第23話 星と運命
紫色の若干癖のある長髪、金色に近い黄色の目を持つ星の装飾をこれでもかというぐらい身につけているルナティアは自身の長い爪をユスタルの額に軽く押付けた
ルナティア「星は真実を教えてくれる。ユスタル、あんた…あの女の子と関わるのを辞めなさい」
ユスタル「…女の子って…」
ルナティア「名前なんだっけ…ミリル…だっけ。白髪の女の子」
ユスタル「ミリルさん…?」
ルナティア「そうそう、星は彼女を危険因子と答えを出した。私の幻星魔法は嘘を言わないわ」
ユスタル「………星は理由も言ってくれるんですか」
ルナティア「…理由ねぇ…ちょっと待ってね」
ルナティアは少し後ろへ下がると足で床を叩くのと同時に魔法陣が展開され、辺りが星の欠片で溢れていく
ユスタル(ルナティアの幻星魔法…星は全てを見ていて全てを知る…その星達の声をルナティアは聞くことが出来る)
ルナティア「星よ、あの答えの理由を教えて………えっ?答えられない?どうして…答えることが星の死に繋がる……?」
ユスタル「答えられない?…」
ルナティア「…星達が怯える程ってこと…もうこれが答えなんじゃない?……」
ルナティアがそう言うと魔法陣を畳み、髪の毛を右手で振り払って近くにあった椅子に堂々と座った
ユスタル「………」
ルナティア「…あんたは大魔法師の期待の光なのよ?そんなあんたが死ぬような真似…見過ごすことは出来ないわ」
ユスタル「…別に僕はミリルさんとはそこまで親しいわけでは…」
ルナティア(…はぁ、見える見える。桃色の星のカケラが…本人は気づいてないようだけど…まぁまだ言わないでおくか…)
星は生命の輝き
生命の心も星の輝きであり、ルナティアは相手の感情を見ることも可能なのだ
ルナティア「…私その子に会ってくるわ!」
ユスタル「えっ、」
ルナティア「今日は変な占い出なかったし大丈夫よ。星の占いは当たるんだから、しかも今日はいい日なのよ〜!」
ユスタル「ええ…」
ルナティア「私は関わっても別に悪影響は無いようだし…それじゃあね〜!」
ルナティアはそういうと一瞬で転移で消えてしまい、ユスタルは唖然した顔で固まっていた
ユスタル「あの気分屋め…」
ーグレイス 広場ー
ルナティア「ふむふむ…久しぶりに来たわねグレイス!うう…寒っ!とりあえずミリルを探さないとね…」
ミリル「私のことですか?」
ルナティア「え?」
突然隣から話しかけられ、ビックリしながら振り向くと目の前に純白の美少女がルナティアを見つめていて ルナティアは顔を赤らめて後ずさりした
ルナティア(ガチで可愛い何なのこの子!!!!星が見せてくれた姿より何千倍も可愛すぎるじゃないのよ!!!)
