第22話 愛を望み
ミリル「おかえり〜!一体何の用事をしていたの?」
ミリルに部屋の番号を教えて貰いノックすると同時に扉を開けて顔を出したミリルを見た途端心が落ち着くのを感じたアイシュレイズはミリルの両肩を両手で優しく触り部屋に一緒に戻ろうと誘導した
アイシュレイズ「迷子の子供達がいたので同伴してました」
アイシュレイズ(今の陛下は孤児のことを忘れていらっしゃる…下手に思い出させない方がいい…)
アイシュレイズはそのままミリルをベッドに座らせるとミリルが一緒に座りなよと手招きし、恐る恐る隣に座った
ミリル「そうなんだ!アイシュレイズは優しいね!良い子良い子!」
ミリルはワシャワシャとアイシュレイズの頭を撫でるとアイシュレイズは嬉しそうに微笑んだ
アイシュレイズ「…そういえば夕食はいかがいたしましょうか…私の手料理は陛下に食べさせては行けないと神遺聖の中で決まっていまして…私は料理が…」
ミリル「うーーん…そういう時もあろうかとレシピの本買ってみたんだ!台所あるからそこで一緒に料理しよ!」
アイシュレイズ(陛下と一緒に料理…!)
アイシュレイズ「やります!陛下と一緒…!」
2人は買ってきた食材と台所に備えてある包丁などを利用して料理を始めた
アイシュレイズは自分の剣で切った方が楽だと提案したが切れ味が良すぎて食材が耐えきれない可能性があるとミリルが食材を切る事になった
ミリル「んーー…まずは野菜を1口ぐらいの大きさに切る…」
アイシュレイズ「お上手です陛下!」
ミリル「ありがとう〜!あっ、ジャケットかマントか分からないけどそれ脱いだ方がいいんじゃないかな…後で火を使うし…」
アイシュレイズ「一応普通の炎じゃ燃えないはずですが…雰囲気作りも大切ですね…脱ぎます!…髪の毛も結んだ方が良いでしょうか…」
ミリル「私も結ばないと…」
ミリル(上着脱いだアイシュレイズって…なんていうんだろう…一気にかっこいい真面目なお姉さんみたいな雰囲気だなぁ…)
アイシュレイズ「野菜を切ったあとは鍋に油を入れて野菜を炒めるらしいです…ヴァーミリオンならすぐに燃やすことが…」
ミリル「ヴァーミリオンのこと全然記憶にないけど多分その燃やされた野菜原型保ってないよね…とりあえず普通にやろう…あ!待って牛肉入れてないよ!?」
部屋の中が段々と美味しそうな匂いで包まれていき、
数十分経つことで美味しそうな牛肉の赤酒煮込みやサラダが完成したのだ
アイシュレイズ(陛下と私ふたりで作った料理…そういえば初めてですね…オリジナルが知ったら嫉妬の嵐で殺されてしまうかもです)
ミリル「完成度高いよ〜!食べよ食べよ〜!」
アイシュレイズ「そうですね陛下」
ふたりが頂きますと言い、楽しそうに食べている時に孤児院ではリトとステラが挨拶をしていた
ー孤児院ー
リト「はじめま…して、リトだ。こいつは俺の妹のステラ……」
ステラ「ステラです!よろしくおねがいします!」
レイナ「初めまして、ほらみんな。新しいお友達よ〜」
レイナは15人の孤児達を世話する孤児院の管理者であり、リトと同い年ぐらいの子達が2人に興味津々の顔をしていた
シグナル「こんにちは!僕はシグナル!よろしくねリト!ステラ!」
リト「…よ、よろしく」
ステラ「よろしく〜!」
ランス「僕はランス!」
シリア「私はシリアー!」
孤児院の子達は全員友好的であり、心を少し閉ざしているリトに関しては居心地の良さを多少感じていた
レイナ「みんなリト君とステラちゃんと仲良く一緒に過ごしましょうね〜」
孤児達「はぁーい!」
