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皇帝神の戦いは永遠に  作者: Amenbo
第1章 絶氷の章
25/25

第25話 善という悪、悪という善

ーアイル視点ー


数年前、グレイスを中心としてフロイゼン全体に飛行型魔物の集団災害が起きた

その時私達は11歳だった。

騎士達が助けに来てくれたけど私達には気づかなかった


炎に囲まれ、棚の下敷きになっていたから。

いくら叫んでも他の市民達の叫び声や魔物の叫び声でかき消されてしまう。

フラルは頭から大量に血を流していた。

私も足に柱の割れた部分が刺さってまともに動くことが出来なかった。


アイル(このまま…死ぬのかな……リディア様も助けに来てくれないし…騎士達も気づいてくれないし…このまま……人生終わっちゃうのか…)


もう助からないと思っていた

パパもママも魔物にやられちゃった

家族はフラルしかいない

このまま生きるよりはもう大人しく死んだ方が幸せなのかもしれない

そう思った

だけどその時に私たちの恩人…マスターであるメイゼル・ライダー伯爵様が助けてくれたの


メイゼル「こんなところにまだ居たのですね」


アイル「…貴方は…」


メイゼル「安全なところまで送ろう。大人しくじっとしていなさい」


おそらく魔法によって重い棚を持ち上げ、風魔法で私たちを持ち上げて空へと飛んだ


アイル「…ありがとうございます!助けてくれて…」


メイゼル「ちょうどあなた達が上にいましたから」


マスターに助けられた後の生活はほぼマスターと一緒にいることが多かった

災害後で大変なのに私たちの世話をしてくれたのだ

瀕死だったフラルもマスターの治療のおかげで元気になり、優しいマスターに懐いていた

マスターは美味しいものを食べさせてくれる、暖かい寝所を用意してくれる、色んなことを教えてくれる

何年経ったかは覚えてないけどとても楽しい日々だった

マスターと共に過ごして4ヶ月ぐらい経った時にマスターから提案を貰った


メイゼル「2人とも夢はあるか」


フラル「夢?…うーん…マスターと一緒にいること!」


アイル「私も…フラルと同じ…それと強くなりたいです!」


メイゼル「強くなりたい…なるほど。それならば護身術や格闘術、魔法の勉強をしましょうか」


フラル「魔法!?いいの!?マスター!」


アイル「マスターをお守りできる力…学びたいです!」


メイゼル「そうかそうか、それならば好きなだけ学びなさい」


その日から私とフラルは主に体術を中心として学び始めた。マスターが作ってくれた魔導人形を相手に毎日戦った

マスターはたまに私たちの様子を見に来て、数分したらどこかに行ってしまっていた

マスターは忙しい人。マスターを喜ばせる為に頑張った

豪雪の日でも雪嵐の日でも戦った

グレイスもある程度復興が終わってリディア様が城から出てこなくなっていた時には私達は魔導人形を一撃で倒せるほど強くはなった


アイル「ッハァ…ハァッ………これぐらいなら…マスター褒めてくれるかな…」


フラル「褒めてくれるよね…!」


私達は晴れやかな気持ちでマスターがよく居る部屋に行った

普段は鍵が閉まっているが、今日は何故か鍵がかかっていなかった


アイル「あれ…空いてる…入っていいのかな…」


私達が部屋に入ると鼻につく匂いが一気に襲ってきた

真っ暗な部屋が緑色の光で包まれていて、1番奥に大きな水槽が見えた


フラル「マスター…?これは何?」


メイゼル「…おや、アイルフラル…入ってきてしまったのですね……ああ鍵をかけ忘れてしまっていましたか…」


アイル「…なにか生き物を育てているの?」


メイゼル「………そうですね…」


フラル「見てもいい!?」


メイゼル「…………ええ」


水槽の中にいたのは私たちと同い年ぐらいの女の子だった

沢山の管に繋がれていて、溺れてないのかなと少し不安だった


アイル「…水の中に入ってて大丈夫なの?」


メイゼル「ええ、安全な水ですから…………」


その時のマスターは…少し寂しそうで…怖かった

私はその少女のことは深く聞かないことにした


そして落ち着いた頃に私たちの強さをマスターに見せた

