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第24話 証明の弾丸

 あれから更に冒険者は増えた。

 聞けば、各国を代表する人物も数多く来ているらしい。

 今回の聖王による訓示(くんじ)は、人間種にとって未来を定める世界会議と言っても過言ではないようだ。


 俺は大広間の後方に位置取り、ラズベルとフレアと共に居た。

 アイザックとウェンディは立場上、壇上の両際で警護するように俺たちの方を向いて構えていた。


 ヒタ……ヒタ……


 大広間にいた全員が一斉に(ひざ)をつくのを見て、俺もそれに合わせる。

 壇上(だんじょう)豪華(ごうか)な王座の前に、聖王トメリー=オリガミアが姿を現した。

 白銀のドレスを身に(まと)い、頭上には王冠。その歩き方一つとっても美しい。俺はその姿を目で追っていた。


「――って、女!? しかも若い……子供か?」


 宝石が装飾された金の(おうぎ)を手にした女王、もとい、聖王が発言する。

 

トメリー「一同、(おもて)を上げよ」


 その声は静まり返る大広間の隅々(すみずみ)まで行き渡る。なんて()んだ声だ。

 立ち上がる際に、それぞれの武器や防具が()れる音がした。


 腕を大きく広げ、その扇が(きら)めく。


トメリー「――名も無き冒険者たちよ、(なげ)くことはない。今日、この日をもって、我ら人間種は異形(いぎょう)種と対等となる。東の『竜人』と『海獣』、西の『亜人』と『精霊』、北の『魔人』と『不死』、南の『半魔』と『巨人』。先の予言は真実となり、混沌(こんとん)の世を平和へと導くであろう……」


 そう言い放つと聖王は一歩前へ進み出た。


トメリー「天啓(てんけい)(みちび)かれし使者(ししゃ)。名をシンと申すそうだ。(すで)に、この大広間に居ると耳にした。ぜひ我らの前にその姿を見せて欲しい。シンよ、前へ――」


 名指しされた。こんな大勢の前で正体がバラされるというのも(しゃく)だな。

 そうも言っていられない状況に加え、俺の眼を見ていたアイザックが軽く(うなず)いたのを確認して、壇上へと向かった。


 冒険者たちは(ざわ)めいていた。

 いかにも、俺の見た目が一般人そのもので、ひ弱そうだったからだろう。俺がそっち側だったら同じことを思うし、同情するよ。


 若い、普通っぽい、あんなの、村人……皆好き勝手言っているな。自重(じちょう)しろよ。

 詳しい作法(さほう)は知らないが、俺は聖王の正面まで移動し、(ひざまず)いた。


「聖王様、お初お目に掛かります。シン=タケガミと申します。先日、異世界よりこの地に参りました。以後お見知りおきをお願い申し上げます」


トメリー「…………」


 凄く恥ずかしいし、頼むから何か言ってくれ。


トメリー「っぷ」


 ぷ?


トメリー「アッハハハハ! えーうっそぉ信じらんない、本当に貴方が天啓の使者? 超カワイイんだけどーっ!!」


 盛大に馬鹿にされた。今の俺は世界一の恥さらしだろう。


 しかし、俺は()()()()()()()()()()()、怒りより先に行動に出た。


 (こうべ)()れていたが立ち上がり、聖王をじっと見る。

 あれっ、良く見ると本当に若いなこの娘。


トメリー「アハハハ!! ごっ、ごめんね笑っちゃって!! でも本当に本物?」


 俺は両手を大きく広げて言った。


「申し訳ありません。無礼かもしれませんが、実力で本物であると証明しましょう」


 トメリーは頭にはてなマークを付けて、(いぶか)しげに俺を見ていた。



 ――その時。後方より俺を目掛けて、強力な鋭い炎と雷の魔法が二か所より同時に放たれた。


 一瞬の出来事に、アイザックも驚いた表情をしていたが、俺は大丈夫と眼で(うった)える。



 バシュッッ!!



 魔力操作の応用で、後ろを振り返ることなく相殺(そうさい)した。

 本当に俺はよく背後を狙われるなぁ。

 だが、(おどろ)いていたのは魔法を放った張本人だろう。


 所謂(いわゆる)、反国家勢力とでもう言うべきか。無防備な俺を殺すチャンスだったのかもしれない。

 ただ、殺意の()れ具合がお粗末(そまつ)だったな。

 悪いが、俺の引き立て役としてそのまま捕まってくれ。


 素早い反応を示したのはアイザックとウェンディの二人。


アイザック「――シン!」


 それだけで理解する。俺は相槌(あいづち)を打って、聖王を守護する役目を担った。


ウェンディ「へっ、逃がしゃしないよ!!」


 大扉の方へ逃げ出す二人の犯人をその場で特定し、同時にこちらの二人が超高速で捕らえた。

 流石はダブルギルドマスター。格が違うね。


 呆気(あっけ)に取られていたのは聖王含め他全員だ。

 俺は周囲に悪意がないことを確認すると、考えを(まと)めた。


 聖王に一礼すると、皆の方へ振り返り、横に一歩ずれた。お(えら)いさんが大勢いるようだし、聖王の顔に尻を向けるわけにはいかない。


 一連の騒動(そうどう)で皆が皆落ち着きを無くしていた。

 少し威圧感を出してみようか。眼に力を込めて、大きく息を吸い、言い放つ。


「――俺を見ろ」


 空気が張り付いた。


「正直この世界のことは良く分からない。誰が敵で、誰が味方なのかもな。つまり、お前らが俺の味方だとは限らない。ただ、天啓(てんけい)の予言通りに進むかどうかはお前ら次第だ。文句(もんく)のある奴は今すぐ前に出ろ。俺が相手をしてやる」


 人間の先頭に立って導く存在が、()められてよい訳がない。

 上を立てられない人間は――なんて言ったらパワハラだが、リーダーとしての威厳(いげん)は保ちたい。



 大広間は恐ろしいくらいに、静まり返っていた。






第16代聖王【トメリー=オリガミア】《人物》

・王都オリガミアの中心人物である第16代聖王。女性。15歳。身長155cm。体重??kg。

・先祖代々、予言の能力を宿した聖なる王の系譜。王都を含む近隣諸国の総統であり、強い権力を保有する。

・聖王としての発言は型にはまっているが、実に子供らしい女の子でもある。シンに好意を抱いている。

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