火刑
目覚める。そこはいつも眠っていたベッドの上だった。どうすればいいだろう?生き残りたいのに生き残れない。
「はぁ。どうすれば?」
「お嬢様!!」
「ジグ?」
ジグは急いでドアを開けた。
「お嬢様、お逃げください!」
「はい?」
「火事です!」
こんな過去はない。おかしい。一体何がどうなっているのだろう?
「お嬢様!こちらです!うわっ!?」
「ジグ!」
柱が倒れてきてジグと分かたれる。
「お嬢様!」
「ジグ!逃げなさい!私を置いていくのよ!」
「そんな!お嬢様を置いていくなんて!」
「いいの!早くいきなさい!!」
そうこうしているうちに火が回ってくる。
「ごほごほっ」
煙が肺を焼く。
「お嬢様!」
「ジグ、私は貴方の事をバカにしていました!」
「何を、言って…?」
「貴方は捨てられた子!惨めな子!そう思ってきたわ!」
「お嬢様?」
「だから私を助けなさい!今直ぐによ!!」
ジグは思った。逆だ。お嬢様は逆の事を言っているのだ。
「かしこまりました。」
ジグは涙を流しながら走って逃げた。
「ふふ、これで、これでいいのよ。」
そう、ジグだけでもこの不幸から逃れて欲しい。ルナはそう思った。
「甘いわね。」
そう、甘すぎる。これまでの私ならきっとジグを犠牲にしてでも助かろうとしただろう。だが、そうしないのは……。
「甘くなったから……ね。」
その場に倒れ込む。煙が肺を焼いてゆく。火の手が回ってくる。
善行をすれば助かるとでも?否、否である。こんな事で今までジグにしてきた事が無かったことになどならない。
「ジグ……」
「お嬢様ー!!」
薄れゆく意識の中、ジグの声がした気がした。
目覚める。そうか、また、私は死んで……?死んで……ない?
「お嬢様!」
「!?ジグ?!」
「良かった!」
ジグは泣きながらルナを抱きしめた。
「ジグ?どうして?」
「貴方は僕の恩人です。だから、助けにもどったんです!」
「バカなの?死んでしまったらどうするつもりなの?!」
「貴方の為なら命すら惜しくない!」
そう、これは7年前に戻ってジグと仲良くなった後の時間軸なのね。
「所で火事の原因は?」
「それが……放火だそうです。」
「放火?」
「何者かが火がつけたのだと警察から説明されました。」
「そう。ジグ。」
しかし、ルナは違和感に気づいてしまう。
「はい?なんですか?」
「ポケットの中身を見せて。」
「え……?」
「しらばっくれないで。いいから出しなさい。」
「……。」
ジグのポケットにあったのは血の着いたナイフだった。
「貴方、何人殺したの?」
「……何故分かった?」
「私が可愛いがっていたジグはね。左利きなの。」
「何を言っている?」
この時間軸は私が知らない時間軸のジグなのだと思ったのだ。
「お前を信じさせる為に一芝居うったって言うのに……。」
「そう、貴方が火をつけた。」
「ああ、そうだ。お前は僕を騙した。」
「騙した?」
「僕を愛しているといいながらチャールズの事を愛していた。だからそれが許せないなかった!!自分のモノにならないなら殺してやる!そう思ったんだ!」
「ジグ……。」
きっとこの時間軸の私はジグを可愛いがりすぎたのだ。それなのにチャールズの事をあきらめなかった。だからジグに殺されかけたのだ。
「ジグ、だからって屋敷の人間を殺す理由なんて……」
「ある!お前を1人にすれば僕を頼るだろ?だから殺したんだ!」
「そう。」
ルナはナイフを取り上げる。
「?!」
「ジグ、さよなら。」
赤い血飛沫が飛び散った。
「ルナ…様?!」
ルナは自らの腹を切っていた。
「ルナ様!?何故!?」
「……ジグ、自由に、いき、て……」
その言葉を最後にルナは途切れた。
「ルナ様ーーー!?」
目覚める。そこはいつものベッドの上だった。




