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皇帝神の戦いは永遠に  作者: Amenbo
第1章 絶氷の章
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第8話 大魔法師と救済の願望者

ミリルを宿に送って屋敷に帰って1晩寝た後またグレイスに入ったユスタルは噴水の前でミリルを待っていた


ユスタル(……もうすぐ11時…)


ミリル「っ…どこなんだろう…」


ユスタル(あっ、ミリルさんいた…気づいてないのかな…)


ユスタル「ミリルさん!ここですよ!」


ユスタルがそういうとミリルはユスタルの方を見たが、疑うような顔をしてその場で固まっていた

なぜそんな顔されるんだと思ったユスタルは自分の髪色が銀色であることに気づいて慌ててミリルの所へ駆け寄った


ミリル「すすすっ…すっみません!どなたでしょうか!!」


ユスタル「ごめんなさいユスタルです、髪色変えたままなの忘れてました…」


ユスタルはミリルの耳の横でこっそりとそう言い、ミリルは落ち着いたようなため息を出した


ミリル「ビックリしましたよ…知らない人から名前呼ばれたかと思ったので…」


ユスタル「それは本当にすみません…本来の髪色だと僕がユスタルってすぐバレちゃうので…お忍びということで駆け寄られることを回避してるんです。前は魔導具を持ってくるのを忘れてまして…」


