五十九話 サバンナに咲くキレイなお花
城なしがヌルヌル、ヌメヌメになってた。
妖精さんがオアシスに帰れなくなった。
城なしにあらたな仲間が増えた。
数日後。
城なしの清掃作業は順調だ。
でも、終わりが見えない。
ヌルヌル、ヌメヌメ散らし過ぎ。
「城なしはお城直さないのかなあ」
「穴が空いたままなのです」
城なしはそう言う気分じゃないらしい。
ショックだったのかな?
でもぷちラビ(妖精さん)には甘く、城なしの中にある水源に浮島浮かべて寝床を作ってあげていたりする。
城なしは割りと元気なのか?
ひよひよひよ。
ひよこも元気になった。
おっかない思いをしたからハゲるんじゃないかと心配したけどふわっふわだ。
「ねぇ。空は飛ばないの……?」
「ん。飛びたいの──。いや、今から行こうかなって考えなくも無かったところだ」
「何を言ってるの……?」
いや、“飛びたいのか?”って聞こうとしたけど、そしたら“別に……”で、終わりそうだったから!
飛びたいんだよね?
でも言えないんだろう?
よーく、分かるぜ。
「毎日、掃除ばかりじゃ滅入るからな。身支度しておいで」
「別に用意なんてないわ……」
「そうかい。おーい! ラビ、シノ。地上の様子を見に行くよー!」
ぷちラビはお留守番だ。
と言うか水場から出たがらない。
何でも強く引かれる運命にあるそうな。
「はー。砂の海を抜けて緑が一杯なのです!」
「そうだなあ。何か動物もいっぱいいる」
大草原だ。
しかし、これ降りて大丈夫何だろうか?
そりゃあ、この世界は異世界だ魔物がいる。
でも、そもそも自然には元々凶悪な動物がいるものだ。
「パォーン……」
ドドドド……。
「グルル……! ガオーン!」
わぁ。
スゲーいっぱい動物がいるー。
しかも、こいつらお手とかしないガチな奴らだぜ。
弱肉強食のレストランにようこそってか。
キリンやシマウマでさえ、人間を片足でぶちのめせちゃう。
「こりゃあ、降りるのは無理か? ラビとか振り返ったら頭かじられてそうだ」
「ひええええ!」
この気候と生態なら、採れそうな野菜に心当たりがあるんだが、これじゃあな。
「ヌモオオァ……!」
ドッド、ドッド、ドッド……。
少し空中散歩を楽しんだら帰るかな。
シノに手信号でその旨伝えた。
だが。
「おシノちゃんは地上に降りるように言ってるのです!」
「正気か? とてもそんな事可能だと思えないんだが」
何か策があるのか?
煙だまでいぶすとか。
「ルググググ……。ルガアアアアア!!」
違った。
ツバーシャが特大級の咆哮で大草原を威嚇した。
「ひええええ!」
「今まで本気じゃなかったのかよ! うわっ。俺も体が震えてる」
こえー、こえー。
そういや、ツバーシャは食物連鎖の上の方にいましたね!
凶悪な肉食獣がツバーシャの真下から波紋の様に散ってる。
そりゃ、あんなん聞いたら逃げるしかないわな。
いや、心弱そうなちっこい動物はひっくり返って“もう好きにして”してるけども。
自称天空の支配者だっけか。
言うだけの事はある。
何だかツバーシャは満足げだ。
そりゃあ、きもちいいだろうよ。
ともかく、これで地上に降りられるようになった。
降りて新しい作物を手に入れよう。
「おっ、あったあった。これが欲しかったんだよ。あって良かった」
そして、着地してそんなにたたないうちに作物を一つ見つけた。
「黄色いお花なのです!」
「ほぉ、綺麗な花じゃのう」
「食べ物以外の植物にも興味あったのね……」
失敬な。
これも食べられる植物だ。
モミジをでっかくした葉っぱに、黄色い花。
脇からいっぱい星を伸ばしたような実がなってる。
「これは、オクラだよ。ネバネバしてて美味しい」
「ネバネバ? 納豆みたいなもんかのう」
「納豆に入れても美味しい」
暑さに強く、乾燥にも強い。
しかもたくさんできるから元を取りやすい。
生前そんな甘い考えで植えたら、アブラムシに集られて半壊。
てんとう虫が奮闘するも、アリとアブラムシが共闘して、てんとう虫を撃退。
そして、牛乳かければアブラムシ倒せると、聞いて、かけてみたところ、かけすぎてオクラを枯らし尽くし、元を取るどころでは無くなった。
まあ、城なしならアブラムシも集らないだろう。
もって帰ろう。
「後は薪と石をたくさん集めて行こうか」
「あんまり木が生えていないのです」
「薪はツバーシャが作った炭が大量に残っているからいらないなじゃ」
「そう。残念ね。何かを燃やしたいところだったのだけど……」
何やらまた物騒な事をのたまっている気もするが、それなら石だけもって帰ろうか。
石もあんまり落ちてないけど、城なしに元気だして欲しいし頑張って集めよう。
石を探しつつも、他に作物がないかと探したけれど見付からなかった。
いや、実はモロヘイヤも見付けたんだけど、子供や動物を飼っているご家庭には向かない。
だから、それはそっと見なかったことにした。




