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皇帝神の戦いは永遠に  作者: Amenbo
第1章 絶氷の章
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第21話 首都の様子

ミリル「全くアイシュレイズったら!もう宿の手続きは私ひとりでやるから!」


アイシュレイズ「陛下のお手を煩わせるなど…」


ミリル「さっきので十分煩わせられたよ!?」


アイシュレイズ「も、申し訳ございません…」


アイシュレイズは自分の指をからめてモジモジと悲しそうな顔で下を向いていた

ミリルは「はぁ…」とため息をついて冒険者連合に行って宿について聞こうと提案し、ふたりはそのまま向かったのだ


受付嬢メラリー「近くの空いている宿ですね…検索をかけるので少々お待ちください」


アイシュレイズ「……」


メラリー「ミリルさんの予算で該当するのはこちらの宿ですね」


メラリーは紙地図を机の上に広げ、赤いペンで宿のある場所をバツで印をつけた

ミリルは「ありがとうございます!!!!」と言いアイシュレイズを連れて連合の外へ出たのだ


アイシュレイズ「…やはり私はこういう交渉系には向いていないのかもしれません…いつも実力行使だったので…」


ミリル「うん、アイシュレイズが脳筋なのはすんごーくわかった。普通の手続きは私がやるからアイシュレイズは私が攻撃されそうな時があったら守ってくれるボディーガードになってね」


アイシュレイズ「ボディーガード…かしこまりました」


ミリル(本当に戦闘向きの子なんだろうなあ…大人しそうなリディア様みたいな見た目の雰囲気してるのに…)


アイシュレイズ「…そういえば私も冒険者になれるのでしょうか…」


ミリル「ん?アイシュレイズもなりたいの?」


アイシュレイズ「なりたいと言うよりかは冒険者になって陛下の資金を集める係にもなりたいのです。正直今の陛下より私が任務を遂行すれば効率は良いかと…」


ミリル(確かにあの強さなら楽なんだろうなぁ…)


ミリル「気持ちはありがたいけど私も任務はやるよ。私自身の成長にも繋がるし…アイシュレイズは私の大切な仲間なんだからひとりだけ頑張らせるなんてしたくないんだ。あっ、冒険者になることを否定してる訳じゃないからね!一緒に冒険者として任務やろうってこと!」


アイシュレイズ「……かしこまりました、陛下がそう仰るのならば…」


ミリル「とりあえず今は安定した生活を求めることが最優先!ということで宿を取ってくるからアイシュレイズは買い物をお願いしてもいいかな!」


アイシュレイズ「買い物ですね、何をお求めに?」


ミリル「えーとね、食材と日用品とかかなぁ…この紙にまとめたから!」


ミリルは買い物リストを書いたメモ用紙をアイシュレイズに渡し、アイシュレイズは服の中にその用紙を入れた


アイシュレイズ「お任せ下さい陛下、次こそは陛下の期待に答えられるように致します」


ミリル「任せた!ここの宿で待ってるから!あ、そうだお金お金…無銭泥棒にはならないでね!」


ミリルは手を振ってアイシュレイズを見送るとそのまま宿に入って普通に宿の手続きをし始めたのだ


アイシュレイズ(陛下からお使いを頼まれるのは生まれて初めてかもしれませんね…いつもトレイアかヴァーミリオン辺りでしたし…食材屋は一体どこに…)


神遺聖の証である青い特製のローブが寒い雪風によってヒラヒラと揺れている

そうして何となく歩いていると野菜や果物がたくさん陳列されている店を発見しその店の中に入った


ミリルが書いたリストには トマト ポテト キャロット オニオン タマゴ オイル コムギコ ミルク…など書いており、アイシュレイズは店が置いているカゴの中にリストの名前と一緒の商品名が書いてあるところから少しずつ取っていったのだ


アイシュレイズ(これぐらいで大丈夫でしょうか…もしかしたら陛下の手料理を食べられるかもしれ…いや違う…陛下に料理をさせるなど神遺聖として言語道断すぎる……私が作らなければ…しかし私の料理の才能は絶望的だとトレイア達に言われて……絶望料理を陛下に食べさせる訳には…)