ルナティア「…あなたがミリル…?白髪だし…銀色の目をしてるし…本物かしら…」
ミリル「はい!ミリルです!なにか私に用ですか?」
ルナティア「あなたユスタルのこと知ってる?」
ミリル「はい!ユスタルさんとは知り合いです!最近は会ってないですけどね…何してるんだろう」
ルナティア(この子は普通の星の輝きね…可哀想にユスタル…脈アリの欠片すらないわ…)
ルナティア「ユスタルは……って自己紹介何もしてなかったわね。初めまして、私は夢幻の大魔法師 ルナティア・スペルレイよ。気軽にルナティアと呼んでちょうだい」
ミリル「ルナティアさん!!道理で魔法使いみたいな服装してるなと!」
ミリルは輝かせた目でルナティアの魔導服を観察し、ルナティアは照れくさそうにしていた
ルナティア「これは儀式の時によく使うからね…私服にしちゃえばいいやと思ったのよ」
ルナティア(でも本当にこの子が危険因子だなんて想像できないわ…)
アイシュレイズ「陛下、無事に冒険者登録を終え任務を受注してきました……そちらの方は?」
ルナティア「…陛下?」
ミリル「おかえりアイシュレイズ!えーとね、この人は大魔法師のルナティアさん!」
ルナティアがアイシュレイズの姿を見た途端星の勘が働いたのかアイシュレイズが尋常ではない存在であるのを強く感じていた
ルナティア(何この人…星が強く反応してる…何者なの…)
ルナティア「初めまして、ルナティアよ」
アイシュレイズ「…こちらこそ初めまして。私は陛下の護衛であるアイシュレイズと申します」
ルナティア「…ミリル、貴方陛下なの?…」
ミリル「あー、陛下は呼び方なだけで私は陛下みたいな地位とかにいませんので気にせずに…」
ルナティア「…そういうごっこ遊び?」
ミリル「そゆ感じです!」
アイシュレイズ「何を仰るのですか陛下!貴方はこの世で最も尊きお方である皇帝神です!」
ミリル「んんんーでも今はただの女の子だよーー」
ルナティア(こうていしん?…この子が危険因子なのはその立場だから?…でもこうていしんって聞いたことがないわ…星達に聞けばわかるかしら…)
ルナティア「…まぁいいか。2人はなにか討伐しに行くの?」
ミリル「はい!訓練も兼ねて資金集めです!」
アイシュレイズ「冒険者には位が存在しているのを知って高位になるほど月に貰える一律の給料があると知ったので一気に高位になろうという考えです」
ルナティア「あーなるほどね。ちなみに今はどのくらい?」
ミリル「私はまだ初心者なので2ランクですね」
アイシュレイズ「私は先程なったばかりなので1ランクです」
ルナティア「あれ、でもその色の用紙って4ランクぐらいの…」
アイシュレイズ「試験監督を一撃で倒してしまったのでなんか特別に4ランクの任務を頂けたのです…別に最高ランクの任務でも簡単ですのに…」
アイシュレイズは不満そうな顔して任務の紙を握りしめていたがルナティアが興味津々の様子でアイシュレイズの顔に近づいた
ルナティア「あらら…貴方強いのね!」
アイシュレイズ「…ここの人間が弱すぎるだけですよ」
アイシュレイズは呆れた顔でそっぽを向くとミリルがアイシュレイズの顔を真っ直ぐに戻していた
ミリル「ちょ!アイシュレイズそんな言い方しないの!」
ルナティア「良ければ私も同伴していいかしら!貴方達のこと、気になるの」
ミリル「全然いいですよ!」
アイシュレイズ(陛下と私のことが興味あるだけで敵意は無い…まぁいいか)
アイシュレイズ「陛下のご意向に従います」
ルナティア「やったわ〜!」
アイシュレイズ「任務内容はフロリアベスを最低15体狩ることです」
ルナティア「フロリアベス?雑魚じゃない」
アイシュレイズ「雑魚ですね、私にかかれば100体でもすぐに狩れます」
ルナティア「あら…?その態度私に喧嘩売ってるのかしら」
アイシュレイズ「そのような訳、ありませんよ」
ミリル「アイシュレイズったらヤケになっちゃって…
行くなら早く行きましょ!時間は有限です!」
そうして3人はグレイスの街から出て雪原へと足を踏み入れた
ミリル(そういえば雪原に出たのは大蛇の時とリディア様と始めて会った時以来だよね…ずっとグレイスに居たからなぁ…)