マスターは喜んでくれた、そして私達に任せたいことがあると言ってくれた

信じてくれている この事で嬉しかった


マスターから命じられたのは大きなホテルの支配人に手紙を渡すことだった

それぐらいなら強さ関係なく出来そうなのに…とちょっと疑問に思っていた


そして私達は命令を遂行した

支配人に手紙を渡して、手紙を開けてもらうとその支配人は倒れてしまった

寝不足だったのかと当時はただ驚いていただけだった


その後、マスターはそのホテルの支配人となっていた

私達はホテルの従業員となっていた。度々マスターに呼ばれて命令を与えられ、使命を全うする。これが私たちの日常


ある日 数人の女の子達がホテルの地下室に来た

遊びに来たのかなと私達はそう思っていた

マスターからは大事な話をしているから入らないようにと言われたから私達は遊びも含め訓練をしていた

でも聞こえてきた

女の子達の叫ぶ声

悲しみに満ちていて、まるで私たちがあの時誰かに助けを求めた時の声みたいに

フラルもその時手を止めてあの部屋の方向へ目を向けていた


アイル「……マスター…何やってるのかな…」


フラル「…分からない…」


アイル「…私達はマスターの指示に従えばいいだけ。ほら、フラル。続けよう」


フラル「うん…」


そして1年か2年ぐらい経った頃には私達はマスターの命令を遂行する人形のようになっていた

日が経つほどにマスターからの命令の内容が過酷になっている気がする

今では男児でも女児でも構わないから10人誘拐してこいとか…これ本当にやっていいことなの?

連れてくる度に心が締め付けられる気がする

嫌がる子供達を抱えてずっと自問自答していた

今私がしているのは正義なのか悪なのか………


ーミリル達を襲う前ー

フラル「……マスター、あの白髪の女と金髪の女で何かするつもりなの?」


メイゼル「白髪の女はそこまで重要視はしてない。私が目をつけているのは金髪の女だ、あの女は強い。あの目力は常人のものでは無いですよ」


マスターは金髪の女の力でなにかをしようとしていた


アイル「…なにかに利用するのですか?」


メイゼル「…権主のコアを奪うために利用するのですよ」


あまりにも無謀すぎる

権主はカルド様ではなく娘のリディア様になったとはいえ、リディア様はグレイスでカルド様の次に強い剣士であり普通に戦ったら負けは確実


アイル「…まさか戦わせるのですか?」


メイゼル「まぁそれが一番理想的ですが…私がそうさせる噂を流したところですぐ私が流したとバレてしまいますから」


フラル「…せめてあの黄金の剣みたいなやつが帰属性のものじゃなきゃいいけどねー」


メイゼル「あれも面白そうな材質で作られていそうですね…まさに勇者の剣のよう!」


マスターは伯爵であり、元実験教授であった故研究を昔からよくしていた

見た事ない剣に興奮しているのだろうか


メイゼル「とりあえずあの剣から感じる異質な気配!あれは私の計画に大いに役に立ってくれるはずです。リスクが高いですが、他の方法よりも確実性が高い。2人とも、頼みますよ」


フラル「あの剣の力をマスターの思うツボに操れる状況にすればいいんだね!」


メイゼル「そういう事です、金髪の女は白髪の女のことを陛下と尊称で呼んでいたので恐らく弱点は白髪の女でしょう。適当に脅しの材料に使えば下手に手を出せないはずです」


アイル「…了解しました、マスター」


マスターが良い事悪い事してようが私達はマスターの力になりたい

だからこそマスターの計画を成功させなければ

マスターに見限られて…捨てられることが私たちにとって1番最悪な状況だから



ーーーそして今に至る


アイル「マスターの為なら私達は!!」


フラル「何としてでもやり遂げる!!!」


アイシュレイズ(先程よりも強くなっている、最善の結果は殺さずに自白させること…だけど本当にそれでいいの…普段の私は……殺さないなんて…)


ミリル(あと10分ぐらいか………)


ルナティア「皆!この子達時間が経つにつれて逆に強くなって来てるわよ!」


リディア「やっぱりそうよね!動きも速くなってきてるわよ!」


アイル(悔しいけど…この力のおかげでこの人数と戦えてる…金髪の女が白髪の女を守ってるから下手に近づけない…!)


