少年少女の戦い
不明者の頭に一閃。
気力で切れ味を鋭くした片刃の剣が食い込み、2本足で立っている不明者の頭の半分程を切り落とした。そしてドサッ、と砂ぼこりを立てて地面に倒れ、動かなくなった。
「ふぅ」
茶色でボサボサとした髪の少年、高住光輝は周りに生きている不明者が居ないことを確認して、大きくため息をついた。
その周りには、およそ20匹もの不明者の残骸が散らばっていた。
基本、不明者の姿は人に近い。身長はおよそ170センチ前後で未知の素材で出来ているのか、この世界の装甲よりも硬い。気力で強化でもしない限り、大抵の通常の武器では装甲を破ることは出来ない。
光輝は首に引っ掛けていた無線用のマイク付きのヘッドホンを頭に付けた。
「こちら高住。拠点南部の不明者、約20匹の処理を完了しました。これから、南東部にいる都我戦闘員を回収し、拠点に戻ります」
マイクに向かって言うとすぐに、了解、直ちに帰還せよ、と声が聞こえた。
その声が聞こえなくなると同時に、拠点の南東部に向かって走り出した。
「うわっ……」
光輝は南東部の光景を見て絶句した。
そこには、光輝の担当した南部をはるかに上回る数の不明者の残骸が見るも無残に散らばっていた。
普通、拠点の近くに出る一日の不明者の数はおよそ200匹。それを8人8方位で区切って、大体25匹ずつくらいを1人1人で倒す。しかし、ここにある残骸は50匹を超えているように見える。
それの一角の残骸が山になっている所の頂上には、こちらに背を向けて座りながら短剣をぽーんぽーん、とお手玉のように投げて暇潰しをしている少女がいた。
「おい、燈」
呼びかけると、燈と呼ばれた少女が最後に上へと投げ飛ばした短剣をキャッチし、ゆっくりと振り向いた。彼女、都我燈の髪は肩よりも下まで伸ばしている、いわゆるロングヘアと言うやつで、利発そうな顔だちと誰にでも突っかかって行きそうな雰囲気が特徴的な少女だ。
「光輝、どうしたの? 君の担当の場所はここじゃないよ?」
「終わったから来たんだよ!」
燈の言葉にイラッとし、少しばかり大きな声で言い返す。
彼女が光輝の事をからかうのは、もはや日常茶飯事である。そんな燈に光輝は、こっちに着いてから思っていた事を聞く。
「で、何だよこの不明者の数は。いくら何でも多すぎねぇか?」
「え? 東側担当の利乃と一緒に二方位分をやっただけだけど」
そう言いながら、燈はある方向を指さした。
その方向にはポツンと1人、狙撃銃を手入れしている少女がいた。