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さよならラララ  作者: mihiro☆
18/26

忍び寄る影

すれ違う想い

<ユウキ目線>

 俺は走りだす。


 全力で。

 行き先も分からず

 ただ闇雲に。


 自分の

 狭い

 弱い心に

 責め立てられながら。




 キミを想い、走る……。



――ずっと昨日の二人の姿が忘れられなかった……。


 アヤカに告白して数日が経っていた。

 返事もなく、軽く避けられているのには気付いていたけど。自分から近づく勇気はなかった。


 情けないくらい臆病者な自分。

 自分勝手に気持ちを押しつけておいて、相手にされなくて拗ねていた。


 まさに子供。


 その自覚はあるけど

 沸き上がる黒い気持ちを押さえられない。


――昨日の二人の姿が目に焼き付いて……。

 

 アヤカの家の

 前に止まる 

 兄貴の車

 その車から降りる

 アヤカ。


 その姿に驚いた後

 二人の関係を

 

 邪推した。


(まさか二人で俺に黙って付き合ってるとか……)


 頭に浮かんだ可能性を打ち消すことが出来ず

 裏切られたような気分で二人を見ないように家に入る。


 ただの嫉妬心だということは分かっていた。


 初めての恋は

 そんなささやかな事ですら俺をドン底に突き落とす程の力を持っていて……。


 おかえりと声をかける母の声を素通りし真っ直ぐに自分の部屋に籠もった。


 人を好きになると

 同じくらい

 人が憎くなるんだろうか?


 愛しいからこそ欲する

 手に入らないのが苦しくて

 未熟な心はその原因を自分意外の誰かに擦り付ける。


 階段を登る足音

 扉をノックしながら呼ぶ

「ユウキ?」

 兄貴の声

「……居るんだろ? 開けるぞ」


 返事も待たず勝手に扉を開ける。いつものことだ。

 でも今日は兄貴の行動の無神経さに苛立って思わず睨み付ける。


「何か?」

「なんだよ虫の居どころが悪いなぁ」

 無言でいると勝手に話しだす。

「アヤカが……」


 自分でも分かるくらい全身がビクリと揺れた。


 聞きたくない……。

 でも

 それ以上に気になる。

 アヤカの事なら何でも。

――どんな事でも。


 俺の態度を不信に思ってか続かない兄貴の言葉を促す。


「……アヤカが、何?」

 緊張と葛藤に声が震える。


「……いや、今日変な男達がアヤカに絡んでたから、注意してやって欲しいんだけど」


 その言い方に荒れた心が鼻白む。


「……まるで自分の女みたいな言い方だな」

 苛立ちを隠せない。

 まるきり子供じみた態度に自分でも嫌になる。


「さっきの見てたんだ。……相変わらずガキだなぁ」


 顔を見なくても分かる。(小馬鹿にしやがって)


 曖昧な返事といつもの上から目線の態度に腹が立った。


「話しが済んだら出てってくれよ」


 強く言い放つ俺に 

「はいはい。とりあえず、アヤカの事、頼んだよ」


 最後まで軽くあしらうような余裕の態度をとられてますます苛々した。


 兄貴のような余裕の無い

 兄貴のような軽快さや

 兄貴のような愛想もない自分に。


 女の扱いは比べものにならない……。


 兄貴と比較すると自分の欠点しか思いつかなくなる。


――アヤカも……。

 アヤカにも比べられてるのだろうか。


 曖昧にはぐらかされたけど、兄貴がアヤカと一緒にいた事実だ。

 告白してからアヤカの態度に自信を失っていた俺は、僅かに残っていた期待も兄貴への劣等感で粉々に打ち砕かれてしまっていた。



 今思うと、

 初めての恋に、

 自分の気持ちに必死で

 冷静さを失ってた。

 周りが何も見えなくなっていたんだ。



 だからまさか、

 部活帰りにアヤカがいるとは思わなくて……。

――動揺した。


 アヤカは何か言おうとしてたのに……。


(俺はまったく聞こうとしなかった)


 ほとんど無視して先に学校を出る。

 

 学校が見えなくなる角を曲がった時

 車の音を聞いたような気がした。


 ふいに、兄貴の言葉を思い出して校門まで戻った時。

 俺は自分の馬鹿さ加減に吐き気がしたんだ……。



 真っ暗な校門には誰もいなかった。

 まばらに明かりのついた校舎。

 もう遅いこの時間帯、校門付近には人影もなく、


 ただ

 持ち主を失った鞄が

 無造作に転がっていた


――アヤカの。



 俺は走りだす。


 全力で。

 行き先も分からず

 ただ闇雲に。


 自分の

 狭い

 弱い心に

 責め立てられながら。


 もしアヤカに何かあったら……。

 考えるだけで吐きそうになる胃液を押し戻し、

 躓き、

 転げそうになりながらも


 呼吸することも忘れ。

 緊張に汗すらかかず

 ただひたすらに



 キミを想い、走る……。

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