アイシュレイズはそう考えながら支払いの所へ向かい、お金を払って食材と日用品を購入した

ちょうど袋を持って帰ろうとした瞬間アイシュレイズの後ろを全速力で走っていく子供が見えたのだ


店員「そこの子待って!!お会計した!?」


店員が口で止めようとしたがその子供は止まる気配がなくただひたすら逃げるように外へ走っていった


アイシュレイズは瞬時にその子供の目の前まで高速移動し、肩を掴んで離さないようにした

子供は捕まったと悔しそうな顔をしながらバタバタと暴れ始めた

その子供は古く汚い服を着ていて髪の毛もいつ風呂に入ったのか分からないほどベタベタしていてダメージを受けていた


子供「はなせぇぇぇぇぇぇえ!!!アンタに捕まってる場合じゃねえんだよ!」


アイシュレイズ「この世界では…万引きと言われるそうですね」


子供「アンタに構ってる場合じゃねえんだよ!早くしねえとステラが死んじゃうんだよ!」


アイシュレイズ「…盗んだものは…風邪薬ですか」


子供「ああそうだよ!金がねえから盗むしかないんだよ!」


アイシュレイズ(様子を見るに親がいないのでしょうか…)


アイシュレイズはこの子供をどうしようかと悩んでいた。この件はミリルとは無関係であり、ミリルの為に全てを捧げているアイシュレイズが必ずしもするべきことでは無いのだ


アイシュレイズ「………」


ミリル『苦しんでる子を放置してきたの!?…可哀想だよ……アイシュレイズ…もう仲間と呼ばないよ 』


もしこのまま万引きした子供を店に突き出して帰るだけではミリルを悲しませると判断したアイシュレイズは子供の手首を掴んでそのまま店に戻り余っていたお金でその風邪薬を購入したのだ


子供「…は?」


アイシュレイズ「私の知り合いが買い物の方法を知らなかったようで申し訳ございません、この風邪薬は買い取らせて頂きますのでこの件はここまでにして頂いてもよろしいでしょうか」


店員「は、はい…もう大丈夫です…?」


店員はアイシュレイズの明らかに貴族を護衛する騎士のような服装と子供の汚れた服を見比べて知り合いなのだろうか…と疑問に思っていた


アイシュレイズはそのまま子供の手首を握ったまま店を出て、子供に質問をした


アイシュレイズ「…ステラという者がいる場所に案内してください」


子供「なんでお前に教えなきゃならねぇんだよ!」


アイシュレイズ「…正直人間がどうなろうとどうでも良いのですが、このまま貴方を見捨てたら優しい主が悲しんでしまうので…貴方名前はなんというのですか」


リト「リト…」


リトはアイシュレイズの人のものとは思えないまるで深海のように濃い青色に宇宙にある無数の星のような輝きが入った目に恐怖を覚えていた


アイシュレイズ「そう…ではリト。これだけは覚えてください、罪を犯せば…大切な者の心を傷つけてしまうということです」


リト「…もう盗みをするなってことかよ」


アイシュレイズ「…家族が盗んできたもので治療されたいと思いますか」


リト「…………ステラが盗みをしてきたというのなら…俺は受け取りたくない」


アイシュレイズ「それと同じです、ステラさんもきっと望まないでしょう」


リトは正論をアイシュレイズに言われ、自分がしたことが逆に妹を傷つけてしまうことに気づき落ち込んだ顔をしながらアイシュレイズにステラがいる場所へ行ける道を案内した


店から2kmほど離れている裏道に入ると毛布1枚で寒そうにし、熱が高いのか顔を赤くしながら横になっている少女を見つけた


リト「ステラ!熱がまた上がってる…薬を持ってきたからな!」


アイシュレイズ「……その薬は恐らく即効性ではないので効果が出るまでに時間がかかるでしょう。私から見るに人間の体は脆いことを考えて…あと少しの命…」


リト「…治す方法は無いのか…?」


アイシュレイズ「…私は治療専門では無いので…しかし方法が無いわけではありません。痛くないようにしますがオリジナルほどの上手くは出来ないので…多少痛みを感じるかもしれません。それでもある程度マシにすることが出来るかもしれません…いかが致しますか」


リト「…その方法は…?」


アイシュレイズ「この剣で1度ステラさんの首を斬ります」


リト「はぁ!?妹を殺す気か!?」


アイシュレイズ「そのまま斬ったままですと死にますね。しかし私は斬ったという事実を無かったことにする権能を持ってますので。」


リト「け、けんのう…?」


アイシュレイズ「…どうしますか、やりますか?やりませんか」


リト「……ステラに聞かせてくれ。ステラ、このおん…お姉さんがステラを治してくれるそうだ。少し痛いかもしれないが…どうしたい」


ステラ「お兄ちゃん……私早く治りたい…お兄ちゃんに迷惑かけたくない………金髪のお姉さん…お願いします…」


アイシュレイズ(人間の体はなんて脆いのでしょうか…)


