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六十一話  クルミを割るのです

 野性味溢れる不良に絡まれた。

 芋食わせた。

 なんとゾウさんの牙パンツを手に入れた。



 翌朝。


 チュンチュン?

 ひよひよ?


 ドゴッ!


 チチチ……。

 ぴぴぴび……。


「なっ、何だ!? また流れ星か!?」


「むー? にゃんか凄い音がして目が覚めたのじゃ」


 いや、もうちょっと驚こうぜシノ。

 後ろ足で頭カイカイしただけって冷静すぎるだろう。

 しかも、また寝ようとするし。


「寝ないでくれよシノ。俺だって眠い。だから一緒に見に行こう」


「むー? ラビを連れていけば良いではにゃいか……。すぅ……」


「それが、見当たらないんだよ」


「むー……」


 渋るシノを抱き抱えマイハウスを出た。


 ドガッ!


 まただ。

 平和な城なしでは、してはいけない音がする。

 この暴力的な破壊音は──。


「まさか、地球外生命体さんを城なしが解き放ったのか!?」


「いや、そんにゃ大層なことではなかろう。ほれ、見るのじゃ」


 そう言ってシノは、かまどの方を指差した。


 猫の姿で器用な事をするのな。

 人間の姿に慣れすぎているんじゃあないか?

 人のとる姿勢は猫の体によろしくないぞ。


 いや、それどころじゃ無かったな。

 どれどれ。

 見てみようか。


 おや、こんな早くから珍しい。

 ラビとツバーシャが、一緒にいる。


「一体何をしているんだい?」


「あっ! ご主人さま。お早うなのです!」


「ラビは石をぶつけてクルミを割りたいそうよ。おかげで起こされたわ」


 なるほど。

 騒音の原因はこれか。

 これはマイハウスには良く響く。


 ドガッ。

 ビュン!


 あっ。

 割れずに飛んでった。


 ドゴッ!

 ビビュン!


 また飛んでった。


「にゃーん!」


 シノもクルミに向かって飛んでった。


 猫って、素早く動くもの好きよな。

 飛んでったクルミをちょいちょいして遊んでる。


「割れないな」


「ぬぬぬう。逃げちゃダメなのです!」


「ふふっ。威嚇したら怯むかしら……」


「クルミは怯まないよ!?」


 ドガッ!

 ビュン!


「にゃーん!」


 シノは嬉しそうだな。

 でも、やっぱりその方法は危ないから別の方法を考えよう。

 足に石を叩きつけたら大変だ。


「ツバーシャなら指先ひとつで砕けたりしないのかい?」


「しないわよ。人の姿じゃ人並みよ。ほら触ってみなさい……」


「ほう。柔らかいお手てだな」


「ちょ、ちょっと……」


 あれ?

 お手て引っ込めちゃった。

 恥ずかしかったのか?


「ジィーッ……」


「ん、ラビ。どうしたんだい?」


「ご主人さまの為にクルミを割って持っていこうと思ったのです。なのにご主人さまはツバーシャちゃんと仲良くしていてムラムラするのです」


 うん。

 モヤモヤの間違いだね。

 ムラムラしてはいけない。


 しかし、この破壊行為は俺の為だったのか。

 かわいい事をしてくれるじゃないか。


「悪かったよラビ。一緒に割ろう。俺も手伝うからさ」


「むむむむ。ひとりでやらなきゃダメな気がするのです」


「そっかあ、残念だなあ。手取り足取り一緒になってやるから、ご主人さまはラビの独りじめ状態になるんだけどなあー」


「ひ、独り占め……。ゴクリっ……」


 うむ。

 やはり、ラビのおつむはゆるい。

 さあ、一緒にクルミを割ってみようか。


「ラビ。俺の手に手を添えて力を貸しておくれ。二人でクルミを割るんだ」


「頑張るのです!」


 石を叩きつけるんじゃなくて、石で殴り付ければ良い。

 これならムダな力が逃げていかないから割れるハズだ。


「いくぞラビ」


「分かったのです!」


「「えいっ!」」


 ズガッ!

 ビュン!


「にゃーん!」


 またしてもシノのオモチャになってしまった。

 このクルミ堅すぎませんかね。

 ぬーん、困った。


「主さま。にゃあとしてはとても楽しくて嬉しいのじゃが、クルミは煎った方が割りやすくなった気がするのじゃ」


「あっ、クルミって、火を通して良いんだっけか」


 生前の、それもだいぶ前の話だからなあ。

 下処理した記憶はあるんだけど、どうやって食ったか覚えてないわ。


「じゃあ、火の準備をするのです」


「うん。頼むよ」


 そんなわけで火を通してみた。


「良いニオイがしてきたのです」


「うん。美味しそうだ」


(おーい、朝から何か美味しそうなの作ってるぞー)

(いってみよー)

(こうばしいの!)


 おお。

 ニオイにつられてぷちラビもやってきた。

 うんうん。

 一緒に食べようね。


「はー。簡単に割れたのです」


「さあ、みんなお食べ」


(((わーい)))


 こらこら、そんな競いあって持ってかなくてもたくさんあるから。

 えっ?

 折角割って渡してあげたのに割れてないの持ってくの?

 どうやら、割るところからやってみたいらしい。

 小さな体で一個ずつ持ってどこかに飛んでいった。


「ふむ、悪くないないのじゃ」


「美味しいけど、少なすぎて食べた気がしないわ……」


「油分たっぷりだから食べすぎると後がきついぞ」


 それなりに好評のようだ。

 おやつの種類が増えて良かったね。


「懐かしい味なのです!」


「そういや、ラビはこれを良く食べてたんだっけか。その時はどうやって割っていたんだい?」


「割れるまで石を叩きつけていたのです」


 えー?

 なにその苦行。

 しかも、割れたら飛び散ってしまいそうな気がする。


 でも、勝つためには何をすれば良いかという問いに、勝つまで諦めなければ良いと返すようなかっこよさがないこともない。


「さあて、朝飯はこれで良いだろう。今日も張り切って城なしをきれいにしようか」


 ひどい目覚めだったけれど、朝から楽しめた。


 その内城なしでもクルミがたくさんできるだろう。


 そしたらもっと楽しめる。


 だから、早く城なしを綺麗にしてあげよう。

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