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【短編小説】迷いの森の吸血鬼

Spoonユーザーの方は、こちらの台本をご自由にキャストやライブでご使用頂けます。報告も基本不要です。(個人的にCASTのシェアをいただいた方には、聞いた感想のコメントを残させていただきます。)


≪ライブ使用の場合≫

以下の紹介

作者名:夏凪ひまり ※必須


(余裕があれば↓)

作者プロフィール

関西在住、20代(女性)

日曜日の22時からたまひまらじお!というダブルDJの企画枠をしている。笑い足りてるぅ?


≪CAST使用の場合≫


※必須

タイトル欄

この作品のタイトル

ハッシュタグ欄

#夏凪ひまり


(できる人のみ↓)

サムネイル

タイトル、作者名を表記。

サムネイル作成希望者はTwitterのDMまでご連絡ください。

迷いの森の吸血鬼



Ⅰ.

『迷いの森には、近づいてはいけないよ……

この森には吸血鬼が棲んでいるんだ……

迷い込んだら最後、二度と

戻っては、こられないのだから……』


この村の北のはずれに、村の人々から迷いの森と呼ばれる薄暗い森があった。

一年中、鬱蒼と生い茂る針葉樹林に囲まれて、昼でも陽の光が差し込むことはほとんどない。

そのため、その森にいるだけで、誰もが森の胃袋に飲み込まれるような恐ろしい錯覚に襲われるという。


そんな森に少女が一人。

左手にはランタン右手には白い布がかかったバスケットを持っている。

恐る恐る進む彼女の表情は不安でいっぱいだ。


バサバサバサバサッ……!


突然、鳥達が一斉に飛び立った。


少女はその羽音に驚いて悲鳴を上げ、今にも泣き出してしまいそうだ。


それでも、彼女は病気の母親の薬の材料を探すため歩みを止める訳にはいかなかった。


村のお医者が最前を尽くしたが、もう、その薬しか母親が助かる見込みはなかった。

その薬の材料のひとつに『らんたん草』というものがある。見た目は鈴蘭に似ていて、花弁は四角いランタンのような形をしており、暗いところで見ると光るのだ。


あの珍しい花はこの森の奥にしか生えない。

大の男でさえも悲鳴を上げて逃げ出すような森を少女は目にいっぱい涙をためながら、一歩一歩足を進めていた。


その時、突然少女の背後から声がした。


「こんな森の奥で、一人でどうしたの?お嬢さん……。」


少女は驚き、持っていたランタンをガシャンっと落としてしまった。

そして、少女が恐る恐る振り返るとそこには黒ずくめの男が立っていた。少女は恐怖のあまり足がすくんで動けなくなってしまう。


「大丈夫?顔が真っ青だよ?」


誰かと問いかけたいが、絞り出した勇気は声になる事はなかった。


「ありゃ、怖がらせちゃったかな。ごめんね?

大丈夫、僕はこの森に住んでいるんだ。」


こんな森に好き好んで住んでいる人間がいるというのは初耳だ。少女は心細かったこともあり、男の柔らかい雰囲気に少しだけ緊張がとけた。

そして、緊張の緩みからその場にへたりこみ、泣き出してしまった。


「えぇ!? ……なんだか僕が悪いみたいじゃん。

泣かないでよ。」


男は困った顔をしながらも、少女を優しくなぐさめた。そして、少女が少し落ち着きを取り戻すと、改めて問いかけた。


「本当にどうして一人でこんな所にいるの?

この森は狼もでるし……吸血鬼も出るんだ……

知らないの?」


少女はその一言に一瞬身を固くしながらも、母親のためにらんたん草を探しに来たのだと伝えた。


「……そうなんだ。君、優しいね!

でも、残念。らんたん草はもう花が咲く時期じゃないんだ。」


それを聞いた少女はまた泣き出してしまいそうになった。それを察した男は、大慌てで取り繕った。


「あぁ、でも安心して!実は僕の家に今年咲いた花を乾燥させたものがあるんだ。それを君に少し分けてあげるよ!」


らんたん草は花を乾燥させて粉末にしたものを薬に使う。そのためもう乾燥されたものがあるというのは少女には大変ありがたいことだった。

ただ、少女には高価で貴重ならんたん草の代わりに男に対して差し出せるようなものを、なにも持っていなかった。

少女がその事を男に告げると、男はこう言った。


「タダじゃ受け取れないって……?