リト「……頼む…」


アイシュレイズ「分かりました」


アイシュレイズが手を前に出すと空中から青色の光が凝集し始め、いつも使っている金色の剣が完成された


リト(黄金の剣…)


暗い裏道に黄金の剣の輝きで照らされる

アイシュレイズが剣を握ると活性化するかのように青い輝きも見え始めた


アイシュレイズ「…それでは参ります……リヴィエール」


アイシュレイズが剣を持ってステラの方へ歩いていき、通り過ぎたかと思うとフッと少し強い風が吹いたのを感じた


ステラ「っ………」


リト「……?」


アイシュレイズ「終わりました…気分はどうですか」


ステラ「…喉が痛くない…頭も痛くないよ…ありがとうお姉さん!」


リト「今何したんだ…?何も見えなかった!」


顔を赤くして倒れていたはずのステラが元通りの肌に戻り、ゆっくりと起き上がった

リトの目にはただアイシュレイズがステラの隣を歩いただけにしか見えなかったのだ


アイシュレイズ「…簡単に言うと1回ステラさんの体を粉々にしました。人間の体は肉眼では見えない隙間がたくさんありますからね…その隙間を切り刻んだ瞬間私の神の権能…神権【神遺剣の始祖(レイズ)】を使って対象を元の状態に戻すことが可能なのです」


リト「元の状態ならステラはまた熱があるときに…」


アイシュレイズ「神権が定義する元の状態とは完全に健康な時の状態なので…荒療治の方法ですよ。成功確率は60%ぐらいでしたがなんとか成功して良かったです」


リト「失敗する確率が40%もあったということかよ…」


ステラ「…お兄ちゃん…お礼言わないと…このお姉さんがいなかったら私多分……」


リト「……そうだな…あ、……あの…名前はなんて言うんだ…?」


アイシュレイズ「……アイシュレイズ、皇帝神 ミリル・セレントヴァイン様にお仕えする神遺聖のひとり。適当にアイシュレイズと呼んでくれれば…」


ステラ「ありがとう!アイシュレイズ!」


ステラがアイシュレイズに抱きついてアイシュレイズの顔に向けてニッコリ笑うと、アイシュレイズは何かを思い出したかのように驚いた顔をした。


リト「…アイシュレイズ、その…妹を助けてくれてありがとう!薬代も払ってくれて…悪いことしたのに庇ってくれて…」


アイシュレイズ「…大切な者を守りたい気持ちは流石の私でも分かりますから」


アイシュレイズがステラの頭を優しく撫でるとステラは嬉しそうにニコニコと笑い、リトは元気になった妹を見て安堵した


アイシュレイズ(この子達は恐らく家も親も居ないのでしょう…セーラ様に頼めば事象操作で何とかなるはずなのに…連絡が取れない今この子達をどうするか…陛下の所へお連れするべきか……陛下ならどうするか……きっとこの子達を助けようとするはず……今から急いでフロイゼン城に行ってリディア様にお会いしこの子達を暖かい家に入れてもらえるか聞くのが最善…)