ミリル「なるほど…確かに女性が結婚したいランキング1位ですもんね!」


ユスタル「…嫌な外見ですよ…それにその情報どこから…」


ミリル「宿に置いてある雑誌に書いてありました!」


ユスタル「その雑誌編集者にちょっと文句言いたいところです…」


ミリル「あはは…とりあえず武器屋行きましょう!」


ユスタル「分かりました…それにしても新しい服ですか?」


ミリル「はいっ!おばあさんの娘さんが着ていた服を譲ってもらったんです!保存状態が良かったので新品みたいですよ!」


ミリルは見せびらかすように服を持ち上げたりして嬉しそうにクルクルとしていた

赤色のワンピースに茶色いベルトがついていて、首近くに白色の柔らかい毛がついている

そして内側にはモコモコとした暖かい綿毛がついていた


ユスタル「…良かったですね」


ミリル「ユス…あっ、これって名前で呼ばない方がいい感じですか?」


ユスタル「確かに…苗字の1部でセラフでいいですよ」


ミリル「分かりましたセラフさん!セラフさんの今日の服もいつもより少しシンプルですね!」


ユスタル「たまにはこういうのでもいいかと思いまして。あの服はあと大魔法師のコートを羽織れば、働いてる時の姿になりますね」


ミリル「へぇぇ…大魔法師って名前から凄そうですし私なんかがこんなお買い物に付き合わせてしまうなんて結構もったいないかも!」


ユスタル「そこら辺は僕はなんとも言えませんね…」


ミリル「…というより歩かないと何も始まりませんよね…」


ユスタル「行きましょうか」


2人は武器屋に向かって歩き始め、他愛のない世間話をしていた


ミリル「えぇっ!ユスタルさんって家が全国にあるんですか!?」


ユスタル「色んなところで仕事があるのでどこに行ってもすぐ帰れるようにですね」


ミリル「お金持ちだぁ…私もいつかそれぐらい稼いでみたいです!」


ユスタル「冒険者で国を救うレベルのクエストをしたら一攫千金ですね」


ミリル「そのクエストはあって欲しいけどない方がいいやつですね…最低でも月収はどれほどあれば…」


ユスタル「大体20万ぐらいあれば普通の一人暮らしとしては出来ますよ。色々装備とか揃えるとなると40万か50万は欲しいですね」


ミリル「一気に2倍増えちゃうんですね…ひぇぇ…」


そう話しているといつの間にか武器屋の方に着き、風格を感じる建物だとミリルは感じていた


ミリル「おじゃましまーす…わぁ…武器がいっぱいです!」


店の中には剣や弓、盾、杖等色んな武器や防具が飾られていたり置かれていたりミリルにとっては魅力的なものがたくさんだった


ユスタル「武器屋ですからね…店主に似合う武器を選んでもらうことも出来ますので悩んだら聞くのもありですね」


?「らっしゃい、武器を見に来たのか?」


いきなり背後に現れた大男は2人を驚かし、ミリルは緊張しながら「武器を選びに来ました!」と伝えていた


?「お嬢ちゃんのか、彼氏同伴だなんて珍しいもんだな」


ミリル「彼氏?」


ユスタル「アムドさん!僕は彼氏じゃありません!恋人関係じゃないです!」


アムド「やっぱりその驚き方と声はユス坊か!可愛い子を連れてきたからてっきり付き合ってるのかと…」


ミリル「ユスタルさんのこと知ってるんですか?それにユスタルさんは友達です!」


アムド「あ、あぁ…ユス坊は昔この店で魔法の練習のための杖をよく買いに来ていてな………ユス坊軽く振られちまったな」


ユスタル「別に悲しくないです」


ユスタル(それにミリルさんは僕のこと友達と言っていたけど…友達…なのだろうか…?まぁいいか…)


ミリル「そうなんですね!」


アムド「それでお探しの武器は?」


ミリル「剣が欲しいです!なるべく軽めでお願いします…!」


アムド「…軽めで耐久性の良いやつが良さそうだなぁ…ここら辺がその条件に合うものだが気に入るものはあるか?」


ミリル「わぁ…持ってみてもいいですかアムドさん!」


アムド「好きなだけ持ってみろ」


ミリルは色んな剣を持ったりして興奮しながら剣をジロジロと観察したり斬る素振りをしたりなどしていた


ミリル「……うん、この剣が良さそうです!」


ミリルが選んだのは銀色の装飾で作られた剣であった


ユスタル「…耐久面でも普通のよりは高いと思うので大丈夫だと思います…。そういえば昨日使ってたあの剣ってどこで買ったものですか?」


ミリル「あれはデヴィアさんから護身用として貰っていたやつです!…まさかあんな簡単にダメになるとは思いませんでしたよ…」


ユスタル「それはあれが携帯用で耐久性とか少し低いからですね…」


アムド「まぁないよりはマシだと思って団長があげたんだろうな」


ミリル「実際助かりましたし…そういえばこの剣っていくらですか?」


ユスタル「僕が払うので値段聞かなくて大丈夫ですよ」


ミリル「いえ!今日は私が払います!そして借金も返します!」


ミリルは払おうとするユスタルを止めて、服の中からお金の入った袋を取りだした


ユスタル(本当に稼いだ…?こんな数日で…?)


ミリル「なんかお金に困っていたら貸してくれるという人から借りました!便利ですよね!後でお金返せば大丈夫だなんて!」


アムド・ユスタル「……………」


アムド「お嬢ちゃんそれ金利がつくやつじゃないのか?…」


ユスタル「今すぐ返しに行かないと後が大変ですよ!アムドさんその剣僕が買っておくのでここで失礼します!」


ミリル「えっ?返すんですか!?」


ユスタルは急いで剣のお金を置き、ミリルを連れて外へと慌てて行った


アムド「随分と大変そうな女の子と知り合っちまったようだなぁユス坊…」


ー金融機関前ー

ユスタル「はぁ…なんとか間に合った…ミリルさんこういう所では借りないようにしてください!返すのが遅れてしまうとどんどん借金額が増えて大変なことになりますからね!」


ミリル「へぇぇ…そうなんですね!気をつけます!」


ユスタル(本当に不安だこの人…)


ユスタル「それにしても100万も借りてたなんて…」


ミリル「剣のお金…絶対返します…」


ユスタル「別にいいですよ…あ、ミリルさんは絶対に返す人ですよね…」


ミリル「そうです!借りたものは返さなければ!」


ユスタル「それでは返してくれるのを待つことにしますね」


ミリル「一生懸命働きます…!」


ユスタル「剣は常に身につけるようにしてくださいね、いつでも守れるように。そして定期的に…3週間に一回ぐらいのペースでメンテナンスをしてもらうといいですね」


ミリル「分かりました!…そういえばユ…セラフさんって武器らしいものあまり持ってないですよね…」


ユスタル「僕は魔法専門なので剣とかは持ってないですね…杖も最近は使ってないです」


ミリル「杖無しで魔法使えるんですね!かっこいいです!」


ユスタル「慣れたからですよ…最初の頃は杖がないと魔法のコントロールが難しかったんですから」


ユスタルが自身の近くに風や炎、水、雷などを小さく生成し浮遊させて見せているとミリルが辺りの匂いの違和感に気づいた

そして辺りをキョロキョロとすると驚いたような顔をした


ミリル「セラフさん!あれ!!!」


ミリルが指を指したのは炎による黒い煙が立っている所だった


ユスタル「っ!ミリルさんはここに居てください!僕は火災現場に行ってきます!終わったら戻ってくるので!」


ミリル(……もし大丈夫そうだったら戻ればいい…)