そうか。なら、僕のお願いを聞いてくれない?


……やった!いいの?ありがとう。

それじゃ、こっち来て!家まで案内するよ!

(これで、久々に……じゅるっ)」


男の最後の呟きは少女に届くことはなかった。







Ⅱ.

男に案内されたのは森の奥底にある古びたお城のような建物だった。

廃墟をそのまま住処にしたようで、天井には蜘蛛の巣がはられ、家具や調度品もボロボロで、床板も踏み間違えたら抜けてしまうのではと思うほどだ。


「ごめんね、少し散らかってるけど……


まぁ、案外悪くないもんだよ!

二階は綺麗だから二階に案内するね。


……はい、この部屋で待ってて。

今らんたん草を取ってきてあげる。」


そう言って男は部屋を後にする。

通された部屋は確かにエントランスの古さと比べると整えられて綺麗だった。

赤を基調とした部屋で、暖炉やお茶が出来るテーブルの他に天蓋のついた豪華なベッドが置いてある。見たことも無い豪華な部屋に、少女が惚けていると男が帰ってきた。


「はい、お待たせ。

これでしょう?らんたん草。」


それは間違いなく、らんたん草だった。医者に見せてもらった本に載っていた物と同じ物が目の前にあった。しかも、保存状態もかなり良い。


これを1本市場に売れば、村では一年暮らすのに十分すぎるお金になる。


「10本あれば良いかな?余ったら売ったりしても良いから。」


男のその言葉に少女は驚きを隠せない。


「良いの、良いの。

その代わり、僕のお願いちゃんと聞いてね!」


少女はこくこくと首を縦に振った。

男は少女にお茶を出して、自分も少女の前に座った。



「僕のお願いを言う前に、少しお茶でも飲みながらお話しない?

はい、ミントティーだよ。

僕が作ったんだ!良かったら飲んでみて。」


ミントの爽やかな香りのするお茶だった。どこか森の香りがするのはこの環境で育ったからだろうか。とてもほっとする香りのお茶だった。


それから、少女と男はたわいもない話をして、すっかり打ち解けていた。少女もお茶のおかげか

なんだか身体中がポカポカして心地よい思いでいた。


「お茶美味しかった?

……そっか、良かった!

……さてと、そろそろ僕のお願い聞いてもらおうかな。」


そう言いながら、男は後ろ手で部屋の扉の鍵をしめる。鍵を閉められた事に少女は戸惑いを覚える。



「ねぇ、お嬢さん。僕のお願い、ちゃんと聞いてくれるって言ったよね?」


コツコツと靴の音を立てながら男が近づいてくる。


「僕のお願い……ってのはさぁ…………

お嬢さんの血……少し分けて欲しいって事なんだけど……良いよね?」


耳元でささやかれ、恐怖を感じた少女は男を振り払うと、物陰へ隠れようと部屋の奥へと走って逃げる。


「そんなに怖がらないでよ。

みんな最初はそうなんだ。

でも、痛いのは一瞬で、僕に血を吸われている間は夢を見るように気持ち良いんだよ?」


逃げる少女を嘲笑うようにコツコツと高い靴の音が近づいてくる。


「もう、そんな所に隠れて。

そんなことして逃げれると思ってるの?

みぃーつけた……。悪い子だね。

約束を守れないなんて。

そんな悪い子にはお仕置が必要だよね。」


腕を掴まれ、ものすごい力で物陰から連れ出されると、強引にベッドの上に組み敷かれた。


「ねぇ、身体中が火照って熱いでしょう?

サフランの媚薬の効果がちゃんと出ているみたいだね。大丈夫、今に恐怖さえなくなるから。」


そう言いながら男は少女の身体に滑らせるように手をはわせる。


「血を吸われるのは初めてでしょう?

大丈夫。優しくしてあげるから、安心して……

(嗅ぐ)……君はいい匂いがするね。

美味しそうだ(噛み付く)」


少女の耳元で囁くようにそう言って男は少女の首筋に噛み付いた。

噛まれた瞬間、少女は今までに味わったこともない深い快楽を知ることになる。


「……じゅるっ、チュッ……んはっ……

君の血は甘くて美味しいね。ペロッチュッ。※口元を拭う

あぁあ、だらしない顔。そんなに良かったの?

なら、これから僕なしじゃ生きれない身体にしてあげるね。大好きだよ……君の血が。」


男の不気味な笑い声は、迷いの森に吸い込まれて消えていった。

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