五十七話 飛竜と地球外生命体さんの大乱闘
流れ星にお願いした。
流れ星が城なしに落っこちた。
なんと地球外生命体さんが現れた。
でも、よくよく考えたら妖精さんも地球外生命体さんの気がする。
しかし、それはどうでもいいことだ。
「ンガアアア!」
「ルガアアアアア!」
ズズーン……!
俺の前で今、飛竜と地球外生命体さんが戦っている。
おっかないなあ。
特撮何て目じゃないぜ。
カメラがあれば、そのまま映画化間違いなしの代物だ。
しかし残念ここは異世界そんなものないわ。
「俺もあの中に混ざって戦わなきゃいけない気がする」
「しょ、正気かのう? なんかヌメヌメしているし取り込まれそうなのじゃ」
「何だか顔のないでっかい人間みたいなのです! でも身体中にいっぱい、うねうねしたの生えてるのです!」
「しかも、ピンクいろってのがご飯が不味くなりそうよなあ」
それでもツバーシャ任せにするわけにはいくまい。
何だか拮抗してるし。
持久戦となると壺畑も壊されてしまう。
それに地球外生命体さんのヌメヌメが掛かった作物はちょっと食べたくない。
ええいやるぞ!
迷うな!
地球外生命体さんを倒す事だけを考えるんだ。
「最初から全力出して一撃で決めてやる。ラビとシノは隠れておいで」
「ご主人さまなら楽勝なのです!」
「分かった。ラビの事はわぁに任せて気張ってくるのじゃ!」
言うが早い、俺は空に舞うと地球外生命体さんの上に位置どった。
うーむ。
大気圏突破して、流れ星並の早さで衝突しても健在。
並大抵の攻撃じゃあ通らんだろうなあ。
地球外生命体さんの火力はイマイチなのがせめてもの救いか。
「ルガアアアアア!」
「ンガアアアー!」
ふー。
でっかい生き物の咆哮はびりびりくるな。
さて、チャンスは一回だが、急ぐことはない。
地球外生命体さんの後頭部にぜんぶっぱするか。
拡散より集束よりで……。
よし、イメージはこんなもんだろう。
ちょうど、ツバーシャの尾っぽを食らって怯んでる。
そっと流れるように近付いて……。
今だ!
「宇宙からはるばるやってきたのに悪いな……。【放て】」
パスン……。
「えっ……?」
魔法が出ない。
何で?
俺、今日魔法使ったけか?
そんなハズは──。
あああああ!
使っとる!
砂に埋もれたツバーシャ掘り出すのに使っとる!
ツバーシャ……。
「ご主人さま!」
あっ、不味い。
あまりの出来事に頭が真っ白になってしまった。
目の前にうねうねしたのが迫ってる!
ドボッ……!
「くふっ……」
メチャクチャ吹っ飛ばされた!
ツバーシャと地球外生命体さんの殴りあいを見る分には大した事無さそうなのに結構きつい。
しかもヌメヌメ体についた……。
「主さま! 大丈夫かのう?」
「ダメだシノ! こっちにきたら──」
バキッ!
「おっ、おシノちゃんがうねうねしたのに叩かれて木片に!」
「残念。変わり身の術なのじゃ」
流石忍者。
回避力が高い。
「ルガアアアアア!」
「ンガアアア!」
再びツバーシャが地球外生命体さんを惹き付けてくれた。
しかし、困った。
「打つ手がない……」
(まだ手はあるよ!)
(僕たちが乗ってきた流れ星を発射する!)
(離れてなにょ!)
キィーン……!
これは──。
「まるっこくて、ぼこぼこした岩が火を吹いているのです!」
「ぼ、膨大な力の流れを感じるのじゃ」
「確かにこれなら、地球外生命体さんをもとの場所に戻せるかもしれない」
来たときもこれにぶっ飛ばされて来たようなものだしな。
しかし、妖精さんの技術レベルが良くわからん。
ジェットエンジンの様な炎を吹いているが、見た目ジャガイモな岩の固まり。
よもや訳が分からん。
(角度よーし!)
(風向きよーし!)
(発射なにょ!)
ヒュゴッ!
ドチュ!
(あっ……)
(貫通してしまったか)
(フルパワーはやり過ぎだったにょ)
「色々出ちゃったから、後片付けが大変だな」
「あっけないのう。でも、これで終わりなのじゃ」
「ダメなのです。まだ終わって無いのです!」
いや、流石にどてっぱらに穴が空いてしまったら……。
うげっ!
再生するのかよ!
「ンガアアアア!」
丈夫な上に再生可能とかどうするんだよ。
「ルググググ……」
ツバーシャも疲弊してるしいよいよ不味くなってきた。
なにか手はないのか。
なにか手は!
ダメだ思い付かん。
だがその時。
城なしが揺れた。
ゴゴゴゴ……。
「ひええええ!」
「お、落ち着くのじゃ。しっかりと這いつくばるのじゃ!」
「城なしが怒ったのか?」
城に穴空くわ。
地面はぼろぼろだわ。
そりゃあ、怒りもするか。
「じ、じ、じ、地面が裂けたのです!」
「あの不気味な奴に向かって伸びていくのじゃ」
「城なしは何をしようとしているんだ?」
地面に出来た亀裂は瞬く間に地球外生命体さんの下まで伸びると広がった。
そして──。
バクンッ!
「なっ、何じゃと!?」
「食べちゃったのです!」
「でも地面に取り込んだぐらいじゃ……」
いや、違う。
これは、打ちのめす為の一撃じゃないんだ。
「城なしの内部に封印したのか」
「閉じ込めたのです?」
「なるほどのう。いくら丈夫で再生しようとも岩のなかでは何も出来ないのじゃ」
こわっ!
危なかったなツバーシャ。
城なしの気分次第ではツバーシャもこうなってたんじゃないか。
「流石にこれではアレも生きてはおるまい」
「いや、多分生きてるよ。宇宙で生きていられるんだ。息が出来なくなったってしなないさ」
「じゃあどうするのです?」
放っとくしか無いだろうなあ。
なんとなく飢え死にもしない気がするし。
こんなのの上で暮らさなければならないのは落ち着かないが仕方あるまい。
多分三日もすれば忘れるだろう。
それよりも城なしが地球外生命体さんを適当に解き放たないか心配だ。
気に入らない国にポイするだけで滅ぼせるかも知れない。
まさか、それを見越して?
城なし恐るべし。




