未来へ
その後の二人と周りの変化
<エミ目線>
理想の恋人達
あの二人がそう噂されるようになったのはいつからだろう?
――私たちは三年になった。
試合での活躍はもちろん、部員達の信頼もあってユウキくんはキャプテンに選ばれていた。
サッカー部は大会を勝ち進み、ユウキくんは冬の大会までサッカーを続けることになったらしい。
大学は某有名体育大学にサッカー推薦で行くと聞いている。
私はもう学級委員長ではないのだけど、いつのまにか生徒会の副会長を任されることになって毎日忙しくしている。
アヤカは
「エミもユウキも凄すぎだよ。私だけ置いてかれてる気分」
とか拗ねてたけど、
去年から我が稜星高校で開催される事になった「ミス稜星」のコンテスト、
全校人気投票で一位に輝いたのは紛れもなく「住谷 アヤカ」その人だ。
「もう、言わないで!」
この話題をすると必ず顔を真っ赤にしてそう怒られる。
まあ、勝手にエントリーしたのは私だから、
選ばれた時のアヤカの動揺具合は端から見ても、相当なもので。
「本当にびっくりしたんだから。思い出す度居たたまれない……」
と、今でもチクチク言われるけど。
実は「有川 ユリ」ちゃんもコンテストに友達推薦で参加していて、かなり上位だった。
それがきっかけでアヤカとユリちゃんは親しくなって、三年は偶然同じクラス。
すっかりわだかまりも解けて仲良くなっているから人の縁って不思議だ。
「その点では、エミに感謝してる」
ユリちゃんのお陰で私はアヤカに恨まれずにすんでいる。
アヤカは未熟な私のアヤカを妬む気持ちもユリちゃんのしたこともまったく気にしないという。
彼女の心の広さには本当に感服する。
とにかく、それをきっかけに、アヤカを取り巻く周りの空気は変わった。
以前の。ううん、それ以上の羨望の眼差し。
嫌がらせを受けたあの日とは違う注目の存在。
実際、ユウキくんと付き合うようになって本当にアヤカは綺麗になった。
子供っぽく見えた丸い顔立ちや仕草が、女らしさと柔らかな色香を漂わせるようになって、
男女共に魅了する、その幸せ一杯の笑顔はたまらなく可愛く魅力的だ。
今年も「ミス稜星」はアヤカに違いないと私はこっそり確信してる。
アヤカに密かに想いを寄せる男子も以前より確実に増えているだろうけど、相手があのユウキくんではみんな諦めるしかない。
キャプテンを務めるユウキくんは正直いって本当にカッコいい。
もともと目鼻立ちはハッキリしていて整った顔立ち。
照れ屋で赤面性だったからあまり目立たなかったけど、あの日から、アヤカと付き合い出してから、ユウキくんは見違えるように変わった。
愛するものに愛されていること
大切な者をどんな事からも守る決意
それらが彼に大きな自信と余裕、そして適度な緊張感を与えて、別人のようになっていた。
照れ屋で特に女子とは恥ずかしそうにぼそぼそと話す感じだったのに、
誰とでもまっすぐ目を見つめて話しをする。
はしゃぐわけではないけど明るくいつも楽しそうな雰囲気。
幸せな者が持つ特有のあの空気。
もちろんモテまくってるが本人はまったくどこ吹く風、相手にはしない。丁寧に断り続けている。
アヤカとユウキくんは必ず一緒に帰っている。遅いときはグランドやマネージャー室にいることもあるらしい。
人がいて安全な場所。
「アヤカと必ず一緒に帰る為」
ユウキくんがキャプテンを受ける時に先生に出した条件。
もちろん私も後押ししたけど。顧問は理解ある先生だったから話しはすぐ通った。
――理想の恋人達
二人を見てると羨ましくなる時がある。私はまだそこまでの相手とは出逢ってないから。
そういうと決まってアヤカは言う。
「エミは必ず出逢えるよ。それとも、もう出逢ってるのにまだ気づいてないだけかも……よく周りを見渡してみて、気持ちがまだ眠ってるだけかもしれないよ。運命の人は意外と身近にいるかも」
そして私も笑ってこう返す。
「経験者の言葉は説得力があるね」
って。すると必ずアヤカはハミカミながらも自信を持って頷く。
「そうだよ」
すれ違っても、遠回りしたからこそ今がある。
二人を見ていると本当にそう思える。
永遠って何か、まだ幼い私たちにはわからない。
出逢いがあるなら、
別れもある。
私たちにはまだこれからも沢山のさよならが待っているはずだ。
でも、二人をみていると
信じられる気がする。
ずっと一緒にいるべき相手は必ずいると。
一度二人で帰る姿を見送ったことがある。
固く握り合う手と手。
傾く夕日に二人の影が長く長く伸びていたんだ。
どこまでも
どこまでも長く
それはずっとずっとどこまでも続いていく気がした……ずっと先の、未来へ。
初めての小説、一旦終わりです。
読みにくい話にお付き合いいただき、本当に本当にありがとうございます。
これを励みにまた小説を書いていきたいと思ってます。
またお会いできる日を夢みて☆
2010.5.8 hiro☆