ユスタルが慌てて火災現場に向かうとミリルも恐る恐る後ろから着いていった

着くと現場の周りには無数の野次馬で溢れていた


女性A「誰か!水魔法使える人助けてください!中にあと一人!まだ息子がいるの!誰か…助けてぇぇっ!」


ユスタル「っ!火事…すみません!騎士はいますか!」


男性A「さっき通報したからそろそろ来てくれるはずだ!」


ユスタル(この高層建築全体を一気に消火となるとかなりの水が必要になる…出せても水がそのまま溢れて周りも被害に遭う可能性もあってしかも中にまだ子供がいるのに水を出せない…少しずつ下から消火して行くしか…)


ユスタル「僕が消火します!皆さん離れてください!お子さんは何階にいますか!」


ユスタルは手のひらに水を生成しながら女性Aに聞いた。


女性A「6階よ!」


ミリル(騎士が来るまでにお子さんが燃えちゃうかもしれない…ユスタルさんは魔法で消火しようとしてるみたいだけど…同じくお子さんのことでどうするか悩んでるみたい……ここは私が動かないといけない!)


ミリル「ユスタルさん!水を一気に生成して!」


男性B「ユスタル様!?」


ユスタル「何か策があるのですか!」


ミリルは一気に膨大な水を生成したユスタルの手の手首を掴み、自分の方に水がかかるように動かした


ユスタル「何を!?」


ミリルは髪の毛も洋服もびちょ濡れになり、ワンピースのスカート部分から地面に水がぽたぽたと垂れていた


ミリル「お子さんは私に任せてください、ユスタルさんはそのまま消火をお願いします!」


ミリルはそう言うと急いで建物の中に入っていった

それを見た野次馬が「飛び込んだぞ!?」と騒ぎ始め、ユスタルは急いで建物の上から被害が出ない程度の強さの水を出し始めた


ユスタル(ミリルさんが飛び込むなんてっ…早く消さないとミリルさんも危ない!)


ユスタル「皆さん見学なんかしていないで離れてください!危ないですから!」


ー建物の中ー

ミリルは手で鼻と口を押えながら階段を探し、見つけた途端急いで階段をのぼり子供を探していた


ミリル「誰か〜!居たら返事してーー!」


ミリル(熱い…返事も聞こえないし…早く次の階に…)


ミリルが階段を上る度に大声を出して呼んでいるが5階までは返事が聞こえなかった

6階に辿り着き、フロアを見渡したが子どもの姿はなくさらに上の階に逃げたのかと思い次の階へ行こうとすると燃えている棚の近くで子どもの足のようなものが見えた


ミリル「いたっ!」


ミリルは慌てて駆け寄り、倒れた隣の棚を必死に持ち上げると男の子が棚の隣で意識途絶えそうに壁にもたれて座っていた


ミリル「もう大丈夫だからね!お姉さんが今外に出すから!」


男の子「…助け…ぇ…」


ミリルが男の子を抱えて急いで階段を降りようとすると先程まで登ってきた階段が上の階段から崩れたガレキで埋まっていて下ることができない状況だった


ミリル「うそっ…」


ミリル(だとすれば…外に出れるのは窓…迷ってる場合じゃない!)


ミリルは燃えながら倒れた机などにぶつからないように慎重に避けながら窓へ向かい、扉をあけて下を見た


ミリル(高い…でも…やっぱりさっき通ったところはもう渡れそうにない…男の子を持ったままだったら私だけ痛い思いを感じればいい!)