アイルがミリルの方へ視線を向いているとアイシュレイズがその視線によって確信し、ミリルの隣へ近づいた


アイシュレイズ「やはり貴様ら目的は陛下か!!!」


アイシュレイズが黄金剣をギュッと握りしめ、神遺力を込めて突進しようとするとミリルがアイシュレイズの肩に手を置いた

肩から伝わってくるひんやりとした懐かしい感覚がしていた


ミリル「……アイシュレイズ、邪魔」


アイシュレイズ「っ…………申し訳ございません」


アイシュレイズが驚いてミリルの方へ顔を向けるとミリルは言葉で表現できない複雑な感情を示しているような顔をしていた


リディア「…ミリル…」


ルナティア「……っ」


アイシュレイズが剣を構えていても戦うのを辞めなかった4人は足を止め、ミリルの方を見ていた

明らかに今この中で1番目を背けていけないのはミリルだと全員本能で感じていたからだ


ミリル「いきなり人を襲って……こっちは迷惑してるのよ。貴方達まだ小さいから傷を負わせるのは良くないって思った………だけど…もう面倒臭い……だから今からもう適当にやらせてもらう」


ミリルは神力を足に込めると一気に2人の方へ突進し、瞬きした瞬間既にミリルは2人の目の前にいた。

ミリルは拳に力を込めてアイルの頬に1発殴る体勢を取った


アイル「忘れたの!あの女から貰った力で貴方の攻撃は無効化され…」


フラル「お姉ちゃん!」


ミリル「それは神力を使った前提よ」


ミリルは加速する瞬間までは神力を使っていたが、ぶつかる直前で神力による強化を中断し、純粋な物理でアイルの頭を殴ったのだ


アイル「ア゛ァッ……」


アイルは防御の体勢をとる間もなく、頭に重い一撃を入れられ軽い脳震盪を起こしていた


フラル「よくもお姉ちゃんを…!」


フラルがミリルへ攻撃しようとするとミリルはまた神力を使って身体強化をし、脳震盪を起こして倒れかけたアイルの服を掴んで軽く空へ投げると回し蹴りでアイルの腹を蹴り、アイルの身体がフラルに一瞬でぶつかり2人は離れた森の方まで飛ばされた

森の木と2人がぶつかる轟音が鳴り響く


ルナティア「なんて酷い……戦い方……容赦が無さすぎるわ…………」


リディア「ミリルの蹴りすらまともに見えなかった……何なのあれ……」


2人は今のミリルの戦い方に恐怖を感じていた

いくら相手が悪いとは言え、人間をボールのように蹴った。しかも2人が見てきたのは優しいミリルであったため今の様子とのギャップに頭がやられていた


ルナティア(本当にあの時と同じ子だとは思えないわ…優しさで出来てる子だと……思ってたのだけど…)


アイシュレイズ「………流石です陛下…容赦ない無慈悲なところはあの頃と変わらず……」


ミリルはそのまま2人が飛ばされたところまで行くと、2人は森の木の枝に腹を刺された状態でいたのだ

身体からは血が垂れていて、雪が真っ赤に染まっていた


ミリル「………今治すから」


ミリル(頭の中に治し方が思いつく…このままだと死んじゃうから…)


ミリルが2人を枝から取り外すと神力をかなり薄めにして2人の傷口に注ぎ始めた

みるみると傷が修復され、出血は止まった


ミリル「……これでいいか…」


ミリルは2人を担ぐと3人がいる所へ一瞬で戻った


アイシュレイズ「陛下!…治療までできるように…」


ミリル「持ってて」


ミリルはアイシュレイズにフラルとアイルを渡すと、深呼吸をして神力を体内へ押し戻すかのようにすると神化から人間の姿に戻って行った


リディア「…見たことある姿になったわ…」


ルナティア「…変身みたいなものかしら…」


2人が恐る恐るミリルを見ると、先程まで険しい顔をしていたミリルの顔が段々と緩んでいった


ミリル「……どうしようううう!私あんなことしちゃったぁぁぁぁ!!!ごめんなさいいいい!!」


2人「えっ」


先程までの雰囲気とは違い、今のミリルは今までのミリルと同じように2人は思っていた


リディア「あ…れ?」


ミリル(いくら妨害されてたとはいえ人をあんな強く蹴り飛ばすなんて…私ったら何やってるの…)


