第7話 世界の管理者と企む者
皇帝神 ミリル・セレントヴァインに仕える神のうち、神遺聖にも勝てる可能性を持つ唯一無二の存在。それが世界神 セーラ・スフィーガーデンである。
ミリルでさえも彼女と本気で殺りあえば負けるかもしれないと言うほど異例な存在であった
どの世界もセーラが創りあげたものであり、全てセーラが作ったシナリオ通りに進んでいる。たまにシナリオから大きく外れる行動をするイレギュラーがいるがその時にはイレギュラーを封じるための存在に力を与えることによってバランスよく全体を管理することが出来ているのだ
神界はセーラが生まれる前に存在していたがほぼセーラが管理していると言っても構わない
気に入らないものは削除し、必要なものがあれば創造する
世界であれば全てセーラの手中にある
このような万能の神は誰もが自分の仲間にしたいと思うだろう…
しかしセーラはどんなことがあろうとミリルを永遠に慕い、忠誠を誓っている
彼女の『愛』は世界を終焉に訪れさせようとしても構わないと思えるほど狂っていた
ーーーミリルを愛し、ミリルだけを愛し、ミリルのみを愛す
セーラはミリルの命令かミリルの絶対的な従属である神遺聖の命令(ごく1部)しか聞かない
ミリルの言葉が全てであり、ミリルの存在がセーラの生きる理由となっている
なぜ彼女はこんなにも皇帝神を慕うのだろうか
アイシュレイズ「はぁぁ…」
アイシュレイズはセーラの部屋の目の前でため息をつき、ゆっくりとノックした
セーラ「入りなさいな」
アイシュレイズ「失礼します、セーラ様」
暗い部屋の中で空中にパネルのようなものを出して操作してるセーラを見ながら、アイシュレイズはただ眉をひそめて両手でモジモジしているばかりであった
セーラ「…貴方らしくないですわよ、一体何がありましたの」
アイシュレイズ(セーラ様が陛下に起きたことを知らないなんて…まさか認識阻害を…)
アイシュレイズ「…陛下のことについてなのですが…」
セーラ「あら?貴方聞いておりませんの?お姉様は長期出張ですわよ」
アイシュレイズ「長期出張……ですか」
アイシュレイズ(陛下が長期出張だなんて1度も聞いていない…まさかあのベーゼという神が陛下に化けてセーラ様に偽の報告をした…でもセーラ様が陛下を間違えるなんて…)
アイシュレイズ「それっていつ頃伝えられたか分かりますか?」
セーラ「確か…昨日ですわ。もういきなり当日報告だなんて悲しいですわ!でもお姉様の世界の封印を解除のお許しを頂いたのでしばらく我慢できそうですの!」
アイシュレイズ(昨日だとちょうど…陛下が殺られたのが朝だから…)
セーラ「それよりも貴方がここに来た理由ってそれを聞くためですの?お姉様が貴方に伝えてないなんて珍しいですわね」
アイシュレイズ「あっ…はい。陛下はお忙しい身ですから」
セーラ「確かにそうですわねぇ…昔ほどは構ってくれなくなったのは少し寂しいですわ」
アイシュレイズ(陛下を助けるにはどうしてもセーラ様の力が必要になる…セーラ様が陛下を助けるつもりではなく別の目的で"偶然"陛下を見つけるようにさなければ…だからこの目的を悟られてはいけない…平常心でいなければ)
アイシュレイズ「そういえばセーラ様は神遺聖が生まれる前から陛下の隣にいましたよね、陛下は昔はどのようなお方だったのですか?」
セーラ「お姉様は…まだあの時はよく笑うお方でしたわ。貴方は知っているのかしら、私はスフィーガーデンから破門された女神だということ」
アイシュレイズ「…それは初めて聞きます…しかし今の名にスフィーガーデンがありますが」
セーラ「私以外の全てのスフィーガーデンを殺した」
アイシュレイズ「…復讐のおつもりで?」
セーラ「…神界に必要ないと思ったからですの。貢献する者たちではありませんでしたし……お姉様に貢献しない神など必要ないのですわ」
アイシュレイズ(神界に直接干渉出来るセーラ様はまさに神界の支配者…陛下とほぼ同じ権力を持つお方…皇帝の神権がないのにここまで優れた神権とは…)
セーラ「昔は私は弱虫でよく泣いていましたわ。家族から愛されずに虐待をされていましたの。私の神権が未開花で…役たたず…」
アイシュレイズ「セーラ様が弱虫だなんて…今のお姿しか知らない身としては想像も出来ませんね」
セーラ「……そうですわね………私を変えてくださったのがお姉様、まだ神立学園に在籍していた時の…」
アイシュレイズ「陛下の学園生の時…!」
セーラ「良ければ見せてもいいのよ」
アイシュレイズ「見たいです!陛下は全然教えてくれないので…」
セーラは神権の力で世界を展開し、セーラとアイシュレイズの隣に学園服を着ている感情豊かなミリルが立っていた
アイシュレイズ「陛下…なんて可愛らしいのでしょう!」
普段冷静なアイシュレイズだがミリルのことになると感情豊富になり、目を輝かせて学園生ミリルの周りをウロウロしながらじっくりと観察していた
セーラ「お姉様は課外学習中に自殺しようとした私を止めてくれましたの、これは運命と言っても良いのかしら…」
セーラがそういうと世界の景色が学園生のミリルからその時のセーラを助けるミリルに変化した
アイシュレイズ「…昔のセーラ様って髪の毛長かったのですね…」
映っていたセーラは腰あたりまで後ろ髪を呼ばしていて、強い縦ロールの主張が強かった
