなわかりやすい事する奴いるんだ!」
彼女
「お兄さんにです。」
俺
「俺に?」
彼女
「はい!
3ヶ月前に」
俺
確かに思い当たる。
「あの時の?」
彼女
「はい。
それから花屋でバイトをしてお兄さんを探していました。」
「リナリアの花言葉ってわかりますか?」
俺
「あの花の?わからない。」
彼女
「この恋に気づいて です。」
俺
「今度一緒に花を見に行こう。
あの花を見ると君をどうしても思い出す。」
彼女
「リナリアで私を?」
俺
「君があの花に似ているからかな。」
俺がそう言うと、
彼女は、笑顔の花を咲かせてくれた。
俺は、花のような君と出逢えて世界で一番幸せ者。