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#4 逃げられない

 


 ものすごい疲れた……

 人に長時間見られるというのは、こんなにも疲れるのか。普段はむしろ人から避けられるから知りもしなかった。

 授業をさぼりたい気分であったが、今日は既に他の授業でさぼっているし、今さぼると彼女に会いそうな気がする。そのため仕方なく授業に出ることにした。


 そのまま何事もなく時間は過ぎていった。


 全ての授業は終わり、俺は1人教室から出る。本当であれば帰りのホームルームがあるはずなのだが、出たところで成績に加担されるわけではないので出る必要がない。そのせいでクラスメイトからは白い目で見られるのだが、まぁ気にする必要はないだろう。


 下駄箱から靴を取り出し、他に誰もいない校庭から校門へと歩く。そのまま校門を抜けようとするといきなり手を掴まれた。


「捕まえた。」


 声がする方には、どう見ても目が笑っていない銀波 彩香がそこにいた。


「……まじか。」


 もはや嫌悪感ではなく、驚きの方が隠せなかった。

 授業もあったし、講演会があってから一時間以上は経っている。その間彼女はここで待っていたのか?どんな執着心だ。


「ふふふ、驚いているようだな。」

「待ち伏せされたら誰でも驚くと思いますけど?」


 彼女は「そうだろうな」と子供がいたずらを成功させたかのようにどや顔を決めている。別に褒めたわけではないのだが。


「…で何をするつもりですか?俺は断ったはずですけど。」

「私は負けず嫌いでな……君にプロ棋士になってもらいたいと思うが、それよりも負けたままなのは嫌なのだ。もう一度対局をしようと思っているのだが……逃げるのか?」


「挑発しても無駄ですよ。あなたがプロ棋士である以上、俺が負けるのは当たり前のことですし。」


 彼女が悪者であるかのように、俺は彼女を睨みつける。

 それでも彼女は物怖じしない。年下相手に睨まれても何も感じないのだろう。そもそも中学生が睨んだとこで世の中に、物怖じする人自体少ないとは思うが……

 だからこそ、彼女は諦める様子はない。むしろ対局しなければ、このまま校門の前にいることになるだろう。

 それは、それで嫌である。他の生徒たちが来れば彼女と音字所にいる俺に注目しないことはない、下手をすれば、後日事情を聴きに来る人たちもいるだろう。めんどくさいことこの上ない。

 これを計算してここにいたのか、それとも何も考えずここにいたのか……普通に考えれば、俺が他の生徒達よりも早く下校するとは、考えつかないだろう。けれど、それすらも予想している気がしてならない。彼女の罠にまたはまってしまっているような気がする。

 本当に、本当に仕方ないが、拒否することができない以上、彼女についていくしかないのだろう。


「…性格悪いって言われません?」

「あいにくそのようなことは言われたことはないな。策士とは言われたことはあるが。」


 彼女はニヤニヤとこちらを見つめてくる。

 はぁ、今日はついていない日なのだろう。俺は気分が乗らないまま彼女の少し後ろへとついていった。


「何故、そんなに後ろを歩くんだ?」

「あなたの横を歩いたら、周りからの視線が気になりますので……」


 人通りが少ないとはいえ、ちらほらと通行人とすれ違う。有名人である彼女の横を歩けば、自然とこちらにも視線が集まるのは間違いない。

 話すことすらないのに彼女の横を歩く必要もないと思い、彼女の後ろを歩いていたのだが、彼女はどうやらそれがお気に召さなかったらしい。顔はあまり変わらないが、眉が少し上がっている。


「そうか……ただ今の距離感だと話をしにくいうえに、ストーカーのようにも見えなくないぞ?」

「ストーカー?」

「あぁ、そうだ。」



 策士と言われた(自称)だけあって、頭の回転が速いらしい。自分の思い道理になるようにこちらの逃げ道を塞いでいく。

 本当にめんどくさいことこの上ない。

 俺は黙って彼女の横へとつく。

 彼女は満足そうな顔でこちらを見ると歩み始めた。


「君はどこで将棋を覚えたんだ?ルールだけ知っているといったが、それだけでは私に勝つことは不可能だぞ。」

「……」


 俺は彼女の問いには答えたくないと口を閉ざしたままであった。


「言いたくないか…まあいい。そんな事よりも、着いたぞ。」


 学校から数十分、登下校では使ったことのない道を歩き、目的地へと着いたらしい。将棋をするといったため、どこかの喫茶店やファミリーレストランですると思っていた。

 辺りを見渡しても、どこにもそれが見当たらない。周りは住宅用のマンションがずらりと並んでいただけである。


「何故ぼーっと立ち止まっている?他の住民にも迷惑なのだから早く入るぞ。」

「え、ちょっ!まって…」


 彼女は、俺の制止を振り切り、マンションへと連れ込んでいく。

 どうやら、俺は勘違いをしていたらしい。彼女は喫茶店やファミリーレストランなどは使う気はなかったらしい。

 ボス戦を1人で特攻させられる気持ちが、その時だけは理解できたような気がした。




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