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さよならラララ  作者: mihiro☆
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二人のこと

二人ユウキ・アヤカのこと

<ユリ目線>

 ずっと二人は付き合ってるんだと思ってた。


 たまたま部室で二人になった時ユウキくんに思い切って聞いた

「……え!? アヤカと俺が!? なんで? 全然そんなんじゃなくて……」

 余りの動揺と真っ赤になった顔は、逆に本当は好きなのかと思った程。

「ただの、お、幼なじみだけど……」

 でも不思議そうにそう答えてくれたから、

 私も正直に言えた。

「あの……私、ユウキくんが好きなの。……付き合ってくれませんか?」

 我ながら大胆だったとは思う。でも、今しかないって思った。


 無口でシャイだけどいつも部費が遅れる他の部員に、ちゃんと催促してくれてたり。

 汚い部室の中ユウキくんのロッカーはいつも片付いてて、

 ボール拾いしてるときいつもちゃんと「ありがとう」って小さな声で言ってくれる。

 そんな彼が大好きだったから。

 女の子達にもユウキくんの隠れファンが多くて、それに……。

――住谷さん。

 住谷アヤカちゃん。ユウキくんの幼なじみ。

 一緒のクラスにはなったことはないけど。ずっとユウキくんと一緒にいるのを見てた。

 最近は部活も忙しくなってきたせいかあまり二人でいる姿を見なかったけど……。

 ユウキくんを好きになってから、二人の姿が瞼から離れなかった。

 きっと住谷さんはユウキくんのことが、好きだ。

 部員のみんなからも口々にユウキくんは恋愛に鈍い。

っていわれてるし

――当のユウキくんは気付いてないみたいだけど……。


 私の告白の返事も

「俺、色々鈍いし、付き合うってよくわかんないんだけど……」

 って言われて、あぁ私振られちゃうんだなぁって涙ぐんでたら、

「そ……それでも、よければ……」

 慌てた様子で後に続いた言葉は、

 小さくて聞き逃しそうだったけど、予想外の言葉。

 ダメ元だったから、嬉しくて涙が止まらなくなって、早速ユウキくんを困らせちゃったんだ。


 あれから、私にとっては夢のような日々が続いてる。

 ユウキくんは優しい。

 部活がある日もない日も毎日一緒に帰って、遠回りなのに私の家まで送ってくれる。

 こないだ初めて手をつないだ時は、

 本当に嬉しくてドキドキした。

 ユウキくんからぎこちなく繋いでくれた手は暖かくて、二人で無言で真っ赤になりながら私の家まで帰った。


 友達からは

「中学生でもあるまいし」 とからかわれるけど、でも平気。私達には私達のペースがあるから。

 ユウキくんはこんなにモテてるのに、自覚はないし初めて付き合うって聞いて少し驚いた。

 私も中学のとき、おままごとのように付き合った程度だから同じようなものだけど。


 ただ時々出てくる、

「アヤカ」

 という単語が、

私の心にチクチク刺さる。

 生まれてすぐからの家族ぐるみの幼なじみで、ずっと仲良かったわけだから仕方ないんだけど。

――昨日の一言はキツかったな……。


 いつものように二人で帰る時、いつもそんなに喋る方じゃないけどすごく無口でなにか考えてるように見えた。

「どうかしたの?」

 ハッとしてから少し気まずそうに、

「ユリちゃんは……好きでもない男たちに声かけられたり、告白されたりしたら……どう思う?」

「どうって…」(住谷さんだ…)

 私がユウキくんと付き合うことになってから、住谷さんが男子にすごく声かけられてる事は、他のクラスの女子の間でも話題になる程だった。


 三年生からも声かけられてる姿はとても目立っていた。

 でも住谷さんはいつも困ってる態度しか取らないって聞いてる。


――ユウキくんが気になるのも分かる。

 でも……。

 ユウキくんの口から住谷さんの話は聞きたくない……。渦巻く黒い気持ち。

 私はユウキくんと付き合い始めてから「嫉妬」という言葉を身を持って理解した。


 結局その話はユウキの

「なんでもない」

 って一言で終わりになったんだけど。

 なんでもない訳ないってことは分かり切っていた。


 今、ユウキくんは私と一緒にいるけど。

 時々……いや、いつも私にはユウキくんの中に「アヤカ」が見える。

 仕方ないという言葉で濁せない程、その影は私を脅かす。

 早く……早く消えればいい……。

 私が消すことが出来るんだろうか。

 私は彼の中の彼女を見ない振りをして彼に聞く。

「手……つないでいい?」

 真っ赤になって優しく頷くユウキくんの手を、

 彼自身を。

――離したくない……。

 私は彼に染み付いている、

 その影を消す方法を一生懸命考えていた。

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