ルナティア「み、ミリル…?貴方大丈夫?」


ミリル「あっ…私なら全然大丈夫です…それよりもこの2人に私謝らなきゃ…」


ミリルがオドオドしながらアイシュレイズに担がれている2人を心配そうにみていると、まるで先程まで別人格だったのかと思えるほどだった


アイシュレイズ「謝る必要などありません陛下。陛下に危害を加えようとしたこの少女達が悪いのです」


ミリル「う、うん。だからなんか骨まで折れそうな力で掴まないでね…」


アイシュレイズ「……はい」


リディア(こんな小さい子に私は…何もまともに判断出来てなかった…権主として恥ずかしいわ…)


ルナティア(大魔法師としてこんなに何も出来なかったなんて………大きな顔が出来ないわ…)


リディア「…とりあえずこんな馬鹿なことをした子達の責任者を炙り出さないとね…アイシュレイズ。その子達を城に連れていくの手伝ってくれるかしら」


アイシュレイズ「………」


アイシュレイズは無言のままミリルの方へ向き、ミリルは縦に頷くとアイシュレイズはリディアと共に城の方へ進んで行った


ルナティア「……貴方…随分と災難な目にあってるのね…ていうかさっきの力ってなんなの?」


ミリル「…あまり詳しくは私も分からないのですが…あれは私の過去の力です。時間制限がありますが、本来の力を少しだけ引き出すことが出来るんですよ。でも長時間使っていると段々意識が遠のくというか……なんていうんでしょう…」


ルナティア「……誰かに意識を乗っ取られてるような?」


ミリル「乗っ取られてる程ではないと思うんですけど…昔の記憶が無いので…もしかしたら昔の私の人格が出てきてしまってるのかな………変な話かもしれませんが…」


ミリルが苦笑いしてると、ルナティアは帽子を深く被り遠くを見ていた

ルナティアの周りを飛ぶ星のカケラ達がルナティアを心配しているかのように慌てた動きをしていたのだ


ミリル「…ルナティアさん?…」


ルナティア「………私ね、大魔法師とか呼ばれてるけど実際そんな強くないのよ」


ミリル「そんな…あの魔法とか…凄かったですよ!」


ルナティア「あれなんてただ自分が作った簡易型の星のエネルギーを利用しただけよ…私はユスタルみたいに攻撃特化型じゃないから…」


ミリル「あの人攻撃特化なんだ……ルナティアさんの得意なことはやっぱり星占いとかそういう系ですか?」


ルナティア「得意というか…まぁ、得意と言ってもいいかもね…私の主な役目は未来の予言よ。星達は世界をみているから。私は星の代弁者として世界を導く。だから私の役割としてはなにか災害が起きると星達に聞いたら他の大魔法師にお願いするぐらいね……グレイス中心に起きたあの事件の時は私はまだこの魔法を使えなかったから…気づくことも出来なかった………貴方の力になれなくてごめんなさい……」


ミリル「あっ…あの……その……えっと…」


ルナティア「無理して言わなくてもいいわ。慰めようとしてくれたんでしょう?私には慰められる資格なんてないわ………」


ルナティア(大魔法師で最弱な私は皆と同じ土俵になんて立てないんだから………)


ルナティア「これあげるわ、関係者とかの問題で何かあったらそれを壊しなさい。すぐに駆けつけるから」


ルナティアが手からポイッとミリルの方に投げたのは小型の宝石だった

ミリルはそれを受け取ると、慌ててルナティアの方へ顔の向きを戻すと既にルナティアは居なくなっていた


ミリル「これって…!!……………ルナティアさん…………」


静かな雪原が訪れた

戦闘による地面のくぼみに雪がどんどん溜まっていく

肌をひりつく寒い風がミリルを襲い、ミリルはルナティアから貰った宝石をポケットの中に入れた

そして依頼で少し足りない分を狩るためにまたミリルは戦い続けた














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