腐った身体
「あの女は?!あの女は誰、なの?」
その疑問は持ってはいけなかった。彼女の中身は醜悪で腐りきった何かだったから。そもそも、どうして牢屋にいるのか。それは王子から断罪され、無実の罪を背負わされて牢獄送りになってしまった。そして、明日は処刑の日である。どうやればここから逃れられるのか?そう考えるが何も浮かばなかった。そうだ!ジグ!ジグは?!この時間軸ではジグはどうなっているのだろう?
「誰か!誰かいないの?!ジグ!ジグは?!」
「うるせえな!」
看守がやって来る。看守はぶっきらぼうにそう吐き捨てながらやってくる。
「ジグは?ジグはどこ?!」
「あ?知るか!!」
「教えて!私の執事はどこ?!」
「そんなもん、お前が殺したじゃねーか!」
「へ?」
ころ、した……?覚えにない。一体どういうことなんだろう?!
「使用人を盾にして逃れようとして使用人は死んだって聞いたぜ?」
そうか、ここはあの後の時間なんだ。ジグが私を庇って……そして、王子に剣を振り下ろされて私は殺されたはずだ。
「何故、私は生きているの?私は王子に殺されたはずよ!」
「あ?ブルームて嬢ちゃんが王子を止めたって聞いたぜ?」
「ブルーム、いや、あの女が?どうして?」
「どうせ処刑されるのに王子の手を汚す必要ないだろって。」
「!」
ブルーム、いや、あの女は一体何者なのか?その謎を解かなければいけない気がした。色々考えたが、処刑の日になってしまう。
「結局、死ぬ運命なのね。」
処刑台に散る。否、タダでは死なない。いや、死ねない!ルナは野次馬の中へ目をやる。ブルームを探した。いた。ブルームはニタニタと笑っていた。そして、断頭台に刃が落ちてくる。そして彼女は呟いた。
「早く堕ちろ。」
そう言ったように聞こえた。死体はしばらく放置された。身体が腐りきった頃、それは土に埋められた。
「馬鹿な、ルナ。」
ブルームはそう言うと埋める前のルナの死体を蹴った。
「あら、そういえばもう口も聞けなかったわね。さようなら。」
そう言って死体を埋めた。
目が覚める。
「はっ!ここ、は?」
目が覚めるとそこは処刑される5年前だった。
「大丈夫ですか?!ルナ様?!」
「ルナ様!ご無事ですか?!」
この日は急に私が倒れた日である。犯人は分かっていた。ブルームである。
「ブルーム!貴方が私の紅茶に毒を?!」
取り巻きの1人がそう怒鳴った。
「え?!ち、違います!私は……」
「さっきブルーム以外の人間は私と一緒にいました!ブルーム以外考えられないわ!」
ああ、でも、これでは結局同じ運命に……。なら、この女を救うべきなのだろうか?
「……ほ、本当にブルームなのかしら?」
「ルナ様?」
取り巻き達は耳を疑った。
「ほ、ほら、ブルームとは限らないかもしれないわよ。」
「ですが!」
ルナは取り巻きの言葉を遮った。
「本当にブルームならこんな分かりやすいことをするとは思えないの。」
そう、本当に中身がブルームなら、ね。
「ルナ様!」
ブルームの目がかがやく。そして、ルナの手を取った。プスッ…。
「え?」
視界が暗転する。手には毒針が刺さっていた。
「ばーか。」
薄れゆく意識の中、そんなブルームの声だけが響いていた。