アイシュレイズ「…リト、ステラさん。今から走りますので少し体持ち上げますよ」


アイシュレイズが左腕でリトとステラ2人とも持ち上げると足に力を込めて一気に空へ飛び上がり、屋根を使ってフロイゼン城に向かい始めた


2人「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」


ステラ「あれっ…雪降ってるのに全然寒くないし…当たらない…」


アイシュレイズ「結界を張ってますからね、もう着きますから!」


フロイゼン城の目の前で着地し、乱れた髪の毛を頭を振ることで元に戻した

そして門番にリディアの知り合いで会わせて欲しいとお願いすると門番がリディアにその旨を伝え始めたのだ


ステラ「こ、ここって…フロイゼン城だよね…権主様が住んでるお城だよね…」


リト「…アイシュレイズまさか権主様と知り合いなのか…?」


門番「リディア様のお許しが出ました。どうぞ」


アイシュレイズ「2人とも行きますよ」


2人「は、はい…」


まるで氷で出来たかのような城の廊下を歩き、最上階の最奥にあるリディアの執務室をノックすると「ど、う…ぞ…」と苦しそうに答えるリディアの声が聞こえた


アイシュレイズ「失礼しま…大丈夫ですか…」


リディア「え、ええ…ちょっと今まで放置してた分が溜まってて…それでどうしたのかしらアイシュレイズ…ミリルは居ないのね」


アイシュレイズ「陛下は今宿の手続きをしておりまして、来た理由はこの子達が住める場所を教えて頂きたいなと…」


リディア「…!貴方達こんなボロボロな服で…」


リディアがアイシュレイズの後ろに隠れていた2人を見つけるとペンを慌てて机に置き、椅子から離れて2人の元へ駆け寄ったのだ


リディア「グレイスには孤児院や養護施設があるはずよ…まだ見つかってない子供達もいたのね……連れてきてくれてありがとうアイシュレイズ。この子達は私の方から施設に入れて貰えるようにしとくわ」


リト「…リディア様…」


ステラ「………」


リディア「安心して、今日からは暖かい暖炉のある家で暮らすのよ」


リディアが2人の頭を撫でるとステラが涙を流し始め、リトと繋いでた手をさらに強く握ったのだ


ステラ「…やったぁ…お兄ちゃんやっと暖かい家に行けるよ…」


リト「そうだな…ありがとうございますリディア様」


リディア「感謝されることでは無いわ…これはして当然のことだもの」


アイシュレイズ(…リディア様は良き権主ですね…)


アイシュレイズ「…リディア様宜しければ…お手伝い致しましょうか」


リディア「えぇっ、大丈夫よ…?」


アイシュレイズ「こう見ても陛下の執務の手伝いをしていたので」


リディア「……じゃ、じゃあこの書類に目を通して変なところがないか確認してくれない…?」


アイシュレイズ「かしこまりました…あ、その前に陛下に連絡をしなければ…」


アイシュレイズが右手で右耳を抑えて念話を始めるとミリルから心配の大きな声が聞こえてきたのだ


ミリル『アイシュレイズ!!帰ってくるの遅いけど大丈夫!?道に迷った!?こっちから念話出来ないから心配してたよー!』


アイシュレイズ『連絡が遅くなってしまい申し訳ございません陛下。少し用が出来てしまったので陛下はそのまま宿でゆっくりしていてください。あと1時間後には宿に着くようにしますので』


ミリル『アイシュレイズが用を作るなんて珍しいね…私なら大丈夫だから無事で良かったよ!それじゃ!』


アイシュレイズ『はい、失礼致します』


アイシュレイズが耳から手を外すと、急いで書類を読み始め不審な点を見つけ始めた


アイシュレイズ「…人間での経費基準が分からないのですがこれ異様に高いですね…これに関してはここまで騎士を配置する必要ありませんし…何ですかこれは…

この案を考えた馬鹿の顔を見てみたいものです!」


リディア(アイシュレイズは軍備系の書類をお願いしようかしら…)


リト「…俺達は邪魔しないように壁側で話してようぜ」


ステラ「うんっ」


リディア「そこで待たなくて良いわよ…フランー!!!」


フラン「お呼びでしょうかリディア様」


執務室の扉が開き、綺麗な角度でお辞儀をするメイドが現れた

茶髪に桃色の瞳を持ったリディアと同い歳ぐらいの少女である


リディア「早急にこの子供達を孤児院か養護施設に入れる手続きをして!必要なお金は全て私に請求しなさい。不自由のない生活の為なら投資を惜しまないで」


フラン「かしこまりました。お二人共こちらへどうぞ」


リト「あっ……ありがとうございました!リディア様!」


ステラ「ありがとうございました!」


リディア「今度様子見に行くからね」


リト「アイシュレイズ!アンタに助けて貰った恩は忘れないから!次会った時には大きくなってアイシュレイズみたいにカッコイイやつになるから!」


ステラ「アイシュレイズお姉さん!またねー!今度一緒に雪だるま作ろ〜!」


アイシュレイズ「………はい、楽しみにしてます」


アイシュレイズは2人の姿を横目に軽く微笑むとリディアが驚いた顔をしてアイシュレイズを見ていたのだ


リディア「…貴方ミリル以外に笑うこと出来るのね……」


アイシュレイズ「…あの子供達…昔の陛下にそっくりなんです…甘えん坊で私に対抗心を燃やしていた幼き陛下に…」


リディア「そう…」


リディア(貴方の目が少し輝いて見えるのは果たして本当に幼いミリルを思い出しただけなのかしら)












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