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第8話 備えなくても無敵だし

 それはアスファルトに似ている造りで、どんな技術なのか、切断した大きめの石が敷いてあるような通りだった。


 街は朝から(にぎ)やかで、人々が豊かに暮らしている様子が伺える。

 あちらこちらで色んな香りがしていた。食料や植物など、俺の知らないものが沢山あった。


 街の西部に位置する冒険者ギルドに対し、反対の東部にある武器屋に俺たち三人は到着した。

 どうやらチャックの宿屋は街の南部に位置していたようだ。


 パッシブスキル【オートマッピング】の効果で、俺は街の全体像がほとんど把握出来た。

 距離は自分を中心に周囲2kmくらい、航空写真のような仕上がりだから驚いた。

 凄いことにイメージを変えると地形まで頭の中に浮かび上がる。

 まるで3Dの――


フレア「シン、さっきから何してるの? 考えごと?」


ラズベル「それは何のポーズかしら?」 


 こめかみに指を当て、目を(つむ)って立ち止まっていた俺は、美女二人に覗き込むように見つめられていた。

 スキルに、つい夢中になってしまった。


「あぁごめん、何でもないよ」


 俺が異世界(元いた世界)から来たことをまだ誰にも話していなかったが、女神ノルンや俺のスキルのことも、なるべく悟られないほうが良いと思っている。


 特にスキルは知られたら弱点に成りうる。

 仲間には、必要な時が来たら話そう。


フレア「見えたよ、あそこが武器屋ね」



 ――《カーツロンド街 東部 バーグリーの武器屋》


 薄暗い店内には、燦然(さんぜん)と輝く武器の数々が並んでいた。

 窓はあっても、日光が入らないようになっている。


 なるほど、武器の劣化を最小限に防いでいるのか。

 ――などと、分析はしてみたものの。


「あれはフランベルジェ!? ……バスタードソードにカッツバルゲルまであるのか!」


ラズベル「フランベルジェは炎系魔法使えば妖艶(ようえん)に燃える剣になるわよ」


「燃える剣!?」


???「うるせぇ客が来たな。武器見るのは初めてか? 小僧」


 カウンターの奥から、体格の良い男がのそっと現れた。

 まるでドワーフのような長い(ひげ)が目立っていた。


 武器なんてゲームや図鑑でしか見たことのなかった俺は、本物を前につい浮かれてしまった。

 ただ、ここにある武器って俺の世界にも実際存在したやつじゃないか?

 剣と魔法のファンタジーなのかこの世界は。


フレア「やっほーハインケル。買い物に来たよ」


ハインケル「おぉ、なんでぇフレアじゃねーか。ラズベルもいんのか? 珍しい組み合わせだな、お前ら知り合いだったのか」


ラズベル「ウフフ、お友達になったの」


フレア「仲間って言いなさいよ」


 どうやら顔なじみのようだ。

 店主《ハインケル=バーグリー》の武器屋は、街が造られた当初から店を構えている老舗(しにせ)だった。


ハインケル「小僧、名前は?」


 小僧? 強面(こわもて)だがここは(おく)さずいこう。


「シンだ。シン=タケガミ」


ハインケル「……いい(ツラ)構えじゃねぇか。お前さん、武器には詳しいのか?」


「いや、見るのは初めてだ」


 ハインケルはカウンターから出て来て俺に近づいた。

 上から下まで舐めるように見ているのは、俺を値踏みでもしてるのか?


ハインケル「……お前さんに武器は必要ねぇな」


ラズベル「えっ?」


「なぜだ?」


ハインケル「何となくわかるんだが、その細え腕はよ、見た目よりもっと恐ろしいもんを秘めてる。武器どころか、そのへんの石ころを持たせたってとんでもねぇ凶器になるぜ?」


「売ってくれないのか?」


ハインケル「必要になったら売ってやるよ。あまり言いたくねぇが……お前さんは()()()()()だ。おっと、悪い意味じゃねぇぞ?」


 言葉の真意は分からなかったが、何かを見抜かれたようで少し気味が悪い。

 仕方ない、武器がなくても身体能力値MAX(さいだい)だし大丈夫だろう。


 その後、王都へ向かう話をハインケルに伝えると、一度カウンターの奥に引っ込んで何かを持ってきた。


「これは……」


ハインケル「俺が造ったセンチネルダガーってんだ。危険を探知できる魔造短剣で、持ち主が悪意に(さら)されると(つか)(グリップ部分)に埋められた魔法石が光るようになってる。フレアに持たせてやる」