ミリル「とりあえず頑張らないと!」
ルナティア「そういえば2人はどんな魔法を使うの?」
アイシュレイズ(私の力は魔法ではないけど話を合わせるために魔法と言っておいていいか…)
アイシュレイズ「私は水魔法と氷魔法を使います」
ミリル(アイシュレイズが魔法って言ったから私も………って私このままの姿だと何もそういう系使えてないような…)
ミリル「わ、…私は…無魔法です〜」
ルナティア「え?無魔法?」
ミリル「…………流石に無理がある…私魔法とかそういうの使ったことないんです…」
ミリル(神の姿になればある程度神権は使えるようになるから魔法みたいなの使えるけど…下手に伝えたら嫌な予感がするし…)
ルナティア「…魔法が使えないのね…」
ミリル「…だからその代わりに物理を鍛えようかと!まだ一般の女性より少し強いぐらいですが!いつかは大っきいものを破壊できるようになります!」
ルナティア「それにしては細い腕だと思うけどね〜ほら私の中指と親指で腕包めちゃうわよ」
ミリル「筋肉つかないんですぅ…」
アイシュレイズ(陛下は見た目の変化は確かに無い、それは陛下の今の姿が最高状態であるから。下手に肉がついてても邪魔になるだけ、体のバランスを究極な値まで微調整されているだけ)
ルナティア「あらあら、それじゃあ敵を沢山呼んであげる!」
ルナティアは魔法陣を展開すると眩しい輝きが頭上に現れ一気に光を放出すると地盤が揺れるほどの足音が聞こえ、周りからフロリアベスの集団が集まってきた
ルナティア「さあさあ頑張って〜!」
ルナティアは魔法で空へ浮き、2人がどう戦うのかを観察し始めたのだ
アイシュレイズ「陛下、如何なさいますか」
ミリル「最初は自分ひとりでやってみる!もしダメだったら手伝って欲しいかも!」
アイシュレイズ「畏まりました」
ミリルは髪の毛を急いで結び、フロリアベスの集団へ走っていき、足で首元を狙い蹴り飛ばした
ルナティア(あんな細い体で吹っ飛んでくほどの蹴りを出せるのすっご…魔法無しであそこまでだなんて)
ミリル「っ!…フッ…!ハァッ!」
ミリル(やっぱり足元が雪だから疲れやすいっ…今ので4体目…まだ60体ぐらいいる…一気に襲ってこないのはルナティアさんが制御してるからかな…)
ミリルがルナティアの方を見ると、ルナティアがニィッと笑った顔をした
ルナティア(その通り、流石に一気に襲わせるなんて殺人行為はさせられないからね…)
アイシュレイズ(……生命反応が2つ…近くに人が?)
アイシュレイズが辺りを見渡すとミリルとアイシュレイズに向かって2人の影が突進して行った
アイシュレイズ「陛下ァァッ!」
ミリル「っ!?」
ミリルが振り返ると目の前から鎌を持った少女がミリルに斬りかかり、ミリルは慌てて近くにあった木の棒で対処した
アイシュレイズの方にも殺傷能力が高めの回転式刃を持つ少女が突進しアイシュレイズは片手でその刃を受け止めていた
もう片方の手はミリルの持つ木の棒に自身の神力を注ぎ、簡単に破壊されないように操作していたのだ
ミリル「誰!?いきなり斬り掛けられる覚えは無いんだけど!」
フラル「貴方達を排除するのがマスターの命令」
アイル「金髪の女やっぱり強い、フラル。ここは姉に任せて」
フラル「うん、お願い。姉さん」
ルナティア「……ねぇ、危ないの良くないよ。君達」
アイル「貴方知ってる、大魔法師ルナティア…占いしか能がない年増おばさん」
ルナティア「ちょっと待ってよ!!私何歳に思われてんの!?また20ですけどーー!まぁそれよりも貴方達ミリル達に攻撃するなんてどんな心理してるのよ!危ないでしょう!」
フラル「フラル達は貴方達を始末しろと命令を受けた。だから殺す」
ミリル「そんな逆恨みされるような覚えもないんだけどね!」
ルナティア「殺すとかいっちょ前に言ってるんじゃないわよ!星達よ!墜ちなさい!」
ルナティアは魔法を使って空から無数の流星群を呼び出しフラルとアイルに集中攻撃を行った
アイシュレイズ(陛下が彼女達に殺意を見せない以上下手に殺す訳には行かない…それに殺したら重要な情報を聞けぬままになってしまう…こんな時にトレイアかイリアナがいてくれたら…駄目、今陛下を支えられるのは私のみ。私がちゃんとしなければ……だけど……)
