HELLO Different world
さわさわという草の音と共に爽やかな風が肌を撫でる。
目を開けるとそこは見渡す限りの草原と、都会では感じることのできない静けさと、澄みきった空気、そして遠くに見える大きな街、
そんな大草原のど真ん中に私は座っている。
「ここ、どこだろう……」
私の言葉に答えてくれる人は誰もいない。
私は草原に寝転がると徐に持っていた端末を開く、電波は届いていない、それもそのはず、ここは……
そんなことを考えていたせいで、近づいてくる気配に気がつくのが遅れた。
「がっ……」
脇腹に衝撃を感じ2mほど吹き飛ばされる。
「痛ったいな~」
私は脇腹を押さえつつ、私を吹き飛ばした物をみる、瓜坊を凶悪にしたような小さな猪がそこにいた、
「このやろう」
周りに人がいないことをいいことに悪態をつきつつ、今日の夕食は猪鍋に決定だ、そんなことを考えながら端末を操作しようとてを伸ばす
「えっ、」
端末がない、さっき吹き飛ばされたときに手放してしまったのか猪の下辺りに端末が落ちている。
「あ、あはは~」
私は、これまでしてきた中で、最速の回れ右をして町が見える方角に向かって全力でダッシュする。
猪は始め、ポカンとした表情をしていたが、直ぐに獲物に逃げられると悟ったのかこれまた追いかけてくる。
しかし、いくら猪とはいえ小型、元陸上部の私についてこれる筈がない。
と、思っていた時期が私にもありました、確かに、完全な状態なら町まで逃げれたと思うのですが、先程脇腹を負傷していました。これでは出せる筈の力だって出ません、20メートル位のところで追い付かれました。
「仕方無い、やるかぁ」
ポーチに入れていたカッターナイフで襲掛かってきた猪を迎え撃とうと試みます。
しかし、
パキンッ
と、音がすると共に刃がおれてしまいました。
毛皮が瓜坊とは思えないほど硬くカッター如きでは傷ひとつ負わせられず、猪は無傷で襲ってきます。
「ここまでか」
この至近距離では、避けることもできませんし、カッターもおれてしまいました。諦めと共に目を瞑り、痛いのは嫌だなぁと思いながら、最後の時を……
プギャァァァァ
「へ?」
本日何度目かわからない間抜けな声をあげつつ猪をみると足に何か刺さっています、よくよく見てみると、先程折れたカッターの刃を踏んでいます。
私は今出せる全速力で町に向かって逃げ出しながら、何故このようなことになっているのか必死に思い出していました。