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四十六話 えっ、そっちに興味をもったんかい!

 だらだらした。

 お客さんがやって来た。

 シノが本気だした。



 しかし、きついな。

 このままだと、話しも録に耳に入ってこない。


「グルルル……」


「ん? ツバーシャ何をくわえているんだい?」


 何だろうこの布。

 あっ、これツバーシャに作ってあげた袋か。

 確かにこれがあれば立ち直れるかも──。


 うん、被ったら落ち着いた。

 よく解ったな。

 俺が同類だと気付いたのかも知れないな。


 でも女騎士様が俺を見てちょっと困惑してる。


「では、話を聞こう。しかし、忘れるでないぞ? わぁが話を代りに聞いてはいるが、主さまの耳にも届いておる」


「ああ、気を付ける。では、早速話を進めさせてもらう。我々がここへやって来たのは脅威に対する調査とその……。言いにくいのだが……」


「構わぬ。可能であれば討伐といったところだな?」


「そ、その通りだ。もちろん、天使様がおられると分かった以上、討伐などは考えから消した」


 シノの声色が渋くて緊張感あるなあ。

 女騎士──。

 偉そーださんだっけか?

 いや、エイラソーダさんか。

 何か凄い迫力のある人なのにシノに押されてる。


 しかし、あれだな。

 やっぱり、干し芋は作って置くべきだったな。

 せっかくのお客さんなのにお茶請けがない。

 あっ、お茶もないわ。


「ならばどうする? 調査が終わったのであれば早々に立ち去るがいいだろう」


「そうだな。そうすべきだろう。しかし、このまま帰ってありのままに報告して信じて貰えるだろうか?」


「ほう……。主さまに天上人であると言う証を差し出せとのたまうか」


 おや。

 シノの雰囲気に鋭さが増したぞ?

 しかし、天上人である証しか。


「主さま……」


 ん?

 なんでこっち見るの?

 あっ、もしかして今ピンチ?

 任せっぱなしだったし、ここはカッコをつけたいところだ。


 しかし、何か出せと言われてもなあ。

 芋でも出すか?

 流石にそれはないか。


 いや……。


 いい案なんじゃないかこれ。

 飢えに強いし多くの人びとを救えそうだし、神々しい気がしないでもない。

 ダメなら他を考えれば良いだろう。


 そんな、訳でさつま芋の植わった壺を持ってきた。


「これ何てどうだろう? 俺の自慢の一品何だが」


「こっ、これは素晴らしい! 今だ私はこれ程のモノに出会った事がない。これに比べたらあらゆる芸術の何と芸の無いことか! これこそ天上人でなくては届かぬ領域!」


「そ、それほどか? 芋は俺たちも食べるから大量に持っていかれると困るが──」


「大量に等とは申し上げませぬ。それにその壺だけあれば芋はなくとも十二分に納得させられます」


 えっ、芋はなくともって、器だけ持ってくの?

 スープだけ食べて皿だけ渡すみたいで何かやだなあ。


 ……。


 いや、そうじゃないな。

 壺か!

 壺の方に興味があったんかい!


「ああ、うん。壺なんかで納得できるなら好きなだけ持ってていいよ」


「天使様のご慈悲に感謝いたします」


 それで話はまとまって、イギリシャ王国騎士団様ご一行は、壺しょって自転車こいで帰っていった。


「変な人たちだったな……」


「あのピカピカしたお洋服カッコ良かったです! ラビも着て見たいのです」


「ラビよ。あれは恐ろしく重いからのう。潰れてぺたんこになってしまうのじゃ」


「ひええええ!?」


 甲冑着たラビが。

 ちょっと見てみたいな。

 かわいいかもしれん。


「しかし、助かったよシノ。シノはあんな事も出来るんだな」


「最後に詰まってしまったからまだまだなのじゃ、主さまには遠く及ばないのう」


「おシノちゃん凄く偉そうだったのです!」


「いや、それ誉め言葉になってないよ!?」


 シノがあんな事も出来るなんてなあ。

 忍者だからかな?

 やれと言われればやらなきゃならなそうだし。


「もう、穴に帰りたい……」


「ああ、うん。ツバーシャも辛かっただろう。ゆっくりお休み」


「そうするわ。ふふっ」


 あっ、笑った。

 ツバーシャの笑うとこ始めてみた。

 でも、その笑顔には「私には分かるわ。あんたもこっち側だったのね……」って、安心感が見え隠れしている気がする。


 その通り何だけどな!


 あっ、袋被せてあげないとね。

 俺も自分用に作ろうかな。

 またあんな場面に陥るかもしれないし。


 でも、急ぐ必要はないか、そうそう直ぐには必要にならないだろう。



 そう思ったのだが──。



「天使様! 今や王宮では空前の壺ブーム。もっと沢山譲っては頂けぬだろうか?」


 三日も過ぎない内にやってきた。


 あんなもんが流行るんかい!

 別にいいけどさ。


 なんやかんやで、取引が始まり、壺需要は王宮から貴族の間にまで広がったそうだ。


 そこまでいくと、壺貿易言っても良い規模にまで発展して、エイラソーダさんとは更に何度か顔を合わせることに。


「しかし、本当にこんなものが対価で良いのでしょうか? 卑しくもこの壺を巡って大量の金銀が飛び交っているのですが……」


「俺たちに金も銀も必要ない。今一番欲しいのはこの石ころなのさ」


「いかに我々が俗にまみれているのか、身につまされる思いです」


 いや、そんな大層なもんじゃないんだけどなあ。

 壺作るのは城なしだし、城なしが欲しいのは石ころだしね。

 この話がまとまると嬉々として城なしは壺を作り出した。

 お城欲しくてずっと観てたもんね。


 待望のお城もそう遠くない内にたつんじゃあないかなあ──。


 って、あれ?

 もしかして、城なし言葉通じてる?

 そうでなければ壺をぽこじゃが作らないよね?


「良かったな城なし、俺が持ってくるより、ずっとたくさん早く集まるぞ?」


 でも城なしはいくら呼び掛けても答えてはくれなかった。


 多分シャイ何だと思う。

 まあいいさ。

 でもいずれ城なしとも意思の疎通がとれたら楽しそう何だけどなあ。

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