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さよならラララ  作者: mihiro☆
24/26

キミという光

ユウキの迷い

ユウキ目線

 いつまでも自分を責めていた。

 

 子供染みた自分の行動でアヤカを危険にさらした事が許せなくて。


 アヤカの痛み

 アヤカの悲しみ

 アヤカの苦しみ


 その何も分かってやれない。その傷の癒し方も分からない。そんな自分がもどかしくかった。


――俺は何もしてやれない。

 想えば想うほどアヤカに会いに行く事が出来なくなっていった。



 あの日、

 アヤカが気を失ってすぐ、誰かが手配してくれた救急車とパトカーが到着し、彼女は運び出されていった後も、俺はひたすら自分の無力さに泣き崩れていた。

 どうやって部屋に戻って来たかも覚えていない。


 新藤から『アヤカが目覚めた』ことや『退院が決まった』ことのメールが何度か来ていた。

 でも俺は、何もなかったように過ごしていた。

 部活と学校へ、現実逃避していたんだ。

 

 いつものように朝練をこなし、授業を受け、部活をこなして帰るだけの生活。


 新藤が動いてくれたのか、学校でアヤカに起こった事を知ってる人間はほとんどいなかった。


「派手に夜遊びしてた三年女子が自宅謹慎になって、卒業も危ないらしいよ」 

 気になっていた、あの三年女子の話はタカヤから聞いた。

「ふーん、そうなんだ」 部活の筋トレ中。

 興味のないふりをしながらタカヤの話に耳を傾ける。

「たしかその三年女子が、アヤカちゃんへの嫌がらせ仕切ってたじゃないかな。もうあんな嫌がらせなくなるかもね」

「……そうだな……」

 俺は、何も知らないはずのタカヤの言葉に心底ほっとした。


 そんなある日、

 部活へ向かおうと教室を出たら、

「なんでアヤカに会いにいかないの?」

 腕組みをして新藤が待ち伏せていた。

 苛立つように投げ掛けられた言葉。

「まだもう少し学校来れないし……。アヤカ寂しがってるよ」

 アヤカが退院してもすぐには学校に来てない事は気になっていた。

 まだ顔の痣が残ってるからと聞いて無意識に拳に力が入る。

 たしかに二・三日で治るような感じではなかった……。まだ何もかもがリアルで、黒い気持ちが襲ってくる。

「……新藤、三年女子の件裏に手を回したの?」

 話題を変えたくて話をふる。

「別に。たまたまあの人の進路担当の先生が話が分かる人だっただけよ」

 さらりとなんでも無い事のように言う新藤を格好良いと思った。

「とにかく、アヤカに早く会いに行ってあげて。今あの子が一番会いたいのはユウキくんだから」

 新藤の言葉が胸にずしりと重く響いた。

 

――アヤカのいない学校


 それは何の色もない世界。

 ずっと一緒にいたアヤカ。


 アヤカの初恋の相手に気づいたのはいつだっただろう。 


 相手は何でも出来る兄貴

 気づかない振りをして、自分の心に芽吹いた気持ちをを無意識に封印していた。

 

 他に好きな子も出来ず。

 思いきって付き合った結果ただ傷つけた。


 ユリちゃんとは、ほとんど話してない。

 部活でも辛そうに目を逸らされる。

 一度、すれ違い様「ごめんなさい」と呟くのを聞いたけど。返事を返す前に走り去って行ってしまった。

 彼女の事を責める気持ちにはならない。

 きっかけを作ったのは自分だから……。


(俺は本当に鈍いんだ……)


 気づくのがいつも遅い。 こんな自分が心底嫌だった。


――ユウキ……好きだよ。

 耳の奥に残るアヤカの声

 掠れた小さな声だったけど、ハッキリ俺の胸に届いた言葉。


 こんな自分を思ってくれてる、

 誰よりも何よりも

 守りたい

 大切な存在。

 

 だからこそ自分が許せない。


 一方的な子供っぽい勘違いでアヤカを無視した。

 あの時のアヤカの顔。

 男たちに傷つけられたアヤカの姿。

 俺はきっと一生忘れられないだろう。


 こんな自分より、兄貴や他の奴の方がアヤカをもっと……。

(もっと上手く幸せに出来るんじゃないのかな)


 俺にはアヤカに想われる資格なんかない。


 もう二度と

 傷つけたくない。


 俺は臆病になっていた。 一人グルグル

 思考の迷路に

 囚われて、

 身動きがとれない。


 苦しくて苦しくて

 でも出口の見えない毎日

 ずっと光を探していた。


 その日は試合前と言うことでミーティングのみ。いつも部活は早く切り上げられる。

 めずらしく明るい時間の帰宅。


 家への帰り道、いつもはなんとなく通りすぎる公園の人影に気づく。


 その揺れる黒髪、

 心の奥で

 ずっと追い求めていた。

 あの華奢な後ろ姿。


 何かのスイッチが入ったように、モノクロの世界が色付く。


 理屈じゃない。

 ただ顔を見たい。

 声が聞きたい。


 理由なんて何でもいい。

 鮮やかに沸き上がる想い。


 そこからどうしたか余り覚えていない。

 でも気がついたら


 アヤカは腕の中にいた。


(やっぱり考えるのは苦手だ)

 

 ありのまま全てを伝えようと思った。


 まずはそこから。

 

 今はとにかく

 驚いてゆっくり振り返る アヤカの顔が

 見たかった。



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