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皇帝神の戦いは永遠に  作者: Amenbo
第1章 絶氷の章
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第2話 幽閉した国

しばらく歩いていても続くのは黒い幹のみの木と遠くを見ても雪で何も見えない地平線であった


ミリル(森との境目を歩いてるのに街っぽいのが見つからないなんてどういうこと…?…このままだと凍死しちゃう…)


まつ毛が凍っていき、手の先も赤くなり始め息をかけて暖めないと固まってしまうんじゃないかと思えるほどであった


肩や太ももが露出してる服を着ていた為、体を手で擦ってもすぐに寒くなってしまう もう動かない方がいいのでは無いかと思い始めた


ミリル「…あ…れは…」


ミリルが見つけたのは森の木の間から見える暖かそうな光であった


ミリル(あそこに行けば暖かいかな…)


ミリルは早く暖かいところに行きたいという思いで走り、長い髪の毛で口を覆い暖かい息で顔を温めようとしながら


そうして走って3分で着いたのはミリルの身長の約12倍ほど高い豪華な屋敷であった


ミリル(…少しだけでも良いから暖を取らせて貰えないか…聞いてみよう…)


ミリルが門らしき所の前に立ち、門の近くにある紐のついたベルを鳴らすと屋敷の扉からとある男が出てきた


?「どなたでしょうか、本日は訪問の予定が無いのですが」


現れた男はブロンド髪で青色の目をしたミリルと同い年が少し年上の雰囲気を出している美形の男性であった


ミリル「あの…すみません…雪が収まるまで暖を取らせていただけないでしょうか…」


?「……………今日は豪雪の警報が出ていたのに1人で外出するなんて…………少しだけですよ。貴方今にも倒れそうなほど足がふらついてますからね、僕の家の前に倒れられたら困りますから」


ミリル「寛大な心に感謝します……」


?「とりあえず中に入ってください、お腹も空いてるでしょうしご飯も用意します。ちょうど食材が余ってて困ってたので」


ミリル「いつか恩を返します…本当にありがとうございます」


?「…単なる気まぐれですよ、運が良かっただけです」


ミリルは男性の後をついて行くと屋敷の中へ入り、カーペットの上で体についた雪を振り払っていた


?「…白い髪の毛ですね、こんなに雪がついていると思いませんでしたよ」


ミリル「確かにそうですね…私も気づかなかったです」


ミリルが前髪をちゃんと整えて後ろ髪も手ぐしで梳かすとちゃんと男性の顔が見えるくらいのスッキリした状態になった


?「………………」


ミリル「…あ、あの…?」


男性はミリルを見るとしばらく固まり、ミリルの声掛けの途中で何かに気づいたかのように驚いた


?「あっ…すみません、ついビックリしてしまいまして…」


ミリル「…なにに…?」


?「珍しい白髪に白まつ毛…そしてほぼ白に近い目…ここまで白と象徴できるような人を見たこと無かったので…」


ミリル「……珍しいんですね…私全然分からなくて…」


?「すぐに暖房室を案内します、ここに立たせたままですみません」


ミリル「え…いえ…お世話になってる立場でワガママはこれ以上言えませんから…」


ミリルは男性に暖房室に案内してもらうとすぐ暖炉の近くに立ち、燃え盛る炎をジッと見つめていた


ミリル「…暖かい…」


?「………炎魔法を持っていないのですか?」


ミリル「炎魔法…?…えーと…炎を出せる魔法ですか?」


?「そうですよ、人間は四大元素魔法のうち2つは必ず持ってますからね」


ミリル「持っているかとか分からないんです」


?(訳ありなのか…)


ミリル「…ブロンド髪さん…先程は迷惑をかけられないと言ってしまいましたがもう1つ迷惑をかけても良いでしょうか…」


?「ブロンド?…あぁ…別に難しくないことだったら大丈夫ですよ。あと僕のことはユスタルとお呼びください」


ミリル「…ユスタルさん、私にこの世界のことを教えてくださいませんか」


ユスタル「この世界…マギラセントラルをですか?」


ミリル「マギラセントラルって言うんですね!なるほど…」


ユスタル「貴方今までどこで育ってきたんですか…小さい頃にマギラセントラルについて義務教育で学んでるはずですよ」


ユスタルが呆れた顔でそういうとミリルは自分が明らかに知識不足なことに気づき、面目ないという落ち込んだ顔をしていた


ユスタル「そんな顔しないでください…事情があるんですよね。この話はまず後にしましょう、先程から聞こえてますよお腹の虫の音」


ミリル「えっ!?…お腹鳴ってました…?」


ユスタル「スープ系作ってくるのでそこで待っててくださいね、何か変な行動を起こしたらすぐに追い出しますから」


ミリル「は、はい…」


ユスタルはソファー近くに置いてあった毛布をミリルの背中にかけ、部屋を出ていった


ミリル「……………」


ミリルはただ何も喋らずに炎をずっと見つめていた

ジリジリと燃え盛る炎がミリルの顔を赤く照らしていた

あたたかい炎を見ていると突然悲しい気持ちになってくる、何処かも分からない、知ってる人が誰もいない、自分の名前ぐらいしか情報を持ってないなどの不安がミリルを押し寄せていた

