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さよならラララ  作者: mihiro☆
14/26

誤解と中傷

自分への嫌がらせ

<アヤカ目線>


――あぁ、また……。


 手に当たる紙の感触。気が重くなる。

 手紙というか中傷や嫌がらせ(としか思えない)内容。

 私は、ここの所頻繁に靴箱や机やロッカーに入っている

 『人の男を取るな』とか『色気を振りまいて気持ち悪い』とか『あなたのせいで振られました』とか書かれてる紙を無闇に捨てる事も出来ず、

 滅入る気持ちと一緒に鞄の奥にしまい込む。


 この間無くなった上履きも、トイレのゴミ箱に入ってたし……。

 思わず溜め息が漏れる。


 誰の仕業であれ、誤解だとしか言えない。

 中傷の手紙と一緒にたまに入っている知らない男子からの手紙。

 好意も嫌悪も私のいない場所、知らない所で空回りしているように感じる。


 ただこの間、体操服を汚されてゴミ箱に入れられてた時はショックだった……。


――無言の強い悪意をはっきりと感じたから。


 見えないものは怖い。

 私の周りの誰か……わからないから余計に。


 これ以上誤解を招きたくなくて、私は無意識に男子との接触を避けていた。

 

――アヤカがモテるから、妬んでるのよ。


 エミはそう呆れながらに言っていたっけ。

 考えてもどうすればいいかわからず、また溜め息を漏らす。

 教室に入り、机の上と中を確認する。

――この間はノートに落書きがされてた。

 消えない油性ペン。

『略奪反対』とか『フェロモン女』とか『色目光線キモい』とか……。

 重くなる気持ちと同時にエミの言葉を思い出した。「小学生か!」

 後ろからノートを覗き込んだエミが突っ込みを入れたんだ。あの時は思わず吹き出してしまった。


「おはよー、アヤカ。何辛気臭い顔してんの?」

「……エミ。おはよう。」 エミに声をかけられてほっと息を吐く。

 知らないうちに緊張で体を固くしてたんだな……と今更気付いた。


 私に起きていることに薄ら気付き始めている他のクラスメイト達は不自然な態度で見てみぬ振りをしてるけど、


 エミは変わらない。

 一人でも味方がいると言う事は本当に心強かった。

 『色目女』でもない『男好き』でもない私を知ってる人がいる……。

 今までの日常では考えられなかったそんな当たり前なことが、今はとても大切だった。


 しっかり前を向き続ける為に。私は疾しいことなんて何一つしてない。


「最近はイタズラ少なくなったね」

「そう、だね」

「……まだ手紙はあるんだ?」

 歯切れの悪い返事から見透かされる。エミには適わない。

「……うん。でも少し減ったかも」


 余計な心配かけたくなくて平気そうに笑ってみせるけど

 私の下手な小細工なんてすぐバレてしまう。

「無理しない」

 ぺちんっとおでこを叩かれる。

「あいたっ」

 良い音の割に優しい手加減。

「何でも言ってよ?」

 切れ長の目が心配そうに睨んでる。学級委員長なんてやるくらいアネゴ肌で人気者なエミ。ついつい頼りたくなるけど、余り迷惑はかけたくない。

 結局、自分の問題なんだから……。


――最近確かに教室内の嫌がらせはほとんどなくなった。でも……。


「……あの子じゃない?」

「三年にまで色目使ってる……」「えーあの子? ……大したことないじゃない」

「○○くんも振ったらしいよ」

「ちやほやされて調子に乗ってる……」


 教室移動や日直の準備で三年生の廊下を通る時や全体朝礼がある時とかに

 度々聞こえてくる三年女子の耳に入る程大きな声で言われる陰口。

(あんな大声だったら陰口じゃないか……)


 手紙はその三年生からも来てるんだろう。

 エミも気付いて。気にすることないよってフォローしてくれたけど……。


 昼休み。エミがお弁当をもって私の席まで来る。


「アヤカ、ご飯食べよ〜」 言われてお昼のことを思い出す。

「あ!今日お弁当無いんだった。購買いかなきゃ」

「なにそれ〜」

「ゴメン。忘れてた! 遅かったら先食べててね」

 両手をあわせて謝る。

 口を尖らせながら「了〜解」と席につくエミを後にして慌てて購買へ向かう。


 最近ずっとお弁当だったしなんだか色々あって寝不足でうっかりしてた。


 うちの高校の購買のパンは結構美味しくて早くいかないとすぐ売り切れてしまう。(すごく並ぶし、急がないと)


 焦る気持ちで早足になりながら階段を降りていくと


「……また男子から呼び出しでもあったんじゃない?」

「モテモテな人は大変よね〜」

 クスクス笑う声が聞こえた。

 踊り場で見たことのある三年女子が何人かいることに気付く。


――いつも陰口を言ってる先輩だ……。

 胸の中に嫌な感じが広がる。

 目を合わせないように足早に通り過ぎようと俯いた時、

 下からユウキが上がってくるのに気付いた。

 思わず足が止まる。


「また色気光線?」

「やだー」

 笑いながらわざとらしく背中にぶつかられる。

「あ、ごめんね」

 体がグラリと揺れる。

 足元がふらつく。

――あ……。

 軽い目眩。……やばい。 こんな時に…。


 重力に逆らうことなく崩れ落ちる足元。

 足場を失った私の体は踊り場から下へと転がり落ちていった……。

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