八十九話 世紀の大食い対決
タコがアルティメットコダベケスになった。
とにかく何とかしてみる事にした。
ツバーシャ開放してみた。
ツバーシャは飛竜の姿に戻るとアルティメットコダベケスと対峙した。
アルティメットコダベケスはツバーシャよりずっと大きく、まるでツバーシャが小さい生き物であるかのようにも見える。
「ルガアアアアアア!」
しかし、果敢にも火を吹き、タコ足を焼き払っていく。
そして──。
「もっちゃ、もっちゃ……」
食べ始めた。
いや、食べんの!?
焼き払っていくだけで良くないかそこは!
悠長過ぎるだろう。
あっ、タコ足が!
ビュビュビュビュビュン!
ツバーシャに容赦なく降り注ぐ、無数のタコ足。
しかし、ツバーシャには全く動じず、タコを喰らい続ける。
こいつはすげーや!
巨大な割りに攻撃力は高くないのか。
どんなにビシバシと体を打たれても平気みたいだ。
やがて、喰われる事を諦めたのか、スケベダコは女の子を集める作業に戻った。
それで良いのかよ……。
しかし、アルティメットコダベケスは巨大でとてもツバーシャの腹に収まるようには見えない。
現にしばらくすると──。
「ルグググァーア……」
嫌そうな顔して嫌そうな声をあげた。
何だか食べるのが嫌になって来たみたいだ。
食い飽きたのか……。
何か味付けが無いと食えんわな。
どうしたものか。
塩でも振ってみるか。
多分無いよりはましだろう。
「待ってろツバーシャ。今塩を振って食べやすくしてやるからな!」
ピタッ。
ん?
塩の壺を取り出したら、アルティメットスケベダコが止まったぞ?
弱点なのか?
撒いてみるか。
「そーら、塩だぞー」
ばらぱらぱら……。
パーン!
「げふっ。タコ足ビンタ!?」
頬に良いやつ一発入ったわ。
何だよ。
じゃあ、何で固まってるんだよ。
じっと転がった塩の壺見てつついてるし……。
「もしかして、壺が欲しいのか?」
「フゴフゴ!」
あっ、欲しいんだ。
と言うか言葉通じるんかい……。
そう言えば呼び出すときも人の言葉だったし、アルティメットに変態したのもまた人の言葉だったわ。
じゃあ、あっげなーい。
そう言って壺を割ったらどうなっちゃうんだろう?
とても興味がそそられるが、これ以上変態されても困るな。
「ほら、壺ならいっぱいあげるから、女の子を放しておうちに帰っておくれ」
「フゴフゴ!」
アルティメットスケベダコさんは納得してくれた。
「ルガアア!?」
しかし、ツバーシャは納得がいかないようだ。
ここまでの戦いは何だったんだって話だもんね。
しょうがないね。
でも許してね。
俺はウエストポーチの中からありったけの壺を取り出した。
「フゴフゴ!」
アルティメットスケベダコさんは嬉しそうな声をあげると立ち上がった。
そして──。
ぼとぼとぼとぼとぼと……。
多分口だと思われるところから子ダコを次々と吐き出した。
わぁ子ダコさん。
違った。
子だくさん。
どんどん子ダコが壺の中に入っていく。
なるほど、子ダコの為に壺が欲しかったんだね。
アルティメットスケベダコさんは、子ダコが入った壺を抱えると去っていった。
「ふぅ……。何とかなって良かった」
「ちっとも良くないわ。物足りない……」
「もっと、タコ食べたかったのか?」
「まさか。あんまり美味しくなかったわ……」
うむ。
デカイタコは美味しくないって聞いたことあるわ。
「やっぱりご主人さまは凄いのです!」
「そうか? これと言って凄い事した覚えが全く無いんだが」
「過程はどうあれ、あんなけったいなモノをどうにかしたんだから、誇って良いのじゃ」
それはどうだろう。
まあ、解決したし、もうどうでも良いか。
しかし、酷い有り様だな。
色々ぶっ壊れちゃってるし、この国の人もボロボロだ。
しんと、静まり返っちゃってるし。
沈黙は苦手だ。
何か一芸披露しなければならない気がしてくる。
何か無いかな……。
そんな風に記憶の引き出しをまさぐっていると、背後から声が上がった。
「えっ、英雄だあー!」
「世界は救われた!」
「祭り上げろー!」
え?
何を言って……。
というかお前らコダベケスを呼び出した張本人じゃないか!
はっはーん。
なるほどな!
俺を英雄だと捲し立てることによって、責任問題をうやむやにしようって魂胆か!
ちっさいし、セコいし、汚いやつらだなあ……。
「「「おー! 英雄だあー!」」」
しかし、事は彼らの思惑どおりに運び、お祭りムードに包まれた。
そして、メエが俺たちのところにやってきた。
「凄いんだね。コダベケスをおっぱらちゃうなんて」
「いやいやいや。壺差し出しただけだよ!?」
「でも凄いよ。あと、その……」
ん?
何だ?
もじもじして何か言いにくいことがあるのか?
はっ!
もしや、これは告白とかいうやつだろうか。
しかし、困った。
既に俺には三人の子供がいる。
どうしよう!?
「あれを呼び出したお馬鹿な男たちの事は内緒にしてほしいの。この国の王さまにバレたら活け作りにされちゃうかも」
違った!
勘違いハズカシイ……。
もう、活け作りにでもなんでもされてしまえば良いんじゃ無いだろうか?
しかし、メエが真摯に訴え掛けてきたので、男たちの事は忘れることにした。




