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八十話 次はきな粉を作ろう

 やっばりラビのほっぺたはプニプニもちもちだった。

 お餅ち食べたくなった。

 だから片栗粉を作った。



 そんな訳できな粉作ることにした。


 材料は知ってる。

 きな粉は大豆で出来てる。

 ただし、作り方は知らない。


 でも、大豆を粉にするだけできな粉になる気がする。


 大豆はそのまま食べるとお腹ユルくなるからな。

 火は通すんだろう多分。


「ラビは火の準備をしておくれ」


「分かったのです!」


「火なら私に任せなさい……」


「だ、ダメなのです! これはラビの役目なのです! とっちゃダメなのです!」


 とっちゃダメて。

 まあ、ツバーシャだと黒いきな粉になりそうだしな。


 でも、黒いきな粉もありそうな気がする。

 緑色のきな粉もあるしな。


 多分ゴマを混ぜれば黒く──。


 いや、白っぽいきな粉と黒いゴマだと灰色になりそうだ。

 ゴマの比率を上げれば黒いきな粉になりそうだけど、それは最早きな粉じゃない。


 ふむ。

 それにしてもゴマか。


 収穫に恐ろしく手間が掛かりそうだから育てたくないな。


「火の準備が出来たのです!」


「スタイリッシュ着火!」


「何でカッコいいポーズをキメて着火するのよ……」


 何でだろ。

 やらなきゃならん気がするのだ。


「よーし。そしたら、ゆっくり時間を掛けて火を通すぞ。絶対に焦がすんじゃあないぞ?」


「頑張るのです!」


「じれったいわね……」


 ただじっくりと火を通すだけだが、これがどれだけ難しいことか。


 生前ホットケーキを良く作って食べたのだが、火を通すのが面倒臭くてな。

 ついつい、強火でやってしまうことが多かった。


 すると、外はまっ黒カリカリ。

 中は生焼けトロトロ。

 大変お腹にやさしくない。


 きな粉もホットケーキも似たようなもんだろう。


 しかし、今は俺一人食う訳じゃないから、しっかりと火を通さねば。


「やさしく転がしてたげてね」


「良い香りがしてきたわ……」


「食べちゃダメなのです食べちゃダメなのです食べちゃダメなのです……」


 なんだこれ。

 必死に耐えているのがかわいいぞ。

 大豆を手で掴んで口に詰め込んでやりたくなる。


「ちょっと位なら食べてもいいからね?」


「ひとつぶ食べたら絶対止まらなくなるのです!」


「カリッ……。言うほど後を引くようなモノじゃないわ……」


「あー! ツバーシャちゃん食べたのです! ズルいのです!」


「いや、食べなよラビも。火が通ったのか確かめるための味見は大切だよ」


 味見を怠ると大抵失敗する。

 お料理失敗の極意は『横着、アレンジ、味見しない』だ。

 俺はたいてい横着でやらかす。


「むむむむ。味見なら仕方がないのです!」


「そうそう、仕方ない仕方ない。あっ、直接手でお豆取ると熱いよ。ツバーシャはちょっと特殊だから大丈夫だけどラビは火傷しちゃう」


「フン。失礼ね。私もラビのように優しくして欲しいわ……」


 えー。

 ラビよりずっと気を使ってるんだけどなあ。

 特にメンタル面で。


 と言うか、フンフンするの久しぶりに見た。

 かなり元気になってるのかな?

 最近はお手て繋がなくてもお外出られるし。


「んー。美味しいのです! 中まで火も通ってるのです!」


「じゃあ、粉にしてきな粉にしよう」


「また石で削るのかしら……?」


 ひとつぶひとつぶ軽石で?

 ちょっと手間過ぎる。

 あと、お手ても削れちゃいそう。


「棒で潰して粉にしよう……。この棒が良さそうかな。はい。やってごらん」


「えいっ。えいっ……。お豆が逃げるのです!」


「貸してごらんなさい……。ほら、砕けたわよ……」


 おお?

 何だかツバーシャはお姉ちゃんみたいだな。

 最近雰囲気も落ち着いてきたし。


 しかし、きな粉酷いな。

 粗びきも良いところだ。


「これじゃあ、きな粉じゃなくてジャイアントクラッシュビーンズって感じだな」


「つ、強そうなのです!」


「カッコいいわね……」


 そうだね。

 でもきな粉に求められるのは強さでもカッコよさでも無い。


 儚さと繊細さなんだ。


 潰して砕くだけじゃあ、粉にならない。

 すり鉢があればなあ。


「主さまー!」


「おや、シノ。これは良いところに来た。すり鉢を作って欲しい」


「忍者はすり鉢なんぞ、作らんのじゃー!」


 ああ、うん。

 ごめんよ。

 言ってみただけなんだ。

 だから、ぽかぽかと叩かないでおくれ。


「でも、すり鉢ならあるのじゃ。ほれっ」


「あるの!?」


「忍者には結構重宝されているのじゃ。薬を作ったり、携行食を作ったりのう」


 流石忍者。

 でも、薬と携行食を同じ鉢で作るのはどうなんだろう。


 まあ良いか。

 これできな粉も作れるな。

 しかし──。


「シノは何しに来たんだ?」


「頼まれていたものが全部完成したから見てみて欲しいのじゃ」


「もう出来たの!?」


「うむ。主さまの事だから他にも何か作れと言いそうな気はしたので、早めに仕上げたのじゃ」


 なるほど。

 優秀な忍者だ。

 一家に一人は必要だな。


「じゃあ、見に行ってみようかな。ラビとツバーシャは、このすり鉢を使ってきな粉を作っといておくれ」


 この段階まで来て失敗はないと思ったので、後を二人に任せて俺はシノの作った道具を見に向かった。

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