レイナ「それじゃあみんなが寝ている部屋に案内するから行こっか」
リト「う、うん…」
ステラ「…アイシュレイズお姉さん来てくれるのかなぁ…」
レイナ「ん?アイシュレイズお姉さん?」
ステラ「うん!ステラを治してくれたの!金髪で!青いお目目で!青いマントを着てたの!すっごい綺麗なお姉さん!」
レイナ(マントを着てるなら魔法師かな…いやでも金髪の青マントの魔法師は見たことが…)
リト「リディア様と知り合いだったしいつか会えるだろ。アイシュレイズに会うまでに俺らはおっきくなって強くなろうぜ!」
ステラ「うん!」
レイナ「良い目標だね〜、ここが寝室!喧嘩しちゃダメだからね〜」
リト「みんなでここで寝るのか?」
レイナ「ええ、13歳まではここで寝るようになってるの」
リト「俺が今12歳だから…あと1年しかここにいられないのか…?」
レイナ「13歳になったら1人の部屋が与えられるのよ」
リト「1人の部屋…かっけぇぇ!」
ステラ「いいなぁお兄ちゃん!ステラも部屋欲しいー!」
リト「ステラはまだ10歳だろ…」
ステラ「うう…」
レイナ「いっぱい寝ていっぱい遊んでいっぱい学べば大きくなれるよ」
レイナはそう言うと2人の頭を優しく撫でて、次に何をするのかを誘導を始めた
ー翌日ー
ミリル「ううーん!良い朝!おはようアイシュレイズ!」
アイシュレイズ「おはようございます陛下。あ、あの…私…陛下の朝ご飯を作ってみました…。お口に合えば幸いなのですが…」
ミリル「えぇぇっ!!!アイシュレイズの手作り!?」
アイシュレイズ「はっはい!本を見ながら作ったので問題は無いと思うのですが…」
ミリル「食べる食べる〜!顔洗ってくるから待ってて〜!」
アイシュレイズ「はい、陛下」
そうしてアイシュレイズは自身の作った野菜スープと豚肉と卵をのせたトーストを用意していた。
アイシュレイズ「果物の甘飲料もございますので…」
ミリル「ありがと〜!凄い美味しそうだよ!」
アイシュレイズがバナナの甘飲料をテーブルの上に置くと、ミリルはいただきます!と言いひと口ひと口食べて行った
アイシュレイズはミリルの顔を見ながら唾を飲みこみ、反応を伺っている
ミリル「…んんんんーーっ!!美味しいよ!!焼きたてだしスープも暖かいし…幸せだよぉ!ありがとうアイシュレイズ!毎日食べたい!」
アイシュレイズ「……………」
ミリルがアイシュレイズの顔を見るとアイシュレイズの目からは涙が零れていた
ミリル「どうしたのアイシュレイズ…」
アイシュレイズ「……い、いえ…申し訳ございません…陛下の目の前で泣いてしまうだなんて…」
ミリル「…私何か悲しませるようなこと言っちゃった…?」
ミリルがアイシュレイズの涙を指で拭うと、アイシュレイズはボソッと呟いた
アイシュレイズ「…私は…オリジナルの複製体なので…私自身が体験したことではないのですが……皇帝神としてご健在の時、陛下に手料理を振舞ったことがあるのです。セーラ様から陛下は甘いものが好きだと聞いていたので…しかし陛下は食べてはくれましたが一言も言わずに…」
アイシュレイズ"陛下…今お時間よろしいでしょうか"
皇帝神ミリル"…何かしら"
まだ生まれて3000年ほどの私は陛下から笑顔が消えたことに不安を持っていた
生まれたばかりの頃はニコニコと笑う陛下でよく甘いものを食べに行こうと言ってくださっていた
だから甘いものを食べさせることが出来れば陛下も笑ってくれると思ってた
アイシュレイズ"これを食べていただきたくて…頑張って陛下の為に作りました!"