アイシュレイズ「陛下に危害を加えた者は殺す」
アイシュレイズが神力を80%解放させるとアイルとフラルを一気に斬り刻み、肉塊が白い雪原の上にポトポトと落ちていった
ルナティア「グッロ…」
ミリル「………アイシュレイズ…」
アイシュレイズ「…ちゃんと戻します」
アイシュレイズは斬ったモノを完全復元することが可能であり、フラルとアイルの体は斬られる直前の状態に戻ったのだ
アイル(気がついたら…殺られてた…)
フラル(瞬きした間に…)
アイシュレイズ「敵意を見せた時点で斬る、痛みを最大限感じる斬り方でまた肉塊にしますが。次は肉塊ではなく肉眼では見えないほど斬り刻んでやりましょうか?」
アイル「痛いのは嫌…だけどマスターの命令だから」
フラル「貴方達を殺さないといけない」
アイシュレイズ「…そうですか…じゃあもう誰の命令か吐くまで永遠に斬りますから」
ミリル(アイシュレイズばかり任せちゃって…私ダメだな…ルナティアさんもアイシュレイズがいるから大丈夫と思ってるのかずっとあそこにいる…)
ルナティア(こういう場面って助太刀すればいいのか分からないけどアイシュレイズ一人でどうにかなりそうだし…自白させる魔法でも使おうかしら)
ベーゼ「運命の檻よ」
聞き覚えのある声が聞こえたと同時にルナティアとアイシュレイズが黒い檻の中に閉じ込められた
2人「ッ!?」
ミリル「アイシュレイズ!ルナティアさん!」
ルナティア「何これ…魔力が全く使えない…」
アイシュレイズ「神力も…」
アイシュレイズ(私の力を完全遮断するなんて…こんな芸当…)
ベーゼ「やはり君は運命を大きく動かし、早めてしまう…私は手加減が難しいの」
アイシュレイズ「ベーゼ…!陛下に近づくな!触るな!!」
ベーゼ「私は今回直接は手を出さない、君達をただ強くするだけ。ミリルを倒せる程の力を呼び覚ましてあげる」
ベーゼがフラルとアイルの才能限界を解放させ、身体能力と潜在能力を大幅に上昇させた
ルナティア(星達が悲鳴をあげてる…空の星が…震えている…ミリルよりも誰よりも危険…下手に怒らせたら本当に命がなさそうね…)
ベーゼ「…星を見る事が出来るのね、私は怒ったりしない。怒れないから」
ルナティア「っ…」
ベーゼ「人間の心を読むのは容易い、隠し事は出来ないと思って」
ベーゼは腕を組んで傍観するような様子でルナティアの方へ顔を向けていた
ミリル「…ごめんアイシュレイズ、無理するよ」
ミリルは自身の奥深くに感じる熱い波動のようなモノを全身に行き渡らせるように考えると身体が白く発光し始め、人間の瞳から神の瞳へと変化した
アイル「…様子が変わった。気をつけてフラル」
フラル「うん、姉さん」
ミリル「殺しはしないから、大人しく倒れて」
アイシュレイズ「陛下ッ!こんな檻っ…破壊してやる!」
アイシュレイズが自身の拳で檻を殴ると逆にアイシュレイズの身体を構成している力が消費されてしまい、アイシュレイズの拳がポロポロと崩壊し始めてしまった
アイシュレイズ「ナァッ…そんな…」
アイシュレイズが慌てて拳を修復させると、この檻は触れた力を吸収するもしくは消滅させるものだと考えた
アイシュレイズ(さっきも…私に対して刃を向けてきたあの者を無視して陛下の元へ行かなければならなかったのに…どうして行かなかった…私らしくない…)
ベーゼ「そうね、君らしくない。皇帝神を1番に尊敬していると豪語している神遺聖の君がする行動とは思えない。それは私が決めた運命だから。君は本当の選択を出来なくなる。本来ならば君ほどの実力者呼ぶべきではないのだけど皇帝神の真の理解者は神遺聖が1番だからね」
ルナティア「魔力じゃない…マギラセントラルの力では無い…あれは…」
ルナティアは先程から魔力を出しているはずなのに何も起きない…力がただ吸われているだけの現状でミリルを見守ることしか出来なかった
フラルアイルと戦っているミリルを見る
これしかできないのだ
ルナティア(大魔法師なのに何をやってるの私は…大魔法師の使命は人類の守護…1人の女の子を戦わせたまま大魔法師は何もしないなんて許せないわ)
ベーゼ「………」