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第6話 変人少女と出会いました!

 子グマこと、グリズリージュニアを退治したところで、僕が退治した二匹のクマたちを狙っていたのか、あっちこっち泥まみれの少女が、クマの背後から姿を現した。


 こげ茶色のポニーテールを揺らしながら、厳しい表情で木々の間を抜けてくる。


 狩人のような格好をしているものの、少女らしい体躯からして、屈強な戦士という訳では無いように感じる。それでも、鋭敏になった本能が危険信号を知らせてくる。


 その手に弓を下げているからだろうか。


「あ、やーっと着いた。うわっなんかすごいことになってる。ま、いいか。やっほー。今日も来たよー」


「え?」


 手を振り笑顔を咲かせる少女。


 まるで知り合いを見つけた時のように、その顔には安堵の表情が見てとれた。


 口ぶりからすると、ニャオミやマイちゃんの知り合いらしい。


 信者はマイちゃんだけって話だったんだけどなぁ。


 そんな風に疑問の視線を向けていると、少女の方も僕に気づいたようだった。


 そしてすぐに僕を見て、眉をひそめる。


「んんー? んんんー?」


 少女は僕の方へと駆け出すと、難しい顔をして腕を組み、あごに手を当てながら、ジロジロと無遠慮に僕の顔を見てきた。


「あの。なんですか? どなたですか?」


「わたし? わたしはカナ。あなたは新入りちゃん?」


「まぁそんなところですよ」


「えー! 新しい子!? もう、初対面からそんな格好しちゃって。もしかしてわたしを誘ってるの?」


「誘ってるか!」


 僕のツッコミをものともせずに、カナはニヤニヤとした表情を浮かべたまま、僕の首から下、主に胸の辺りをジロジロ見てくる。


 そういうやつか?


 なんとなく身の危険を感じて、自分の体を抱くようにすると、やだなあという感じでカナは手を振った。


「いきなり人の前で手は出さないよ」


「まるで、人がいないところだったら、手を出すみたいな言い方だが?」


「そうだけど?」


「そうだけど!?」


「まぁまぁそう言わずに、わたし可愛い女の子はみんなタイプなんだから」


 カナはまるで悪気もなさそうに、僕の方へと手を伸ばしてきた。危うく捕まりそうになるのを、猫の身体能力ですんでのところで回避する。


 可愛い女の子扱いにむずがゆいものを感じつつも、それは別に気を許したのとは違う。


 僕だって、だれかれ構わずというつもりもない。


「つれないなぁ」


「あなたが二匹のクマを追ってここまで来たんですか?」


「えーもう本題に入るの? もっとおしゃべりしようよー」


「いいから答えてください。どうなんですか?」


「わかった。まだ新入りちゃんの名前聞いてないから、新入りちゃんが名前を教えてくれたら答えるよ」


「僕はメイメイです。はい答えてください」


「えー! メイメイって言うの? めっちゃかわいいじゃん! しかも僕っ子? 実在するんだ! 初めて見た!」


 まるで珍獣を見たときに、興奮した様子でカナが叫んだ。


 心なし、視線が先ほどよりも鋭くなった気がする。


 狙われている!


「早く答えてくださいよ」


「何の話だっけ? メイちゃんが付き合ってくれるって話だっけ?」


「誰もそんな話してませんよ。それに、誰がメイちゃんですか」


「いいじゃんメイちゃん。かわいいよ?」


「そんな話してないんですよ。クマを追ってきたのがあなたなのかってことを聞いてるんです」


「ああ。その事ね」


 やっと思い出したという感じで、カナはうんうんとうなずきだした。


 なんかこの人と話してると疲れるな。


「わたしじゃないよ」


 カナは端的にそう言った。


「違うんですか? じゃあどうして草むらから出てきたんですか?」


「わたしはマイちゃんを追いかけてただけだよ?」


 その発言の真意も問い詰めたところだったが、この人とこれ以上話すのは正直嫌だ。


 追われていたマイちゃんのほうに、同情の視線を送ると、マイちゃんは、すでにニャオミの背後に隠れて怯えたようにしていた。


 ニャオミが信者であるマイちゃんを守るというのはわかる。だから、カナはどうやら、ここでは脅威とされているらしい。


 しかし、マイちゃんも別に追われることはしていない様子だったし、そうなると、たまたま気が立っている時に遭遇してしまっただけなのか?


 僕は、マイちゃんから視線をずらし、その前にいるニャオミへと移した。


 僕の視線に気づいたように、ニャオミはカナへ向けていた視線を僕に合わせてきた。


「にゃんにゃ? にゃにか言いたげだが?」


「ニャオミ、まさかとは思うけど、クマに因縁つけたのお前か?」


「にゃんでそうにゃる。アタシじゃにゃい」


「だって、やたらクマに詳しかったし、クマとのいざこざもあらかじめ知ってたみたいだし」


「この山に住んでたらあれぐらいわかるにゃ」


「ふーん。まぁそういうことにしておいてやるよ」


「にゃんで上から目線にゃんだよ!」


 キーキーと金切り声をあげながら鋭い視線でにらみつけてくるニャオミを無視し、改めてカナを見た。


 初対面の時に感じた感覚と同じように、おそらく次の困難はこのカナなのだろう。


「もう何? そんなに熱っぽい視線をくれちゃって?」


「違うわ」


「あ、そうだそうだ」


 突然、カナは大きな声を出すと、何か思い出したかのように懐からビンを取り出した。


「はいこれ持ってきたんだ。お近づきの印にどうぞ。いやぁこれ取ってくるの大変だったんだよ?」


 そう言って渡してきたビンの中には、黄金色のドロっとした液体が入っているようだった。


 僕が知る限り、それははちみつと言うものだと思う。


 そしてはちみつってクマの好物じゃないか?


「やっぱお前のせいじゃねーか!」

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


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