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変人達の異世界創造記  作者: 黒井
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始めの出来事

トントンと机の上の仮想のキーボードを叩く音が虚しく、寂しくオフィスに響く、机は薄いジェルコーティングが施されている為、指が痛くなることもないが、昔の配列が最適化されていないカタカタと音のなるあの頃が懐かしく思えてくる。ふと顔をあげるとビルの隙間から夕日が差し込んできていた、陽の光が真っ赤に部屋全体を染め上げる。

半透明のディスプレイに光があたり画面から文字薄れて消えていく。


「趣味で作ったディスプレイもこういうとこには弱いなぁ」


と誰もいない部屋で一人ぼやきつつ、ひとときの幻想的な風景に見蕩れる、これはここにこの時間いたものにしか味わえない光景だろう。こういう景色を見ると残業も悪くないと思えてくる。


しかし、今はそんなことを言っている暇も時間もなかったと思い直す。このままではまたしても近日詐欺を働いてしまう。程よく伸ばすのは関心が高まり良いことだか、あまり伸ばしすぎるとユーザーの関心は段々と薄れていくものだ。しかし焦れば焦るほどミスは増える。私は、窓ガラスの遮光スイッチを押して半透明のディスプレイに再び映る膨大な文字列を直しながら溜め息をつく。


「はぁ、私も旅行にいきたかったなぁ」


ついつい、愚痴が漏れてしまう。この時期にはいつもなら家族と旅行に行く予定だったのだ。それなのにチームメンバーの一人が音信不通になってしまったことにより、チームリーダーの私が召集されたのだ。

そんなとき左腕に巻いていた通信デバイスが微かに振動した。着信である。

ディスプレイを見るのも面倒になり通話ボタンを押す。


「はい、理沙ですけ…」


指を耳に当て、そういいかけた瞬間


「先輩っ、助けてください!!」


後輩の耳を劈く(つんざく)悲鳴が、皮膚伝導ユニットを通して皮膚をを痙攣れさせるレベルで伝わってきた。旧式の電話で対応しなくて良かった、音割れでなにも聞こえない上に、鼓膜がやられて頭痛がするはめになっただろう。

後輩への静かな怒りを抑えつつ、何が起きたのか確認する。


「どうしたの?花音ちゃん電話口で叫んじゃダメでしょう?」


少し声を強めて叱ります。どうして、うちの部署は勉強はできるのに、アホの子が多いのでしょう、まともなのは部長と峰秋君というアシスタントの子だけです。そんなことを考えなから後輩の話に耳を傾ける。


「ごめんなさい。でも締切が迫ってるんです! 助けてください!!!」


この子は締切ギリギリ迄延ばす癖があります。恐らく今回は時間の調整を見誤ったのでしょう。これは自業自得です。


「無理です、私の方も切羽詰まってるんです。自分で請け負った仕事でしょう、自分でなんとかしてください」


いつもなら手伝ってあげてもよいのですが、こちらも余裕がないので断ります。


「そんなぁー」


悲壮な声を聞きつつ、心を鬼にして電話を切る、私はまた膨大な数字と文字とのにらめっこを始めました。


何時間位たっただろうか、ふと気がつくと日がすっかり落ちており外のビル郡にも明かりが点っている様子でした。ひとまず遮光スイッチを押し、窓の遮光を解除し、明かりを点けようとスイッチにてをかけた次の瞬間パソコンの、電源が突然プツリと切れまてしまいました。


「えっ、」


オフィスがぼんやりと闇に包まれ夜景が綺麗に輝いていますが、私の頭はバックアップをしていたか、ということで一杯でした。ひとまず電気のスイッチをと、押してみますがつきません。停電かと思いましたが他のビルは電気がついているので、このビルだけでの停電ということに他なりません。


「おかしいですね」


最近独り言が多いのはストレスが溜まりまくってる証拠ですね、いけません。というか本当におかしいです、このビルにはバックアップ用の電源があり、電気が止まったとしてもバッテリーと発電機により、直ぐに復旧する筈です。何故ならここには…

そう思っていたときまた微かに左腕に振動が伝わりました。

通話ボタンを押し、先程の教訓を経て、恐る恐る耳に指をあて、


「はい、理沙ですが」


今度はしっかりと言い切れました。


「先輩、電気が切れて真っ暗です、暗いのがダメなので管理課迄迎えに来てください。」


というがくがくに震える声で非常にてのかかる先程の後輩より電話がありました。

ブツッと、無言で電話を切ります、今は彼女に構っている暇などないのですから。その後何度か着信があったようですが、暫くすると静かになりました。


「一度警備室に電話してみましょう」


内線を手に取り警備実の番号を押してみましたが繋がりません。電気が切れているので当たり前ですね、失念していました。


こほん、と咳払いをしつつ私は警備室に向かうための準備を始めたのだった。

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