四十七話 走れツカイッパー
シノが頑張った。
俺も頑張った。
壺と石を交換した。
連日大量の石が運び込まれ、いつも静かな城なしの上は人で溢れて賑わっていた。
ラビは「お耳がうるさいのです」と言い。
ツバーシャは「みんな燃えてしまえばいいのに……」等と言う。
そんな訳だから二人は人前に出てこない。
出来れば俺もそうしたいところ何だが──。
「天使様。聖職者が是非一度お目通り願いたいと申しているのですが」
「全て断ってくれ。俺はエイラソーダ以外と言葉を交わすつもりはない」
俺に会いたい会いたいと言う奴が後を絶えないのだ。
「主さま。ここは一つツバーシャに街を少し壊させた方が良いのかもしれないのじゃ。連日これではのう」
「申し訳ない。お恥ずかしい限りなのだが、天使様にお目通りが叶うのは、汚れなき心の持ち主であらねばならぬと周知させたところ、裏目に出て……」
「なるほどのう。逆にお目通りが叶ったものは、徳が高く優れた聖職者として箔がつくとな」
「面目無い限りだ……」
うわぁ。
政治になんて巻き込まれたく無いわあ。
いや、もう巻き込まれてるのか?
「そうなると、エイラソーダは相当徳が高いことになるのか」
「教会からは、聖女などともてはやされ、王宮や貴族からは、他に芸術品が無いか聞いてこいなどと急かされている」
「すまんな。しかし、俺にそれを言ってしまって良かったのか?」
「こんな国滅んでしまえばいい……」
何があったんだ、エイラソーダさん。
聞きたいけど聞いたら不幸になりそうだから止めておこう。
そんなエイラソーダさんの苦労の甲斐あってか、着々と城が出来つつある。
水源を囲う様にして城の登頂部が出来たと思ったら、そのままにょきにょきと伸びていく。
どんな作り方をしているんだよ。
更には城なし自体もじんわりと大きくなっていくので、勝手が変わって落ち着かない。
「ああそうだ。芋ヨウカンを作ったんだが食べていかないか? えーと、そこの使いっぱしりったーだっけか? 彼も一緒に。感想を聞きたいんだ」
「これは見たことのない食べ物ですね。ツカイッパー!」
「はっ! 喜んでご相伴に預からせて頂きます!」
もう少し、態度を崩してほしいけど難しいんだろうなあ。
芋ヨウカンは蒸かしたさつま芋を裏ごしして、皆でねりねり固めて作った。
砂糖なし、寒天不使用、究極無添加の一品だ。
「これは素晴らしい! 見た目は美しく、味は濃厚で、甘さが何時までもいとおしく舌に残る。ツカイッパー!」
「はっ! たいへん美味しゅうございます!」
「ツ、ツカイッパー。もう少し、こう、何かあるだろう……」
「いや、良いんだ。こうでも言わないと食べて貰えないと思ったんだ。お茶があれば良かったんだがなあ」
「こ、これは気がつかずに──。ツカイッパー!」
「ああ、違う。そうじゃない。お茶があれば良いなって、それだけの話なんだ。催促している訳じゃあない」
「ではせめて、茶葉を贈らせて頂きたい」
「いや、いいよ。ずっとここにいる訳ではないから、飲み尽くしてしまったら寂しくなる。種か苗なら良いんだけどね」
「ツカイッパー!」
「はっ、国中を探し回って絶対に探し出して来ます!」
「えっ、ちょっ……!」
行ってしまった。
探せなかったら首飛ぶとかないよね!?
言葉に気を付けよう。
俺の一言で誰かが死にかねないわこれ。
ツカイッパー君頑張っておくれ!
「さて、もう良い時間だな私もこれで下がる」
「ご苦労様。また明日な」
エイラソーダさんには迷惑を掛けてしまって申し訳ないな。
変な奴が俺のところに来られても困ると言うことで一日中拘束してしまっている。
そんなもんだから、芋ヨウカン出したんだけど……。
ツカイッパー君にはすまないことをした。
「はー。疲れたー。早くお城完成しないかなー」
「そうじゃのう。でもまだお掃除が残っているのじゃ」
「人が通ればよごれるもんなあ。あっ、小銭落ちてる」
「主さまは大金は取らないのに小銭は拾うんじゃな」
い、いや、お掃除だし。
明日でエイラソーダさんに渡すし。
貧乏性が体に染み付いてんのかなあ。
そんなことをしていると日が沈み夜になる。
夜は流石に遠慮してもらったので誰も来ない。
「ふう。やっと静かになったのです」
「毎日だとこたえるよなあ」
「穴のなかにこもれば全て解決するわよ……」
「せまいと落ち着かないのです」
ツバーシャは回りを引きこもりの世界に引き込もうとしているだろうか。
皆引きこもるとごはん出てこなくなるぞ。
「しっかし、この干し芋は固いのう」
「なかなか、噛みきれないのれふ」
「あんたが失敗するなんて珍しいわね……」
「天日干しが失敗だったんだろうな」
本当は干し芋をエイラソーダさんとツカイッパー君に出したかったんだがな。
チップス並みに固いにも関わらず、割れたりしないでねばりっこいモノになってしまった。
ちょっと人には出せない。
切って蒸して干すだけなんだが失敗するとは。
結構いっぱい作ってしまったから晩御飯がわりだ。
「でも、主さまは嬉しそうじゃな?」
「いや、こう言うのも嫌いじゃないんだ」
「あんまり美味しくない方が好きなのです?」
「負け犬の遠吠えかしら……」
そうじゃないわ。
失敗して文句言いつつ食べる姿も後になれば良い思い出になる。
それに不味いか、不味くないかのギリギリの味や食感も悪くないもんだ。
いや……。
半分以上負け犬の遠吠えなんだが認めたくない。
認めたくないないぞ。
まあ、次はうまくやって見せるさ。