セーラ「ツッコミ所そこですの?…毛量が多い故に切った方がいいと思いましたの」
アイシュレイズ「前の方だけ1部残してる理由は…?」
セーラ「ここの部分はお姉様に初めて触られた部分ですの…お姉様に髪の毛綺麗と褒められて…ここだけは永遠に残し続けますわ…」
アイシュレイズ「なるほど…私髪の毛とか触られたこと…無いかもしれません」
セーラ「貴方達が生まれたのはお姉様が変わってすぐ後…しょうがないですわ」
アイシュレイズ「陛下が変わってしまった…何があったのでしょう」
セーラ「私も分かりませんの、突然笑わなくなった。怒ることも無くなった…ずっと真顔で…敵に斬られても痛がる素振りもせずただ無表情で動くよう…」
アイシュレイズ「………原因が分かりませんね…少なくとも陛下の神権に感情を失う系のものは無いはずです」
セーラ「もしかして心を鬼にしようとしているとかそういう類かもしれないですわ……でもそんなお姉様も好きーーっ!」
セーラはいきなり浮遊椅子から立ち上がり、大声でそう叫ぶと疲れたかのように浮遊椅子に倒れるかのように座った
セーラ「うぅ…疲れましたわ…」
アイシュレイズ(今の叫びでもう…!?そういえば陛下が…)
ミリル『セーラはとてつもなく体力がないから少し動いただけで簡単に倒れてしまうの、世界の神権を受け取る代わりに身体面の能力が奪われたのかもしれないわ』
アイシュレイズ(とか仰っていたような…)
セーラ「アイシュレイズ…そこにある私の飲み物をとってくださいまし…」
アイシュレイズ「かしこまりました」
アイシュレイズがセーラの飲み物を取りに行くと同時に脳内で話しかける遺能を使い始めた
アイシュレイズ【アイシュレイズです、セーラ様に気づかれないように陛下を探させる計画は私の方で主に進めておきます。貴方達は神界の門の封印を誰にもバレずに進めておいてください。トレイアとンツァレイオンはまず封印の神術の解析を】
トレイア・ンツァレイオン【了解】
アイシュレイズ【ヴァーミリオンとレアフィルゼは全歴史の保管庫であのベーゼという女神を探してください】
ヴァーミリオン・レアフィルゼ【了解】
イリアナ【イリィは何をすればいい?】
アイシュレイズ【イリアナは陛下の姿になって神界を歩いてください】
イリアナ【姫様の姿…?】
アイシュレイズ【陛下の姿になって神達が皇帝神がいなくなってることに気づかないように振る舞うのです。陛下を尊敬してる貴方なら出来ることでしょう】
イリアナ【イリィ頑張る…だから……みんな早くあの女神を殺す準備は万全にしてね】
イリアナの怒りを含めたような声で全員の顔が険しくなった
彼女らの怒りは敵にも向けていて自分自身にも向けていた
セーラ(妙にアイシュレイズが苛立ってる気配を感じますわね……まさか私の飲み物を持ってくることに嫌気でも指しているのかしら…)
アイシュレイズ「どうぞ、セーラ様」
セーラ「感謝しますわ……アイシュレイズ、貴方まさか私のこと影では嫌ってるということはありませんわよね…」
アイシュレイズ「…え?」
セーラ「先程貴方の方から殺気に近いような苛立ちを感じましたわ……そんなに嫌だったのであれば素直に嫌だと言えばいいのですわ。貴方に嫌われてしまったらお姉様にも嫌われると同じ意味ですもの…」
アイシュレイズ「実は来る前にトレイアとヴァーミリオンにイタズラをされまして…」
アイシュレイズ(つい溢れてしまっていたのですね…気をつけなければ…)
セーラ「あの能天気組は楽しそうですわね…というよりこの世界消さなければいけませんわ…」
セーラは指を鳴らすと放置されてた学園生ミリルが消えて、その場に作られた世界が一瞬で無くなった
アイシュレイズ「セーラ様の神権は指を鳴らさないといけないのですか?」
セーラ「いいえ、単に音が気持ちいいからですの」
アイシュレイズ「なるほど…そういえば後ほどイリアナが陛下の姿になって神界を歩くらしいので勘違いして抱きつきにいかないようにお願いします」
セーラ「そうですのね、今回はちゃんと報告を受けてるから安心しなさいな」
アイシュレイズ(今まで報告されていなかったのですね…)
セーラ「…というより私はそろそろ作業に戻りますの、貴方もいつまでもここにいないで早く自分の持ち場に戻るといいですわよ」
アイシュレイズ「そのつもりです、戻る前に1つ噂を聞きましてそれをセーラ様に伝えたいのですが」
セーラ「なんですの?」
アイシュレイズ「実は他の世界にいくら陛下とでも陛下とそっくりな人がいるのではないかという…」
セーラ「なんですのそのお話は!!本当に居たら大問題ですわよ!?皇帝神とそっくりだなんて…私の記憶にはそのような生き物はいないと思うのですわ…」
アイシュレイズ「暇つぶしに探してみるのはいかがでしょう、単なる噂ですが…トレイア達が興味本位で調べようとしてるらしいので彼女らよりも先に見つけたら陛下の愛が証明されそうですね」
セーラ「お姉様への愛の証明…!?作業が終わったら探してみますわ!久しぶりに眼福な暇つぶしになりそうですわー!!」
アイシュレイズ(陛下関連の話となればセーラ様は簡単に引っかかってくれますね…これで今日のところは良いでしょうか…)
アイシュレイズ「それでは失礼します、また報告会の時に」
神遺聖の計画がこの時始まった
主に歯向かった神を、神遺聖の手で仕留めるために