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第1話 全ての始まりはマンションから

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


※新たなキャラクターや道具等が登場した際は、後書きに詳細を記載します。

――小・中・高と名門校を出た俺は、この春ついに、大学偏差値トップの『新東京大学』に入学する。


 受験戦争なんてものに苦労したことのない人生。

この世で一番の金持ちになるというシンプルかつ壮大な夢が、この俺、武上真(タケガミマコト)にはあった。


 今から大学近くのマンションに入居となるが、一人暮らしも不安は一切ない。

 管理人より電子キーを預かると、さっそく家のドアの前に立ち、思いふける。


 いよいよ新生活がスタートするんだ。

 俺は期待と喜びに満ち(あふ)れていた。


 電子キーでドアのロックを解除し、部屋へ一歩足を踏み入れた刹那(せつな)。強烈な違和感があった。


 ……(まぶ)しい。


 電気がついているだけとは思えないくらい、眩しい光に包まれた空間に自分がいる。


!?


 辺り一面、光に包まれた空間。

 まるで雲の上にいるかのような、そんな不思議なことが起きていた。


「俺の部屋は……?」


 振り返ってもそこにドアは無く、俺は生まれて初めて理解出来ない事象(じしょう)遭遇(そうぐう)している。


「いや、流石にこれはまずい」


 気を失って夢の世界か、はたまた突発的な死が訪れた?


 だが意識はある……はず。


 まずは状況を把握することが先決か。

 冷静になり、そして必死に脳をフル回転させていた。話を整理しよう。


 俺は明日から大学に通うためにマンションへ引っ越し、管理人から電子キーを受け取って、部屋の前まで来た。そこでドアのロックを解――


???「よくぞ参られました!」


「ーーじょおぉッ!?」


???「ひぇっ!?」


 翼が生えているタイプの、一般的によくイメージされている女神の姿をした存在に向かい、俺は驚き、つい叫んでしまった。


???「何とも元気なヒトの子よ、わたしは運命を(つかさど)る女神ノルン。(なんじ)の志が、過去類を見ないほどに最高潮に達したため、わたしは現れたのです」


 大きな翼をはためかせ、美しき天使は自らを、運命を司る女神と、そう呼んだ。


ノルン「汝、『シン=タケガミ』よ」


「あ、マコトです。音読みだとシンですけど」


ノルン「あれえぇっ!? どこで間違えたのかしら。『シン=タケガミ』と記録してあるのですが……」


「えぇ……」


 女神は軽く咳払(せきばら)いをし、話を続けた。


ノルン「汝の壮大な夢を叶えるために、神の力を授けに来ました」


 どうにも理解し難い状況だが、この不思議な感覚と、女神ノルンの言葉には妙な説得力がある。

 今も現実なんだと。


 さて、どうなることやら。


「そうですか、それは嬉しいです。具体的に何をするんですか?」


 翼で身体を包み込み、少し頬を赤らめて女神ノルンはこう言った。


ノルン「嬉しい……ですね。記録しました」


 はい?


ノルン「『シン=タケガミ』の夢は『この世で一番のお金持ちになること』で間違いありませんか?」


「名前が違うという点以外は(おおむ)ね合っていますが」


ノルン「この世というのは世界列、時空列という観点からすると『ガデュリナ界アースライト歴2000年』が一番ゴールド(お金)に(あふ)れている時期になりまして……」


「まてまてまて!!!」


 女神ノルンの口は止まらなかった。


ノルン「そこで汝は一番のお金持ちになるという夢を果たすことが可能となります」


「待って」


ノルン「何かご不満でも?」


 もう女神が相手でも黙ってはいられなかった。


「俺は人間の世界で夢を叶えたいんだよ」


ノルン「ご安心ください、ガデュリナ界も今や人間種がメインとなって世界を回していますから」


 そうじゃない、そうじゃないが、こいつは何を言ってるんだ?


ノルン「その世界では『シン=タケガミ』という魂のもとに作られた肉体に今の精神を宿し、今後数多(あまた)の経験を経て更なる能力スキルを開花させることになります。ファーストスキル『ゴールドラッシュ』。汝に最初に与えられる新たな覚醒(かくせい)の力です」


「違う、逆だ! 俺に力を与えてくれるのなら今俺が生きている世界でーー」


ノルン「逆……と。記録しました」


 何かを記録されてしまったようだ。


ノルン「全ての準備が整いました。次に目覚める時、素晴らしき世界が広がるでしょう」


「全部キャンセルで。嫌な予感しかしないから俺は帰らせてもらうぞ」


 ニコッと笑みを浮かべ、その大きな翼は羽ばたき、女神ノルンは上昇し始めた。


ノルン「嬉しいと感じた記録は絶対であり、運命の書き換えは正常に行われました! 汝、『シン=タケガミ』よ、新たな世界において汝の夢が叶うその時まで、()()()()()は運命の旅路を守護(まも)っています――」


 俺は必死に手を伸ばし叫んだ。

 そして光に包まれた空間は、俺自身をも光で包み込んだ。


「ダメえええぇぇぇぇ!!!!!!」





 ――《ガデュリナ界 アースライト歴 2000年》





 小鳥が(さえず)る音が聞こえる。

 多分近くには川も流れている。


 音が、聴こえるーー


「……は?」


 気が付けば、俺は見知らぬ環境の中で、地面に寝ていた。

 そうか、これはアレだ。


 異世界転移ってやつだ。






挿絵(By みてみん)

◆イラスト:黎 叉武

主人公【武上(タケガミ) (マコト)】《人物》

・頭脳明晰な18歳。夢は『この世で一番の金持ちになる』こと。

・大学進学前日に異世界に飛ばされる。名前を《シン=タケガミ》と記録される。

・身長175cm。体重60kg。視力は裸眼で両目1.0。

・身体能力はごく普通。健康で、過去に重い病気はナシ。

・今後、レベルアップにより新たなスキルを獲得できる可能性がある。

・頭の回転が速く、冷静に状況を把握することに長ける。


運命を司る女神【ノルン】《人物》

・大きな翼と美しき容姿をした運命を司る女神。

・マコトに力を授けて異世界に送り、《シン=タケガミ》の名で新たな運命を辿らせる。

・ノルンのほかにも神々が存在する模様。

・存在そのものが謎に包まれており、当然のことながら年齢もスリーサイズも不詳。


マンションの守護者【管理人】《人物》

・新東京大学付近にそびえ立つ学生向けマンションの守護者。主は別に存在するらしい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 序盤からテンポ良く進みます。設定が秀逸で、数多ある異世界転生の中でも異彩を放っています。 語り口も軽妙洒脱、読者を飽きさせません。 ステキな作品をありがとうございます♪ [気になる点] …
2020/04/15 22:54 退会済み
管理
[良い点] 勘違い愉悦(意地悪顔) この勘違いがどういった効果を発揮していくのか、実に楽しみです。
2020/04/05 18:16 退会済み
管理
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