隣国の王子
「ジグ、貴方を解雇します。」
「お嬢様?何を言って……」
「早く荷物をまとめなさい。」
「そんな!何か気に障ることでも?!一体どうして?!」
「黙りなさい。いいからここを去りなさい。」
「そんな!そんな!?どうして?!」
ジグは必死に懇願した。自分を解雇しないで欲しいと。
「だが、ルナの決意は固かった。」
ジグは仕方なく屋敷を去った。
「いいの。これでいいの。ジグには自由に生きてほしいもの……。」
ジグは表舞台を去った。
ルナは考える。今見で見てきた悪役令嬢物語を振り返る。助けてくれそうな人を必死に考えた。
「はぁ、やはり思い付かないわ。明日は仮面舞踏会……。」
とりあえず参加してみることにした。そこで誰かに会えると思ったからだ。
翌日、仮面舞踏会の会場へとたどり着いた。
「ジグ……は、いないのだったわね。」
そう言いながら会場へと入ってゆく。しばらく会場を彷徨いていると声をかけられた。
「お嬢さん。是非私と踊ってくれませんか?」
それは細身で黒い髪、そして、紫の瞳が美しい男性が声をかけてくれた。
「ええ、喜んで……。」
踊り始める。
「お嬢さんは踊るのが上手ですね。」
「いえ、貴方のエスコートが上手なのですよ。」
「奥の部屋へ……いきませんか?」
「!」
この状態で奥の部屋に行くと言うのはそういう意味である。
「お断りいたします。」
「……ガードが硬いのですね。流石は公爵令嬢。」
「!何故それを?」
「わかりますよ。だって、」
「……」
「貴方を救いにきたのですから。」
「は?」
「奥へ、来てください。」
「……。」
この男の正体が知りたくなった。ルナは誘われるままに奥の部屋へと向かう事にした。
「ここなら私の正体をあかせます。」
そう言って彼は仮面を取った。
「!」
「私は隣国、ザトー王国の第2王子ユーリ・ザトーです。」
「……へー。そう。」
「……あまり驚かないのですね。」
「ええ。貴方は私にどうしてほしくて?」
「……ふふ。話がはやいな。」
「是非私と結婚して頂きたい。」
「お断りよ。」
「?!何故?噂でききました。チャールズ様とは上手くいっていないそうだと。」
「嫌よ。貴方。胡散臭いもの。」
「ふんっ!なら無理やりにでも嫁にしてやろう。」
そう言ってベッドに押し倒される。
「こんな事で私を思い通りに操れるとでも?」
「強気でいれるのも今のうちだ!」
「下品な人ね。」
「黙って言うことを聞け。」
「貴方は私と結婚することで我が国を征服するための足がかりにしようとしているのでしょう?」
「分かっているなら黙って言う事を聞いて貰おうか。」
「お断りよ。」
ルナはユーリを蹴り飛ばす。
「貴方の思惑通りになんてならないわ!」
そう言ってその場を去った。
「……ルナ・グラディウス、か。面白い女だ。」
ルナは馬車へと戻り、屋敷へと帰った。ユーリ・ザトー。彼は主人公にとって、攻略キャラの1人である。彼は悪役令嬢ルナ・グラディウスにより虐められてきた主人公、つまりブルームと結婚することによってブルームを助ける。ユーリは出会ってすぐにブルームに惹かれたようだ。
「……そんなユーリが何故私に求婚など?」
本来ならブルームに恋するはずであるがチャールズルートのユーリはブルームを諦め、隣国へと帰ってゆくはずなのだ。
「なのに何故?私?」
確かに悪役令嬢の物語には隣国の王子に溺愛されて救われる話が多々ある。だが、自分にそんな都合のいい話が回ってくるだろうか?ルナは情報収集した。結果、ユーリはブルームに告白していた事を知った。しかし、ブルームはこう言ったらしい。
「私はチャールズ様一筋なのです。私よりもルナ・グラディウス様の方が美しい。彼女を口説いて見せてくれれば結婚を考えてもいいですわ。」
一体何を考えてそんなことを言ったのかわけが分からなかった。
「そうだ。あのブルームはブルームじゃないんだ。なら……本当に、誰なの?」