ミリルの目からは透明な涙が零れていた


ミリル「……一人ぼっちなのかな…誰か私を知ってる人…誰でもいいから私を帰るべきところに帰して欲しい…」


ミリルが目を瞑って15分後にユスタルが扉を開き、風の力でミリルのご飯を乗せたトレーを浮かせていた


ユスタル「お待たせしました、簡単なものですがこちらをどうぞ………って目が少し赤いですね、何かありましたか」


ミリル「ありがとうございます…いえ、少し考え事してて…」


ミリルがあまり顔を見られたくないと言うかのように目線を下に向けて黙っているとユスタルは気にしないかのようにトレーを机の上に置いた


ユスタル「…そうですか、こちらの椅子に座ってください。」


ユスタルはそういうと向かい側の椅子に座り、空いた手を埋めるためかのように道具をいじり始めた


ミリル「…いただきます…」


ミリルがスプーンを手に取り、あたたかいじゃがいものスープを掬い口に運ぶと火傷しないぐらいの熱さが口の中に広がりじゃがいも特有の濃厚さが舌の神経を刺激しているかのようであった


ミリル「おいひい…」


ユスタル「お口にあったようなら良かったです、おかわりが必要であれば言ってください」


ミリル「…ありがとうございます…そういえばこの屋敷にはユスタルさんしか居ないんですか?…人の気配が全然しなくて」


ユスタル「僕一人ですよ、この家はよく空けるので使用人を雇う必要がありませんし。1人の生活を誰かにやらせるほど生活力が無いわけではありませんから」


ミリル「へぇ……」


ユスタル「……先程この世界について教えて欲しいと言ってましたよね」


ミリル「はい!知りたいです!」


ユスタル「……マギラセントラルには6つの大国があります。1つ目はフロイゼン、2つ目は秘麗源(ひれいげん)、3つ目はヴルガーノ、4つ目は月陽ノ宮(げつようのみや)、5つ目はエデンリース、6つ目はドゥンケルハイト。今僕たちがいるのはフロイゼンと秘麗源の国境近くですね」


ミリル「フロイゼン…秘麗源…ヴルガーノ…月陽ノ宮…エデンリース…ドゥンケルハイト…」


ユスタル「それぞれの国には権主という言わば国王のような存在がいます。例えばフロイゼンには水と氷を司る絶氷の権主 リディア様が、秘麗源には風と土を司る生命の権主 琳風(りんうぃ)様、ヴルガーノには炎とエネルギーを司る灼熱の権主 フレイア様、月陽ノ宮には雷と時間を司る閃光の権主 華瑚(かこ)様、エデンリースには光と裁を司る断罪の権主 ミカエル…様、ドゥンケルハイトには闇と魂を司る深淵の権主 零様がいますね」


ミリル(情報量多いって…覚えられるかな…)


ミリル「なんか凄そうな人達ですね…」


ユスタル「まぁ国で1番偉い人ですから…魔法ではなく権法という術を使えますからね」


ミリル「魔法と権法は違うんですか?」


ユスタル「魔法は魔力を使い、権法は権令エネルギーというあまり究明されてない力を使ってるらしいです。僕たちは魔法は使えますが、権法を使えるのは権主か権主の血縁関係だけですね」


ミリル「なるほど…私記憶無いのに一体何して過ごせばいいんでしょう…」


ユスタル「…記憶に関してなら月陽ノ宮の華瑚様にお会いして昔の貴方を視てもらう方がいいと思いますよ。でも今別の国へは行けないので行けるのは随分先だと思っておいた方が良いかと…」


ミリル「え?…行けないんですか?」


ユスタル「…本当に知らないんですね…ついてきてください、高いところから見た方が早いです」


ユスタルの後ろをついていくと屋敷の最上階まで案内され、屋根がガラスで作られている部屋にたどり着いた

ユスタルは風の魔法を利用して自分とミリルを浮かせ、周りに雪を防ぐ用の障壁を作りガラスの窓を開けて外へ飛び出した


ミリル「…な…何あれ…高い氷の壁…?…」


ユスタル「そうです、あれがフロイゼンを囲っている権主にしか溶かせない氷です」


ミリル「…飛べるなら上から脱出出来るのでは?」


ユスタル「前それを試したんですけど謎の障壁に弾かれるんですよね、座標移動も上手くいかなくて…おかげでこっちは困ってるんです」


ミリル「…権主様にお願いするのは…?」


ユスタル「権主様はずっと城に籠ったままなので出てきてくれないんですよ、手紙を送っても返事がありませんし…」


ミリル「前途多難ですね…」


《フロイゼン城 リディアの部屋》

リディア「……何よこれ…なんでみんなこんなに私のことを嫌うの…?ねえ…カルミア…私はどうすればいいの?権主だからこの国を守らなきゃいけないの?私を嫌う民達をなんで守る義務があるの?」


マイナス温度の部屋のベッドで権主 リディア・フロイゼン宛に届いた手紙を読み、手紙をクシャクシャにしてゴミ箱へ投げたリディアと扉の目の前で立っているリディアの幼馴染 カルミア・ファーレンハイトがいた

フロイゼンの権主の証である青色の宝石の瞳は赤色の怒りの感情を表すかのように変わっていて、カルミアはそんなリディアを優しく後ろから抱きしめていた


リディア「絶対許さない……全員この国に永遠に閉じ込めて豪雪に苦しめばいい………」


カルミア「安心してリディア、例え国民全員が敵になったとしても私はリディアの味方よ」


リディア「ありがとうカルミア…私は貴方を1番信頼してるわ」


カルミア「辛いことは全部私に任せて…貴方は楽になればいいわ」






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