皇帝神ミリル"………そう"
アイシュレイズ"あっ……これは陛下の好きな甘いフォンケークです!"
陛下の好みは知っている
クリームが乗っかった砂糖がふんだんに使われてる焼き菓子だと
果物も沢山のせて豪華にした
普段働きすぎている陛下も甘いものを食べたい頃だろうと思った
皇帝神ミリル"…………それよりも何時までそこにいるつもりなの。あなたの使命は私の為に料理することではなく、私の為に戦うことであるはずよ"
陛下は真面目だったのか それとも陛下は私のことが
アイシュレイズ"……陛下のおっしゃる通りです。それでは失礼いたします"
陛下は正しい………私はただ陛下の言う通りに従えばいい
ミリル「………ごめんね…昔の私がそんな酷いことしてたこと知らなかった……」
アイシュレイズ「いえ…悪いのは私ですので…」
ミリル「そんなことないッ!!!」
ミリルはアイシュレイズの両手を優しく両手で握りしめて アイシュレイズの顔にぶつかりそうなほど自分の顔を近づけた
アイシュレイズ「陛下ッ」
ミリル「アイシュレイズが寂しがっちゃった分今の私がアイシュレイズを幸せにする!!!今の私じゃ力不足すぎて足でまといだけど…アイシュレイズがやりたいことを尊重したいしアイシュレイズが私の為にしてくれたこと全てに感謝したい!!!」
アイシュレイズの目にはミリルの顔がとても眩しく見えた 自分をちゃんと見てくれる真っ直ぐな眼と暖かく握ってくれる手がとても嬉しかった
アイシュレイズ(…っ…大好き…本当に大好き陛下ッ…冷酷な貴方も…優しい貴方も…全部全部大好き…大好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!!)
アイシュレイズの感情が限界値に達するとボッッと小さな煙の爆発が起こり、煙が消えたと思うとその中から小さいアイシュレイズに似た女の子が現れた
ミリル「…んええええ!?どうしたの!?」
ちびアイシュレイズ「…あわわ体が…」
ミリル「…一気に5歳ぐらいになっちゃった…」
お姉さんのような佇まいをしていた先程の姿と違って今の姿はまるで可愛さを象徴するかのような幼女になっていたのだ
ちびアイシュレイズ「…陛下…ごめんなさい…これはわたしの特異体質で…たまにこういうこと起きちゃうんです…」
ミリル「ほへーーっ!かんわいいい!!私の膝の上においで。おちびなアイシュ…ちびアイ!」
ちびアイ「ち…ちびあい…?」
ちびアイはミリルに体を持ち上げられ、膝の上に座りながらミリルにご飯を食べさせられていたのだ
ちびアイ「陛下…わたしは元の大きさに戻れますから…」
ミリル「今だけーっ!お願い!」
ちびアイ「……陛下がそう仰るのなら…」
ふたりが和気あいあいと朝ごはんを食べている中、1人の大魔法師は机を大きな音で両手で叩きつけ勢いよく椅子から立ち上がった
ーユスタル邸ー
ユスタル(……何だこの違和感……このままじゃなにか行けないようなそんな感じがする…でも確証がない……研究に没頭しすぎて頭がおかしくなってしまったのか…)
ユスタルはあの一件の後、ずっと自室に籠り魔法の研究をしていた。
神に負け、歯が立たなかったという事実がユスタルのプライドを大きく傷つけたのだ
ユスタル「僕の魔法を…神を凌駕するものにしてみせる………」
ルナティア「あーらら、ユスタル。あんた切羽詰まった顔してるわねー?」
ユスタル「…ルナティア、何の用ですか。人の家に無断で転移してくるなんて」
ルナティア「歴代最年少の大魔法師 ユスタル・セラフィムが負けたと聞いてね〜。フロイゼンの氷結界も解除されてるから飛んできちゃった〜」
ユスタルの後ろにいきなり現れたのはユスタルと同じ大魔法師の1人 夢幻の大魔法師 ルナティア・スペルレイだった