 青い宝玉にみえるそれは魔法石らしい。美しさもさることながら、武器としての性能も高そうだ。

 ハインケルは短剣を鞘に納め、剣帯ベルトと一緒にフレアに手渡すと、嬉しそうに笑った。


ハインケル「かっかっか! フレア、シンを手放すなよ? 油断してると、どこぞの魔女に()われちまうぞ」


 ラズベルが舌なめずりしている。俺はただ困惑していた。


フレア「はぁ!? どういう意味よ! と、とにかくそれいくらするの? 高かったら買えないよ」


ハインケル「ん~、金貨7枚ってところだが、金はいらねぇ。持っていきな」


フレア「高っ! えっ、いいの?」


ハインケル「……最近、妙な噂がある。北の魔岩城からモンスターの気配が消えただの、東の竜の渓谷(けいこく)で王が生まれただの。危険があるかもしれん。シン、ラズベル、フレアを守ってやってくれ」


ラズベル「ウフフ、面白い話ね」


「わかった、ありがとう。また来るよ、ハインケル」


フレア「ハインケル、ありがとね。大事にするよ」


ハインケル「おう、また来いよ!」


 こうして、結局1ゴールドも使わないまま武器屋を後にした。



 ――《カーツロンド街 中心部 噴水広場》


ラズベル「…………喰っちゃうゾ~」


「な、なんだ?」


 両手をゾンビにように前に突き出しながら、悪ふざけをしている。フレアの口が開いていた。


ラズベル「シンは、人を()きつける魅力があるのね。あのムキムキマッチョ頑固(がんこ)ジジイが人にお願いするところを初めて見たわ」


フレア「うーん、タダで(もら)っちゃって本当に良かったのかな?」


「きっと理由はあるだろうな。まぁ、いつか恩を返そう」 


フレア「そうねっ、そうしましょっ」


 背中の腰の位置にベルトで固定した短剣を、手を広げてクルクル回りながら嬉しそうに(なが)めるフレア。なんだかんだ似合っている。

 それでも俺は、今後なるべくフレアが闘わなくても良いように立ち回ろうと思った。


 ハインケルとの約束だし、な。


ラズベル「さ、着いたわ」


「……かなり大きい建物だな」


 ――冒険者ギルド。『探索(たんさく)討伐(とうばつ)収集(しゅうしゅう)』と書かれた看板が建物の入り口正面に掲げられている。


 次はいよいよ、俺のギルドライセンス取得だ。






挿絵(By みてみん)

◆イラスト:黎 叉武

武器屋の店主【ハインケル=バーグリー】《人物》

・カーツロンド街東部にある老舗武器屋の店主。男性。??歳。身長181cm、体重99kg。

・武器造りにも長ける2代目店主。魔力を通せる武器も造れる。だが販売するのは面倒くさいらしい。

・口は悪いが、武器に対しては熱い想いがある。フレアを自分の娘のように可愛がっている。シンに興味がある。

・ラズベル曰く、ムキムキマッチョ頑固ジジイ。


魔造短剣【センチネルダガー】《魔法武器》

・ATK(攻撃力)+17。MAG(魔法攻撃力)+20。

・柄に埋められた魔法石により、悪意から事前に危険を探知できる短剣。非常にオシャレ。


両手剣【フランベルジェ】《武器》

・ATK(攻撃力)+45。火炎の形をした波打つ両手剣。

・通常の切り傷に比べ、その形状から傷口が裂けるため、被害が大きくなる。怖すぎ。


長剣【バスタードソード】《武器》

・ATK(攻撃力)+28。鋭い刃と切っ先を持つ長剣。

・片手半剣という呼び名もある、長剣と両手剣の中間の特徴を持つ。扱いやすい。


長剣【カッツバルゲル】《武器》

・ATK(攻撃力)+33。重量のある斬撃に適した長剣。

・鍔がS字型になっており、腰のベルトに引っ掛けて携帯できる。喧嘩用の荒くれもの。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最新話まで改めて読ませていただきました!ラズベルさん、好きです笑 フレアの魅力も更に引き出されていて、可愛いです! 後書きの設定の説明も細かくて、しかも、ユーモアもあって考え抜かれているこ…
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