エミの考察
アヤカのこと
<エミ目線>
少し書き直しました。
あ、また呼び出されてる……。
昼休み、放課後。
ほとんど毎日呼び出されたり、声かけられたり、手紙もらったりしてるアヤカ。
当の本人はただただ呆然とするばかりで
さっき「人生の中で初めてこんなにモテてる……」
とさして嬉しくもなさそうに呟いてたし。
そりゃそうだろう
今までアヤカの人生の中に男はユウキくん以外いなかったんだから。
中学からの付き合いだけど
アヤカの艶やかな長い髪や
大きくはないけど黒目がちな瞳
整ったやわらかいアーチの眉に
少し大きめのくちの周りを彩るグロスいらずのピンクの唇
小さい丸顔に色白ではないけどほんのり黄味がかった肌色が、嫌味のない幼さが残る可愛さを出してる。
化粧いらずで羨ましい。
そう言うと
「エミみたいにキレイになれるなら化粧をしたい」
と可愛いことを言う。
私は化粧前、化粧後の顔が違うタイプだけど、
つまりアヤカは天然美人。
中身も少し天然か。
何しろ今まで浴びてた男たちの視線を一度も感じたことがないというんだから。
ほぼ生まれてたてからずっと一緒だったユウキくんが離れて、今まで遠巻きに見てた男共がわらわらと、
産まれたての雛に餌付けや刷り込みをしようとしてるかのように集まってきてる。
――雛は言い過ぎ?
「エミっ。どうしよう……」
おろおろしながら駆け寄ってくる姿はヒヨコにも見える。
あながち間違ってないかとクスリと笑ってしまった。
「笑い事じゃないよ」
フゥーと大きなため息をつくアヤカ。
たしかに……。
ユウキくんに彼女が出来て、
アヤカとユウキくんが行動を共にしなくなってから、毎日続く男たちのアピール。
ずっと想ってた本気から、
可愛いってことで唾つけるようなマーキングまで入れるとどのくらいになるか……。
少し同情する。
でもユウキくんと離れてからのアヤカの落ち込み様は、はたから見ててもとても痛々しかった。
一体何日目を真っ赤にしてきただろう…。
アヤカを想ってきた男たちが黙ってられなかった気持ちもわかる。
――ユウキくんも悪い奴ではないんだけど。
正直そこら辺の男たちよりは一目置いてる。
歳の割に落ち着いてるっていうか、
サッカー馬鹿っていうか。
変にチャラチャラしてないし筋の通った男気を感じる。
本当の意味での優しさを持ってるんだろう。
――ただし恋愛感情にはかなり鈍い。
まぁそれもアヤカとずっと一緒にいたせいもあったんだろうけど……。
こんな可憐なタイプの女の子がずっと傍にいれば恋愛的に麻痺するかもね。
「ちょっとエミ〜? 他人事だと思って楽しんでるでしょ〜?」
机に顎をつけて上目遣いで私をにらみつける。
その姿もある意味艶かしい。
まぁ無意識だろうけど……。
男たちはそんなアヤカに翻弄されるのかもしれない。
――鈍感なユウキくんを除いて。
「まぁまぁ、今だけ今だけ。そのうちアヤカの本性知れば冷やかしもなくなってくるでしょ。」
茶化してみれば
「本性? それが出ればいいのね? よし! ……ってか私の本性って何?」
とまじめに返ってくる。
笑う私に真っ赤になって怒るアヤカ。
「なによ、もっとわかりやすく言って。エミだけが頼りなのに……」
可愛い奴。
男の子たちがほっとかないのもちょっとわかるかな。
アヤカにはかわいそうだけど、
――まだこの雛は周りから狙われそう……。