ミリルは窓から一気に飛び降り、その姿を見たユスタルは風魔法を高速で発動させてミリルを落下から防ぎ、一気に水で建物を覆いかぶさった

そしてグレイスの気温で水は段々と凍っていき、今度は氷で建物が埋め尽くされてしまうため水魔法を解除した


ユスタル「っ…何とか落ち着いた…」


ミリル「お子さんです、生きていますよ」


ミリルは抱き抱えていた男の子を母親の女性に渡し、母親は泣きながら男の子を抱きしめていた


女性A「良かった…良かったぁ……お嬢さんありがとうございます!ユスタル様もありがとうございます!」


ミリル「いえいえ…水魔法使えるユスタルさんがいなかったら多分私が入ってもすぐ燃えてたので…サポートしてくれてありがとうございます!ユスタルさん!」


ユスタル「………」


ミリル「っ……?」


ユスタルはミリルに対して怒りを含むような顔で見つめていて、ミリルは一瞬戸惑っていた


女性A「それにお洋服を焦がすようなことになってしまって大変申し訳ございません!弁償致しますので!」


ミリル「……あっ…貰い物の服なので弁償されても相場が……」


女性A「貰い物!?尚更もっとお金を払わなければ…!」


ミリル「お子さん救えたのですから…!服よりも大切なので」


ミリルがそう言っていると騎士達が到着し、消火しようとしていたが既に消火されているのを見て戸惑っていたようだった


ミリル「あっ騎士達がようやく…!」


ミリルが騎士の方を見るとユスタルに手首を掴まれて低い声で「少し来てください」と連れられてしまった


ミリル「ちょっ…ユスタルさん!?」


現場から少し離れた路地裏でユスタルは止まり、ミリルがいきなりのユスタルの行動に戸惑っているとユスタルがミリルの方へ振り返った

そして右手で壁に手を出して左手でミリルの肩を掴んだ


ユスタル「…なんであんな危険なことしたんですか!?貴方は魔法も使えない一般人なのですよ!!水を被ったからといって燃えないわけでもないんです!昨日も大蛇を相手にして危ない目にあったばかりなのに…自分の体を大切にしてください!あのまま運が悪ければ死んでいたのかもしれないんです!そもそもあそこで待っててと言ったのに…」


ミリル「っ……勝手に約束破ってごめんなさい……確かに私は魔法とか使ったことがないし使えるかも分かりません…だけどさっきの行動が間違ってたなんて思ってない!…あの子が中にいたからユスタルさんは一気に消火出来なかったしユスタルさんが中に入っても消火の効率が悪いまま他の建物に広がってしまう…それを止める人がいない…だからでしょう?だとしたら助けに行けるのは他の人!…私は誰かを見捨てるなんてしたくないんです!」


ユスタル「間違ってるとは言っていません!ただ大魔法師として守るべき民を危険な目に合わせてしまったことが許せないんです!ミリルさんは後先を考えるようにした方が身のためですよ!ただでさえ迷惑行為を2回も……危ない目にあってる人が2回同じであるこっちの身にもなってくださいよ…貴方のしてる事は理想を語る危険行為を行う一般人とほぼ同…じ…」


ユスタルはミリルの顔を見た途端戸惑うかのようにミリルから1歩離れ、どのように言えばいいのか分からなくなっていた

ミリルは遠くを見るような顔で静かに涙を零していた


ミリル「……あ…ご…ごめんなさい…私…迷惑な人で……本当にごめんなさい…」


ミリルにとってユスタルからの迷惑という単語が心に来てしまい、声が震えて手も服を握りしめながら下を向いていた

初めて会った人で優しくしてくれた人から迷惑だと思われていたという事実に


心が苦しい


という痛みにやられた


ユスタル「いや………その…迷惑は言いすぎました…心配なだけで……ミリルさんが怪我したら僕は大魔法師として許せなくて…言い方が悪くて本当にすみません………」


ユスタルは自分の失言を反省しながらミリルに謝罪をしていたがミリルは謝罪を貰っても自分が悪くて駄目なんだという負の感情が少しずつ強くなる一方だった


ミリル「配慮は大丈夫ですよ…私が悪いですし…………私…もうユスタルさんには関わらないようにしますね。大人しく過ごすことにします…少しの間ですが今まで色んな場面で助けてくれてありがとうございました。借りたお金は銀行に送金しておきますので……」


ミリルはそう言うと、ここに居たくないという気持ちが強くなったのかそのまま路地裏から出てどこかへ走っていってしまった











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