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第33話 虹のロッドと竜人の謎

 ――弾かれて地面に横になったマテリアルソードを回収し、俺は竜ごと崩れた岸壁を見つめた。


 崩れた岩の奥深くで静かになったレッドドラゴン。あのタフな肉体でも、さすがに気絶以上のダメージを負ったのだろう。


アイザック「シン、怪我はありませんか?」


 トメリーと共に駆け寄ったアイザックは、回復魔法でも唱えるつもりなのか、先端の宝石が虹色に輝くロッドを握っていた。


「あぁ、なんとかノーダメージだ。ありがとう」


トメリー「あれで無傷なんだ……」


 少し震えていたトメリーがゆっくりと近づいた。そしてポフッと俺の胸に頭を付け、両手を添えた。虚ろな目をしている。


トメリー「ちょっと、怖かった。最初は竜だーって私も舞い上がったけどさ。あまりにも規格外な戦闘たたかいで……私たちみんな死んじゃうかと思った」


 そうか――いや、普通はそういう気持ちになるよな。もしかしたらトメリーは何度か死を覚悟したのかもしれない。俺とアイザックは互いに目を合わせると、微笑んだ。


「怖かったよな。でも大丈夫だ、俺がいる――」


アイザック「えぇ、そしてわたくしもおります――」


 安心させる言葉をその後も掛け続けた。一瞬泣きそうな顔をしていたトメリーも、段々と平静を取り戻す。


 俺たちは会話をしながら、渓谷の道らしき道をゆっくりと進んだ。


アイザック「――それにしても、シン。一切の援護も無くレッドドラゴンを討伐するとはいただけませんよ」


 そういえば、俺が言ったんだ。援護してくれって。


「悪かった。初めてのドラゴンを相手にして、だいぶ気持ちが高揚こうようしていたよ」


トメリー「でもあの状況で、どう援護すれば良かったんだろうね」


 アイザックの膝下まで伸びる美しい髪を勝手に触って癒されているトメリー。


「想像以上に堅い皮膚? 鱗? だったからなぁ……」


 すると、アイザックは自身の腰――背中の位置に備えていたロッドを再び手に取った。


アイザック「本当はこうするつもりでした。補助魔法で防御幕を生み出せるんですよ」


 スペルマスターの詠唱は、ほんの一瞬で完成する。ほぼ無詠唱に近い技術だった。


 どうやら『レインボーロッド』という名前の、高級そうな魔導士の棒で、俺たちの頭上に円を描く。


アイザック「物理と魔法耐久のある防御幕です――『トゥインクルコート』!」


 キラキラと俺たち3人の身体が、頭から下に向けて光に包まれる。アイザックほどの強力な魔力があれば、こんな薄いモヤモヤした青色の膜で、敵の攻撃が防げるのか。


トメリー「ほわあぁぁキラキラしてる! 初めて見るぞ、この魔法」


 ここで偉ぶったり調子に乗らない辺りが、美男子度を高めているね。


アイザック「いつでも簡単に使えるので便利な魔法ですよ。ただ、竜のブレスも防げるとは思うのですが、視覚的には敵の攻撃が直撃することになるので不安かと思いまして――」



 ビキビキビキッッ――



 岸壁と岸壁の間に流れる川に、一瞬で氷の橋が掛けられた。こういう使い方もあるのか。


アイザック「――こちらの『アイスウォール』にしました」


 オシャレ美男子、アイザック。何をやらせても一流だな。一家に『いちアイザック』欲しいところだ。


 対岸の方が今いる道よりも大きな岩が少なく、歩きやすそうだった。

 俺たちは分厚い氷の橋を渡ると、しばらくまた歩き続けた。


「それにしても、さっきから警戒しているんだが敵の気配を全く感じないんだ。どう思う?」


 うーん、と口元に手を当てる美男子と幼女。


トメリー「……おそらく入り口のレッドドラゴンを門番にして、テリトリーへの侵入を一任していた」


アイザック「……そして、それを指示した竜人種『ドラゴニュート』。彼らには人間のように意思を持っているので、そもそも敵意が無い可能性があります。住処すみかはきっとこの先に続いているんでしょうね」


 なるほどね。頷いて納得した。さっきから俺の脳内地図自動生成スキル『オートマッピング』が、なぜかジャミングのように何かしらの力で妨害されていて上手く視えないんだ。


 未開の地? と、いうことで良いんだろうか。

 色々とここは謎が多い。トラップ……罠こそ無いものの、渓谷の入り口では守護する火竜がいたし。

 きっとこの先に、渓谷全体に妨害電波的なものを流している竜人の集落でもあるんだろう。



 ――途中、休憩を挟みながら少しずつ進んでいくと、俺はようやく何者かの気配を掴んだ。


「ふたりとも、前方の大岩の陰に何かいる。人型……たぶん竜人だ」


トメリー「実は、竜人をこの眼で見るのは初めてなのよね」


アイザック「わたくしもです」


 緊張感。張り詰めた空気だが、やはり敵意はない。



 ――すると、なんと、相手からその姿を見せた。



???「――初めまして、人の子よ」


「こっ、言葉をしゃべったぁ?」






虹色に輝く棒【レインボーロッド】《武器》

・ATK+52。MAG+41。先端が虹色に輝く魔導士用の高級ロッド。

・攻守共に優れ、その強度から近接打撃にも適している。魔力を安定させる働きにより、魔法の効果範囲をピンポイントに指定できるメリットもある。アイザックのお気に入りで、背中の腰の位置に装備している。


全耐性防御幕【トゥインクルコート】《魔法》

・物理防御と魔法防御耐性のある膜を張る補助魔法。その防御性能は、使用者のINT(知力)に依存する。

・対象者の身体全体に青いモヤモヤが発生する。レッドドラゴンのブレスも防げるらしい。ただし、アイザックほどの魔力があることが前提だが。実践ではこの性能を誰も試したくはないだろう。

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