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鍋でお腹一杯になり、自室で、小一時間ゲームをしようとしていたら、
兄が僕の部屋をウィスキーの入ったグラス片手に訪ねてきた。
そして、言う。
「宝くじは、買わないと当たらない。畑中くんも、その大賞賞金1000万円のコンテストに自作の小説をエントリーさせないと、大賞には、ならない。
当たり前だけどな…。
兄ちゃん、あんまり深くは知らないが、今や小説は紙だけでなくてネットを介しても読めて、それらにも、やはり印税は、もちろん発生するのだろう。
いや、おまえの話を聞いてたら、俺も畑中くんの書いたソレを読めるもんなら、読みたいな♪って、思ったりもしてな。今まで、それなりに書いてきて書き留めているって彼が言うなら、できるだけ短い小説なんかがあれば俺が読むにはベストかな♪」
兄は続ける。
「…ヒロ、おまえの会社、今度は北海道、沖縄にも支店を出すんだってな。」
そうであった。僕は、まだ平社員だったが、
全国規模の僕の勤める会社は、収益がよく、昨今、拡大の一途だった。
「おまえも、高卒で勤めて早20年…終身、勤めあげれば退職金2000万円は、かたいんじゃないか?
前に俺に話してくれたままなら、普段の給与も毎年ベースアップしているようで、今まで必ず年二回の賞与がある………バンバンじゃん!まぁ、その調子で♪」
兄は、そう言いニコリと笑って去っていった…。
明日は、仕事。
僕は、いつも通り、出社する。
それは、間違いない。
ふいに、いつかの彼女と、天気のいい日にデートしたことがフラッシュバックした。
そして、今日会った、畑中の顔も…。
ゲームの電源を入れようとしていたのを止めて、デスクにあった裏地が白い紙に、
僕は、さらさらと日本列島の絵を書いた。
何も見ずに、そこそこ描けた…。
そして、次は余白に文字を書き始める。
『日本は、北半球にあり、四季があります』
そこで、筆は止まった。
僕は、己で描いて書いた、それをしばし眺めていた…。