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八十七話 決闘相手は歌と踊りでやってくる

 バイナップル食べた。

 舌がぴりぴりした。

 そして決闘が始まった。



 あっという間に話は明後日の方へと飛んでいき、決闘する話でまとまってしまった。


「じゃあ誰がやるよ? 俺は嫁のヒトミンが心配するからパスな」

「俺もチョンコちゃんがいるから無理だわ」

「いや、お前らのそれ、ペットのヒトデとチョウチンアンコウだろうが!」


 何だコイツらは。

 やる気無さすぎるだろう。

 もう決闘なんてしないで帰っちゃおうかな。

 でもこの牢、鉄より固い何かで出来ててびくともせん。


「もっちゃ、もっちゃ」


「ん? ラビは何を食べているんだい?」


「昆布が天井にいっぱいあるのです」


 んー?

 天井昆布なのか。

 意味あるのかこの牢は……。

 と言うか、この国の建物に乗っている黒いのは全部昆布かよ!


 まあ、海底だし仕方ないのかも知らんな。

 どうでもいいわ。

 ほんとに帰っちゃおうかなあ。


「ごめんね。何か男の人たちなんか暑苦しくなっちゃって」


「あ、いや、気にしないでおくれ」


「そう? よかったあ」


 火に火薬をくべおってからに。

 とは言えない俺小市民。

 でも何だかこの笑顔を見ると許せてしまう。


 そして、帰るだなんて言いにくい。


 まだバイナップル譲ってもらう話もしていないし、もう少し様子を見てみるか。


「羽の人たちは誰が出るの? こんなんでも一応は仲間だから、飛竜でミンチとかは許して欲しいな」


「ああ、もちろん。こっちは──」


「まてい!」

「決闘相手はこちらで指名させて頂く!」

「飛竜とか無理だし!」


 正直だ。

 でもそうすると──。


「まさか、お前ら。非力なラビを指名する気か!?」


「「「ちっちゃい女の子にそんな事出来るわけがない!」」」


 じゃあ、俺か。

 いや、もとよりそのつもりだったけども。

 まあ、いいか。


 何だかんだで悪いやつらじゃ無さそうだなあ。


「で、俺は誰と決闘すればいいんだ?」


「いや、考えたんだけど痛いのやだし」

「自分の手を汚す必要もないかなって」

「だから呼んじゃう」


 うわあ。


「なら仕方がないのです!」


「いやラビよ。こやつらかなり卑劣な事を言っておるのじゃ」


「最低ね……」


 ラビのおつむは今日も元気にゆるゆるだ。


 しかし、呼ぶって誰を?


 何て疑問に思っていると男たちが踊り始めた。


「長いお手てで掴んじゃダメダメ!」

「いやんいやんっ」

「おいでましー。おいでましー」


 恥ずかしっ!

 何だその儀式。

 いい大人がやっちゃダメなやつだよ。


「ええー!? アレを呼んじゃうの!?」


 何さ。

 何を呼んじゃってるのさ?


「風が……」


 ラビまで意味深な言葉を発してるし。

 風がどうしたって言うんだ。

 そうだ見てみよう【風見鶏】。


「見える……!」


 んー。

 確かに風がよどんでる。

 と言うか海底に風なんて……。


 ああ、あそこか。

 中心部に穴が開いていて、風が入って来てる。

 海底に風や空気が存在するのはこの為か。


 ドゥルン!


 ん?

 穴からソフトな感じの奴が出てきたぞ?


「焦らしちゃイヤイヤ早く来て!」

「来て来てお願い早く来て!」

「おいでませー。おいでませー」


 相変わらずな歌と踊りに惹かれるようにこっちに向かってくる。


 ドゥルンドゥルンドゥルンドゥルン……。


 気持ち悪い動き方だな。

 スライムか?

 赤黒い透明感の無いスライムとか嫌だなあ。

 スライムと言えばかつての仲間を思い出す。

 元気にやっているだろうか。


 いや、でも足が生えてるしこいつは──。


「でっかいタコなのです!」


「うう。巨大なタコは醜悪感が半端ないのじゃ……」


「残念ね。アレは私が相手をしたかったわ……」


 どうぞどうぞ。

 俺は相手にしたくない。

 鳥肌たっちゃうこんなん。


「さあ、お前の相手はこのお方だ!」

「存分に恐怖するのだ!」

「俺たちの嫉妬と妬みをとくと味わうが良い!」


 虎の威を借る狸。

 あ、いや狐だったか?

 随分とでかい態度だな。

 しかも、嫉妬と妬みでこんな事してたんかい。


「ところで、もう歌と踊りはいいのか? 制御するのに続けなくちゃならいとかありそうだけど」


「そんなものは必要ない」

「と言うか存在しない」

「ただひたすら暴れまわるのみ」


 ん?

 と言うことは……。


「決闘どころじゃ無いんじゃないか? 敵味方関係なく暴れるんだろう?」


「「「考えてなかった!」」」


 アホかー。

 どうするんだよ。

 こんなん俺の手に有り余る何てもんじゃ無いんだが……。


「フゴォ……!」


 飛竜になったツバーシャよりもでかいタコは、低い唸り声をあげながら破壊活動を開始した。


 ズズーン……!


「ちょーっとこれは無理そうだから、帰っちゃおうかな」


「待て早まるな! 無責任だぞ!」

「決闘を放棄とか恥ずかしくてダメなんだぞ!」

「お前がどうにかしなきゃ、俺たち袋叩きにされるんだぞ!」


 無責任なのは俺じゃありませんがな。


 でも、俺が何とかしなきゃならんのだろうなあ。


 えー。

 やだなあー。

 こんなん、どないせいと言いますん。

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