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九十六話 いや、暗黒香辛料狙えよ

 暗黒香辛料が現れた。

 極太抱き枕が現れた。

 ツバーシャが参戦した。



 とにもかくにもツバーシャを追いかけなければ。


 ツバーシャの方が速いから、暗黒香辛料と接触する前に追い付くのは無理だ。


 それでも行かねばなるまい。


 俺は意を決して、飛び立てそうな切り立ったところに向かって駆け出した。


「あっ! 主さま待つのじゃ!」


「止めてくれるなシノよ。ツバーシャを放ってはおけないんだ」


「ご主人さま違うのです! 上を見るのです!」


 それどころじゃないんだが……。

 一体なんだっていうのだろう。

 でも、二人はちょっと必死だ。


 俺は仕方なく足を止めて上を見た。


「ンガー!」


 ズズーン……!


 あっぶな!

 地球外生命体さんも投入するんかい。

 足を止めなければ下敷きになってたわ。

 もう少し落とすところを考えておくれよ城なし。


 しかし、こうなると事態は尚更収集不可能な方向に進んでいく。


 だって、地球外生命体さんは止められないもん。

 話通じないし。


「ンガー!」


 地球外生命体さんも人類の味方をしてくれるようだ。

 暗黒香辛料の方へと駆けていった。


 飛び散ったヌメネメが、地に積もった香辛料に触れてきな粉餅みたいになっとる。


 暴れられて嬉しそうだな。


 でも、暗黒香辛料は空をぱたぱた舞っている。


 地球外生命体さんじゃあどうにもならないと思うんだ。


「ンガー!?」


 あっ、その事実に気づいたみたいだ。


 何度かその場でピョンピョン跳ねると、届かないことを悟ってしょぼしょぼとこっちに戻ってきた。


 君は何がしたいのかね。


「がっかりしてるのです」


「暴れるのが好きじゃかのう」


「まさか代わりに相手になれとは言わんよな?」


「ンガ!」


 あっ、ビシッと俺に指さして“それだっ!”って顔してる。


 そんな暇ないからな!

 すぐにでもツバーシャを追いかけたいんだ。

 ここはあれだな。

 ちょっと知恵をさずけてやろう。


「今はそれどころじゃないからね。でも、相手をしてあげないとよけいメチャクチャになっちゃいそうだから……」


「ンガー?」


 わかってそうな、わかってなさそうな顔だな。

 ピンクのヌメヌメなのに可愛らしく首なんてかしげおってからに。


 石ころ一つ拾って地球外生命体さんに見せた。


「いいか? 俺が投げても……。ほら、たいして飛ばない。でも、お前なら届くだろう?」


「ンガー!」


「うんうん。嬉しそうだな。頑張ってたくさん蛾を撃ち落とすんだぞ?」


 いいこと聞いたと言わんばかりに、嬉々として大岩を掴むと俺に向かって振りかぶった。


「いや、そんなに大きな岩じゃなくても。って、なんでこっちむいて……。おいまてやめろ! お前の相手は俺じゃ──」


 ヒュゴ……!

 ドゴーン!


 おうっ。

 背後にあった大岩が消し飛んだわ。


「ンガンガ!」


「避けんなってのか? 流石にあれを受けたら骨に響きそうだから嫌だわ」


「ンガー!」


 こりゃ、言っても聞かなそうだな。

 まあいいか。


「何故にそんな俺をぶっ飛ばしたいのかわからんが、そういうつもりならいいだろう。しっかり狙えよ?」


「ンガー!」


 ドゴーン!


 怖いなあこれ。

 とりあえずツバーシャ追いかけよ。

 相手してやるとは言ってないしね。


 俺は地球外生命体さんに背を向けると空に飛んだ。


「ンガー!」


 ヒュゴ……。


 なかなかいい狙いをしているけど当たらんよ。

 でも、それじゃあツマラナイだろう。

 だから──。


 ツバーシャの元にはすぐに向かわず、暗黒香辛料の密度の高い方へと進路をとった。


 恐らくこの戦いのカギになるのは極太抱き枕だ。

 一撃で三割削れるのはデカい。

 だから、まとわりついたヤツを倒してやるのが正解なんだろうけど、ウチの子たち自由すぎる。

 それなら──。


 ヒュゴ……!


 せめて、これ以上悪い方向に向かわないように誘導する。


 パパパパパァン!


 どこまで高度を上げても飛んでくる大きな岩は、俺のワキを通りすぎ、暗黒香辛料の群れを粉々にしていく。


 こうすれば、その内俺に岩を当てるより暗黒香辛料に当てる方が楽しくなるだろうたぶん。


 さて、ツバーシャはどこかなと。

 んー?

 見当たらないな。

 火を吹いていると思うから見つからないなんて事はないハズなんだがな。


「ルガアアアアア!」


 むっ、上か。

 うわあ。

 体当たりで戦ってる。


 空中戦で炎は使いにくいか。


 どっちにしろ、空中戦向きじゃあないが、こうするしかないわな。


 心配して来てみたものの、よくよく考えたら、たた数が多くてデカいだけの蛾だし、ツバーシャがどうにかなってしまうなんて事はないか。


 なんて考えているとツバーシャの動きが鈍くなっているのに気が付いた。


 バラバラにした暗黒香辛料が思うように振り落とせずに、積もっていくのか。


 空を飛んでいると、常に正面から空気にぶつかる。

 だから、蛾が張りついて取れなくなるんだ。

 ツバーシャに手とかないし……。


 なんてツバーシャの心配をしていると、後ろから飛んでくる岩に変化があった。


 ん?

 なんだ?

 でっかい岩じゃなくて小さいのがたくさん?

 いかん、弾道が見切れない。


 ズビシ!


「痛てっ! ケツに当たった!」


 地球外生命体さんめ。

 単発じゃなくて、散弾にしてきよった。

 ヒビでも入れて投げているのか?

 ものすごく痛いぞ!

 俺じゃなきゃ貫通して死んでるレベルだろ。


 実際、羽に散弾受けた暗黒香辛料が、飛べなくなってぼとぼとと落ちていく。


 数が多い分こっちの方が数は減るか……。

 痛いけど我慢しよ。

 当たっても微動だにしなければ、デカいのに戻るだろ。


 それでも、痛いのは嫌なので速度を上げて避けまくってやった。

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