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俺は、ラグナという家系に生まれ、育った。ラグナ一族は言うなれば戦闘一族。戦争があれば依頼を受けて参戦し、活躍した分の報酬をもらって生きてきた。その額はもちろん莫大である。
俺には、兄が二人、姉が一人おり、末っ子だ。ただ、兄姉に甘やかされたことなどなく、幼少の頃から厳しかった。もちろん両親も厳しく、父親は婿養子としてラグナ一族に入ってきているのだが、正に武人という言葉がピッタリと当てはまる猛者だ。そして母もまた武人であった。戦争で敵同士として出会い、戦って恋に落ちたらしい。子ども達には厳しいが、当人同士はいまだラブラブで甘々である。鍛えているからかまだ見た目も若い為、周りから見たらそんなでもないのだが、子ども目線だときついものがある。
そんな一族で生まれた俺達だが、この度、各国に専属で仕えることになった。これはラグナ家として世界から戦争を無くさないための潜入ということで、期間は5年という短い期間ではあるが、各国をたきつけて戦争を起こそうという形である。
潜入とはいうものの、各国には武者修行という名目で兄弟が他の国に入っていることは言うことはなく、ラグナ家の子孫が国に入り、要人をしてくれるということだ。
血筋なのか、俺達兄弟は強い。世界には職業があり、それによって人生が変えられると言っても過言ではない。戦士や魔法使い、商人など、さまざまな職業があり、転職も出来る。しかし、生まれつき特別な職業を持っている人が1万~10万人に1人生まれるとされる。その特別な職業、EXジョブをラグナ家の者は全員が所持している。
ジョブは一般的な職業であるCランク、その上位の職業がBランク、最上級がAランクとなっており、Bランクでやっと全人口の5パーセント、Aランクで0.1パーセントの者が辿り着けるとされている。職業は世界各地にある職業盤というもので調べることができ、転職もまたそれで出来ることになっている。俺達家族は全員のEXジョブの名前は知っているものの、各自が違う能力の為、詳細までは知らない。もちろん教えることもしない。ただ、そんな俺達EXジョブ持ちのラグナ一族の1人が国に複数年所属してくれるともなれば、歓迎することはあったとしても断ることはないし、それなりの立場にしないとラグナ家からどういう目で見られるかもわからない。計画が破綻することはほとんど考えられないのだ。
「で、私達はどの国に派遣されるんですか?」
そう聞いたのが長男、ルシオ・ラグナ。ルシオはEXジョブ ホーリーロードを所持している。16歳。
「まぁまぁルシオ、最後までお父様の話は聞いてから質問はしましょう。」
長女 セラン・ラグナ。EXジョブ ウインドエンペラーを所持。15歳。
「・・・。」
黙って聞いている次男、ビオル・ラグナ。EXジョブ ダークネスを所持。14歳。
そして末っ子である俺、ドラグ・ラグナ。EXジョブ ザ・オール。12歳だ。
「さて、ルシオが言った派遣される国だが、どうやって決めてもいいのだが、話し合ったところで決まらんだろう。よって、くじで決めよう。」
くじで決めるとかマジかよ。親父殿、おかしくなったんじゃないか。という空気が感じ取れた。俺もそう思ったが、話し合ったところで決まらないのも確かだ。
「さて、異論は無いようなので、この箱から紙を一枚ずつ引いてくれ。順番は・・・年齢順でいいか。」
まず始めにルシオが引く。ルシオはその場で開く。
「ルシオは、軍隊と規律のアサ帝国だな。よし、ではルシオよ!アサ帝国に任命する!使命を果たすように。」
「畏まりましたお父様。」
続いてセランが引く。
「セランは、精霊と共存している国、ヒルルクだな。では、セラン、ヒルルクに任命する!」
「はい!承りました!」
黙ったまま、ビオルが引く。
「ビオルは、エダだな。ビオルよ、農業と商売の国エダに任命する!」
「・・・おっす。」
相変わらずの無口だな。そんなんで派遣とか大丈夫なのだろうか。
「さて、最後はドラグだが、引かなくてもよい。ではドラグよ。亜人の国、オウカに任命する!」
「承った親父殿。ただ、せっかくだから紙はもらっていくぞ。」
俺は箱から紙を取り出し、ポケットに入れる。
「まったくドラグは生意気だな。俺の若いころにそっくりだ。」
親父殿は大笑いする。ルシオは口元を引きつらせながらも笑っている素振りを見せるが、完全に笑っていないことがわかる。生意気な俺が気に入らないんだろう。
セランは我関せずといった感じで、ビオルは何考えているのかわからなかった。
「では出発は2日後だ。準備を整えるように。」
そうして俺達は解散した。俺は部屋に戻る。